ピアニストのアンドラーシュ・シフ氏が2025年「高松宮殿下記念世界文化賞」を受賞

2025年7月15日、公益財団法人日本美術協会は、“文化・芸術のノーベル賞”とも称される第36回「高松宮殿下記念世界文化賞」の受賞者を発表し、音楽部門でハンガリー出身のピアニスト、サー・アンドラーシュ・シフ(Sir András Schiff)氏(71)を選出しました。
同賞は、絵画、彫刻、建築、音楽、演劇・映像の各分野で世界的に顕著な功績をあげた芸術家に贈られるものです。シフ氏は、透明感あふれる音色と、作品の構造に対する深い洞察に基づいた知的な演奏で、現代における最高峰のピアニストの一人として世界的に高く評価されています。
選考委員の一人でチェリストの堤剛氏は、「彼の演奏から感じるのは“音楽への真摯な態度”です。作品に対する敬意、作曲家に対する深い理解と尊敬、それらすべてがはっきりと感じられます」と、その受賞理由を語っています。
授賞式典は2025年10月22日に東京で開催される予定です。
サー・アンドラーシュ・シフ氏の経歴
生い立ちと学び
1953年、ハンガリーのブダペスト生まれ。5歳でピアノを始め、名門フランツ・リスト音楽院でパール・カドシャ、ジェルジ・クルターク、フェレンツ・ラードシュといった高名な教育者たちに師事。その後ロンドンでチェンバロ奏者のジョージ・マルコムにも学び、バロック音楽への深い理解を培いました。
国際的なキャリアの始まり
1974年のチャイコフスキー国際コンクール、1975年のリーズ国際ピアノコンクールでの入賞を機に国際的な注目を集め、演奏家としてのキャリアを本格化させました。1979年にハンガリーを出国してからは、世界の一流オーケストラや指揮者と共演を重ね、不動の地位を築きます。
演奏活動と音楽へのアプローチ
シフ氏の活動の中心は、J.S.バッハ、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルトといったドイツ・オーストリア系の作曲家の作品群です。特にバッハの解釈は世界的に定評があり、その演奏会や録音は数々の金字塔を打ち立てています。近年はベートーヴェンのピアノ・ソナタ全32曲の連続演奏会を世界20都市以上で行い、そのライヴ録音も極めて高い評価を得ています。
また、ピアノを弾きながらオーケストラを指揮する「弾き振り」にも精力的に取り組んでいます。1999年には、国際的なソリストや室内楽奏者である友人たちと共に、自身の室内楽オーケストラ「カペラ・アンドレア・バルカ」を創設し、理想とする音楽を追求し続けています。
教育と社会への貢献
若手音楽家の育成にも情熱を注いでおり、マスタークラスなどを通じて後進の指導にあたっています。妻はヴァイオリニストの塩川悠子氏であり、親日家としても知られています。
その長年の功績に対し、これまでにグラミー賞、ロイヤル・フィルハーモニック協会ゴールド・メダルなど数多くの賞を受賞。2014年には英国エリザベス女王よりナイトの爵位(Sir)を授与されました。
今回の高松宮殿下記念世界文化賞受賞は、知性と感性の完璧な調和から生まれる彼の音楽が、改めて世界的に認められたことを示すものです。
(タワーレコード)
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アンドラーシュ・シフは1953年ハンガリーのブダペスト生まれ。リスト・フェレンツ音楽大学でパール・カドシャ、ジェルジュ・クルターク、フェレンツ・ラドシュに学び、ロンドンでジョージ・マルコムに師事しました。世界の主要な楽団、指揮者と共演してきましたが、近年はソロ・リサイタル、弾き振り、指揮の活動に力を入れています。
「レコーディング・セッションには100%ではなく、1000%の準備をして臨まなくてはなりません。なぜならもし始めから終わりまで曲を正確に演奏できなければ私はそこにいる資格はないですから」―アンドラーシュ・シフ
(ユニバーサルミュージック)
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(EuroArts)
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カテゴリ : ニュース | タグ : ボックスセット(クラシック)
掲載: 2025年07月17日 12:00