WEEKEND JAZZ ~週末ジャズ名盤探訪 Vol.229
リッチー・バイラーク『ナーディス』(1975)
リッチー・バイラーク(p)
フランク・トゥサ(b)
ジェフ・ウィリアムス(ds)
1974年11月、ニューヨークにて録音
曲目:
01.ナーディス
02.プレイシズ
03.シーイング・ユー
04.イーオン
05.ボーンズ
06.ミツク
【アルバム紹介】
1.ピアニスト、リッチー・バイラークのECMでの初リーダー・アルバム
2.ダークで硬質なピアノを聴かせつつ、その陰影に富んだアプローチが独自の音楽を構築
3.タイトル曲はマイルス・デイヴィスのオリジナルで12分近くに及ぶ熱演
5月はECMレーベルの名盤を紹介しています。今回はその最後、美しいハーモニーと叙情的なプレイを特徴とするリッチー・バイラークのアルバムです。
1947年にニューヨークに生まれたリッチー・バイラークは元々クラシックとジャズの両方を学んだバックボーンを持ち、そんな音楽性が存分に発揮されている本作はECMでの初のリーダー・アルバムにあたるものです。
ダークで硬質なピアノを聴かせつつ、その陰影に富んだアプローチが独自の音楽を構築しています。
編成はピアノ・トリオで、メンバーにはベースのフランク・トゥサ、ドラムスのジェフ・ウィリアムスが参加しています。この二人は、リッチー・バイラークがサックス奏者のデイヴ・リーマンと組んだバンド、ルックアウト・ファームのメンバーでもありました。
楽曲はタイトル曲はマイルス・デイヴィスのオリジナル、2曲目“プレイシズ”はデイヴ・リーブマンのオリジナル、3曲目がベースのフランク・トゥサとリッチー・バイラークの共作、4曲目以降はリッチー・バイラーク自身のオリジナル曲となっています。
【スタッフのつぶやき:この1曲を必ず聴いて下さい】
12分近くに及ぶ熱演の“ナーディス”。
本作の中でのもっとも聴きどころとなっているのがこのタイトル曲です。マイルス・デイヴィスが作曲したナンバーですが、ビル・エヴァンスが自身の主要なレパートリーとしていた1曲としても良く知られています。意外なことにマイルス本人はこの曲を一度も録音していません。
本作でのリッチー・バイラークはこの曲をかなり自由なアレンジで演奏しており、非常に即興性の高い解釈で聴かせています。
テーマは提示されますが、どこまでが楽譜通りで、どこからが即興なのか、そんな風に思える展開で、存在感たっぷりのピアノの重厚なプレイが5分過ぎまで続きますが、そこからベースのソロが始まり、そのうちドラムスのソロへと移ってゆきます。9分を過ぎたあたりでピアノが再び戻ってきて、テーマ回帰となり、断片的にメロディーを繰り返しながらインプロヴィゼーションが続き、やがてエンディングへと向かいます。
個性的でいて創造性の高い“ナーディス”の演奏といえます。
なお、リッチー・バイラークがECMレーベルに残したリーダー作は本作を含め、ソロ・ピアノの『ヒューブリス』、トリオ作の『エルム』という3作のみですが、現時点では、すべて日本盤CDのみでしか聴くことができません(『エルム』に関しては2023年5月現在、生産中止商品となっております)。
国内盤SHM-CD
タグ : WEEKEND JAZZ
掲載: 2023年05月26日 10:00