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鉄道の歴史を追えば昭和の時代が分かる……私たちが知らない激動の時代「昭和」

日本人が意外と知らない!鉄道がつなぐ昭和100年史

身近な移動手段の1つ鉄道。その役割は移動だけでなく、物資の輸送や駅前開発、地域活性化までを考慮すると実に幅広く私たちの生活に影響している。特に激動の時代「昭和」に鉄道が与えた影響は大きく、社会全体が変わるきっかけにもなった。

2025年は「昭和100年」にあたる節目の年。鉄道と共に歩んだ昭和は、一体どんな時代だったのか。そんな昭和史を鉄道を主軸に読み解いているのが、小川裕夫の著書「日本人が意外と知らない!鉄道がつなぐ昭和100年史」だ。


●戦争孤児の拠り所となった「上野駅」
昭和の時代と戦争は切り離せない。真珠湾攻撃で幕を開けた太平洋戦争だが、ミッドウェー海戦あたりから劣勢に立たされた日本は学徒出陣や学童疎開を始めた。学童疎開の目的は、大都市に集中していた人口を分散させること。そのため東京・大阪といった大都市から地方都市に向けて、子供たちを乗せた疎開列車が多く運転された。

しかし終戦後に実家に戻ると、父母が死亡している悲劇に直面する子供も。頼る大人がいない戦争孤児たちは自然と大都市に集まり、東京では特に上野駅周辺に集中した。

戦災孤児は駅にばかり集まったわけではありませんが、それでも人の往来が激しい駅には少なからず食べる手段があったのです。

「日本人が意外と知らない!鉄道がつなぐ昭和100年史」より

戦争孤児たちは靴磨きやタバコの吸い殻を集めて売ったり、行きかう人たちから金銭や食料を恵んでもらったりして生計を立てた。さらに地下鉄もあったため雨風がしのげ、寝ぐらとしても最適な環境だったのだ。また上野駅は東北・信超地方の玄関駅であり地方出身者には馴染み深く、いつでも故郷に戻れるという気持ちにさせたのも多くの戦争孤児が集まった理由の1つという。

●時代のニーズに対応した「専用列車」
昭和初期は恐慌が相次いだ時代で、東京で青果物を売り現金を得ようする「行商人」で列車が混雑していたという。大きな籠を背負った行商人は他の乗客から迷惑がられ、トラブルも多かったようだ。

日中戦争が開戦したのち、政府は食料の統制を強め行商を全面禁止としてしまう。終戦後も統制は続いていたが、昭和24年に青果物の統制が解除され、再び行商人が増えて列車でも目立つように。そんな時代背景の中で生まれたのが「専用列車」。鉄道会社は以前のトラブルを参考にして、一編成まるごと「行商専用列車」を走らせることに踏み切ったのだ。

一方関西圏では、昭和38年に近鉄が「鮮魚列車」の運行を開始。日曜・祝日を除き毎日運行され、伊勢・志摩で水揚げされた鮮魚が一大消費地である大阪へと届けられた。しかし早朝に出発した鮮魚列車は、途中で何回も特急列車などに追い抜かれることに。急がなければ鮮度が落ちるのではないかと疑問が沸くが、それでも専用列車には大きなメリットがあったという。

現在は高速道路などが整備されているので、スピードだけを考えればトラックで輸送したほうが効率的かつ短時間です。しかし、鮮魚列車には渋滞に巻き込まれずに時間が正確、大量輸送が可能といったメリットがあります。それが頑なに鮮魚列車の運行が続いている理由でした。。

「日本人が意外と知らない!鉄道がつなぐ昭和100年史」より

●幻の「東京ディズニーランド駅」
日本国内では高度経済成長から暮らしの豊かさを実感できる層が増え、余暇を楽しむように。中でも「東京ディズニーランド」の人気は圧倒的で、周囲に与えた影響も大きく数々の逸話が残されている。

東京ディズニーランドの玄関駅でもある「舞浜駅」は、実は駅の開業前に駅名を公募していた。1位が「舞浜駅」であったが、2位以降のほとんどがディズニー関連の名称が占める結果に。

当初はJR西日本も「東京ディズニーランド駅」を容認していたのだが、ある懸念が。それはディズニーランドとは関係のない風俗店やパチンコ店に「○○ディズニーランド駅前店」とつけられてしまうと、イメージが大きく損なわれることだ。それを未然に防止する意味もあって、ディズニーランド駅は幻に終わってしまった。

そんな舞浜駅も、ディズニーランドの来園者数が増加するのに伴って利用者が増加。特に閉園時間帯には退園者が集中し、ホームが危険な状態になることも問題視されるように。そこでホームを100メートル伸ばし、上りと下りの電車の停車位置をずらす延長工事まで行われた。これによって電車を待つ乗客の位置が分散され、混雑が緩和されたのだ。

ディズニーは遊園地やテーマパークという枠を超え、日本の文化や産業、はては都市構造やライフスタイルにも影響を与える存在になり、私たちのライフスタイルにも大きな影響をもたらしています。。

「日本人が意外と知らない!鉄道がつなぐ昭和100年史」より

私たちの知る昭和史を鉄道という目線で見ると、また違った側面が見えてくる。「昭和100年」の記念すべき年に鉄道の奥深さに触れ、改めて昭和という時代を振り返ってみてはどうだろうか。

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タグ : レビュー・コラム

掲載: 2025年02月04日 11:00

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