《ブレイク前夜のイチオシ・アーティスト 001》(2)
このシンプルなスタイルに、ある種の後ろめたさと、ワクワク感がある
──いまや若者にとっての表現のチャンネルはいくらでも選択肢があって、別に音楽じゃなくてもよくなってますよね。写真でもいいし、グラフィック・デザインでもいいし、なんならカフェ経営でもいいというご時世ですが、そんな中にあって、初恋の嵐がやっていることは、音楽、もっと言えばロック・バンドというスタイルを選び取る必然性みたいなものが感じられますね。
西山 それはありますね。ただ、意図的に「そうあるべきだ」と思ってやってるわけじゃなくて、個人的に僕がこれしか得意じゃないっていうことがあるから、それが表に出てきちゃってるのかも知れないですね。
──3ピースの、ある意味とてもロック・バンドっぽいスタイルになったというのも必然的な帰着だったんですか。
西山 そうですね。多少は意図的なものもあって、これまでの3ピースのロック・バンド、例えばクリームなんかのエッセンスを遊びとして入れる、というようなことはありました。それに、そういう先人の影というのは、どうしてもなにかしらから出てきてしまうものなんですよね。ただ、その中で自分らをどのくらい出せるのか?ということをやろうとしているんじゃないですかね。それはしんどいけど、楽しいです。
──3人のグループといっても、いまは極端な話、誰も楽器を弾かなくてもいい。たとえば音源をみんなハードディスクに突っ込んで、それをエディットしたっていい。そうではなく、3人で楽器を手に取るというのは、なぜなんでしょうね。
西山 どうなんだろうね、発想が不器用なのかもしれないよね。柔軟さにかけてる?
隅倉 柔軟さには欠けてますね、はっきり言って。そういう音楽に対して嫉妬に近い感情を抱いたりしてますから。ヒップホップを僕ら3人でやるなんてまずあり得ないですし(笑)。
西山 「音響系」って言われるような人たちと対バンすると「なんだそれは、君たち!」って注意したくなりますもん(笑)。
いや、別に嫌悪しているというわけでもないし、「ロックでなきゃいけない」なんて思ってるわけでもないし、テクノを「いいな」と思うことだってあると思うんですよ。でもとりあえず、いまやっていることに対して迷いは全然ないです。逆に周りが混沌としている中で、こういうシンプルな形でやっていることにある種の後ろめたさと、ワクワク感があるんですよ。「大丈夫かな? でもこれがいいよな」みたいな(笑)。
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