カミーユ・ドラフォルジュ&アンサンブル・イル・カラヴァッジョ/デュヴァル嬢:歌劇《精霊たち、または恋の諸相》(2枚組)
《優雅なインドの国々》と同年の作。謎多き女性作曲家による東洋への憧憬が滲む秘曲
《イポリートとアリシ》(1733)と《優雅なインドの国々》(1735/36)でラモーが新たな時代の寵児となりつつあったパリのオペラ座で、1736年に初演された女性作曲家デュヴァル嬢の《精霊たち、または恋の諸相》全曲録音。
才能豊かな女性が多かった17~18世紀のフランスにあってもオペラの作曲は圧倒的に男性優位で、パリの王立音楽アカデミー歌劇場(オペラ座)で女性作曲家の作品が扱われたのは1694年のジャケ・ド・ラ・ゲル《セファルとプロクリス》(本盤と同じレーベルからの世界初全曲録音〔CVS119〕参照)が初、それ以降デュヴァル嬢の作品まで40年以上も全く例がなく、1784年にボーメニル嬢の新作がこれに続いたきりフランス革命までは女性作曲家のオペラは一切披露されませんでした。
作曲者デュヴァル嬢は高位聖職者とオペラ座の舞踏家の間に生まれた婚外子で、1730年にオペラ座の合唱団員になったものの翌年とある不祥事に巻き込まれ離職。数年パリから離れた後、実父の後援で《精霊たち》の初演が実現、当人も鍵盤奏者として参画しました。
やや保守的ながらイタリア流の歌謡性にも事欠かない作風は当時こそ人気につながらなかったものの、21世紀フランスのすぐれた古楽演奏家たちによるみずみずしい解釈は、様々な精霊が多様な恋物語を繰り広げる作品の味わいを十全に引き出し魅力が尽きません。
ペルボスト、ヴァリケット、レノルドら上り調子の歌手たちが聴かせる歌唱が紡ぎ出すバロック音楽劇を、古楽器それぞれの音色美とスリリングなアンサンブルが魅力的なアンサンブル・イル・カラヴァッジョの充実オーケストラが支え、多数の舞曲トラックも起伏豊かに楽しませてくれます。
(ナクソス・ジャパン)
【曲目】
デュヴァル嬢(1718-1775):舞踏歌劇《精霊たち、または恋の諸相》
(序幕と全4幕/1736年パリにて初演)
台本: ジャック・フルーリ(生年不詳-1746)
【CD 1】
1-13. 序幕
14-34. 第1幕「水の精たち、または慎ましき恋」
35-54. 第2幕「地の精たち、または野心的な恋」
【CD 2】
1-18. 第3幕「火の精たち、または粗暴な恋」
19-40. 第4幕「風の精たち、または軽妙な恋」
【演奏】
リュシル、ザイール、イスメニド、フロリス…マリー・ペルボスト(ソプラノ)
恋の神アムール、ザミード、風の精(女)…フロリー・ヴァリケット(ソプラノ)
ニンフたちの代表者、ピルカリード…アンナ・レノルド(メゾ・ソプラノ)
レアンドル…エティエンヌ・ド・ベナゼ(テノール)
インド人、風の精(男)…パコ・ガルシア(テノール)
ゾロアストル、ニュマピール…ギレム・ヴォルムス(バス・バリトン)
ゼルバン、アドルフ…マチュー・ヴァレンジク(バリトン)
アフリカ人、ニンフ…セシル・アシル(ソプラノ)
アンサンブル・イル・カラヴァッジョ(古楽器使用)
カミーユ・ドラフォルジュ(指揮・クラヴサン〔=チェンバロ〕)
ヴェルサイユ王室歌劇場合唱団(合唱指揮: リュシル・ド・トレミオル)
【録音】
2023年3月8日 ヴェルサイユ宮殿「十字軍の間」
総収録時間: 142分
カテゴリ : ニューリリース
掲載: 2023年12月22日 00:00