渡辺俊美(Redevelopment)(3)
「なんちゃって」みたいなのが大好き。モロにレゲエのコスプレしてやるより、なんちゃってレゲエの方がいい
──生活の中から出てくるもの、というのは渡辺さんの中では大切なテーマ、コンセプトなんですね。
僕は片付けはへたっぴいなんですが(笑)、ミッド・センチュリーみたいな、モダンなものが好きなんです。イギリスのモッズ、あるいは日本のモダン。ただ、それをオシャレに落とし込むんじゃなくて、逆にそれをなんとかいじりたいっていう感じなんですけど。
アノニマス(Anonymous, 匿名)ってわかりますか? 誰某が作ったからいい、とかっていうのはまったくなしで、これかっこいいじゃんっていう、モダンじゃない?っていう。音楽の聴き方もまったくそういう感じなんですね。モッズのルーツを遡るとオーティス・レディングなんかに行き着くと思うんですけど、でもそういう文脈とは逸脱したところで、これモッズっぽくない?っていうものを見つけるのもすごい好き。
だから、「なんちゃって」みたいなのが、僕、大好きなんです。モロにレゲエみたいな髪型してコスプレしてやるよりは、佐野元春が昔やったような、なんちゃってレゲエみたいなものの方が好きだったりするんです。
──『Redevelopment』に参加しているアーティストたちも、渡辺さんが日常の中で家具を選んだり食器を選んだりするようにして、選ばれたものということになるんでしょうか。
そうですね。コンピレーションでも名の通った人を連れてくるとか、ソウルセット名義でいろんな人を集めてやるという方法もある。でも、それがオモロいかって言ったら、僕、オモロくないと思うんですよ。
それよりは、自分の求めているものに近いニュアンスのものを探し出してくるとか、これからもっとかっこよくなるだろうという発展途上みたいな──ダサかっこいいっていうか──ものの方が面白い。
──渡辺さんご自身から、参加アーティストの紹介をお願いします。まずPE'Z。
PE'Z その音楽性を「サムライJAZZ」と称されるインストゥルメンタル・バンド。東京都内ストリートでのゲリラ的ライヴで頭角をあらわし、2001年は3枚のミニアルバム発売、フジロック出演、渋谷クアトロワンマンと、躍進を続けている。
僕がもしPE'Zのプロデューサーなら、PE'Zをバラバラにしますね。バラバラにしてもかっこいい。いまはトランペットとサックスの2ホーンなんですが、ピアノトリオでもアルバムができる。トランペットのワンホーンでもできる。サックスのワンホーンでもできる。ピアノのソロだけでもできる。ベースだけでもできる。ベースとピアノだけでもできる。
──バラバラにしてもPE'Zなんですか。
バンドはメンバー同士がお互いに頼っちゃう部分ってあるじゃないですか。それがない。個として完璧にある感じ。集まるとすごい凝縮されて、もちろんそれはそれでいいんですけど。
ダブとかレゲエとかできるだけ教えないようにしたいですね(笑)。知らないで無意識でやってるようなところもあると思うんですよ。よけいな戦略はなく、天然のままで素晴らしい。とっとと海外でやってもらいたいですね。
──続いて、ロレッタセコハン。
ロレッタセコハン 福岡を拠点に活動する、アルト・サックス、アップライトベース、ドラムスのトリオ。様々な音楽のエッセンスが混在する、トム・ウェイツをバンド形態にしたような珍妙な音楽を聴かせる。
ロレッタもヤバいんですよね。どっから生まれてきたのかわかんない。でもその絶妙なバランス。ウッドベースとサックスとドラムの。博多が生んだめんたいロックの最終兵器なんじゃないですか。
──「めんたいロック」なんですか?
ロックでしょ、この人たちは。ドラムはニューウェイブだと思いますよ。
──80年代前半のある種の音楽に通じるものは感じられるかも知れませんね。
そうそう、ニューヨークのアンダーグラウンド・ジャズみたいな。ラウンジリザーズのニュー・バージョンみたいな感じがするんですよね。
ウォーホールとかが好みそうなタイプなんじゃないかなあって思いますね。ファクトリーで遊んでた人たちみたいな感じだと思うんですけどね。
──8曲目の「I don't wanna be your dog」ではボーカルが入ってますが、これは誰が歌ってるんですか。
ベースです。昔はもっと歌ってました。トム・ウェイツみたいなやつとか。それでベタぼれしたんですよ。
スネアの音が一定しているのも特徴ですね。スネアの音が機械みたい。それが気持ちいいんです。その辺がニューウェーブっていうか、アナログでやってた人がデジタルにハマったときの感じに近いニュアンスが出ている。
- 前の記事: 渡辺俊美(Redevelopment)(2)
- 次の記事: 渡辺俊美(Redevelopment)(4)