PETER BJORN AND JOHN
気がつけば、どこからか聴こえてくるあの口笛……ってくらいに、ラジオでヘヴィー・ローテーションされた〈口笛ソング〉こと“Young Folks”。スウェーデンのバンド、ピーター・ビヨーン・アンド・ジョンが、ヨーロッパを巻き込んでブレイクさせたヒット曲だ。ちなみに彼らはピーター・ビヨーンとジョンのコンビではなく、ピーター・モーレンとビヨ-ン・イットリングとジョン・エリクソンの3人組。真ん中のビヨーン(以下同)が仲間との出会いを振り返る。
「僕とピーターはハイスクールで出会ったんだ。その頃、彼は手術した直後で少し元気がなかったんだけど、いいレコードをいっぱい持っていて、僕らはすぐに音楽をはじめた。最初は2人でギターを弾いて、ドラム・マシーンを使っていたけど、後からジョンがドラマーとして参加したんだ」。
トリオとして正式に活動を開始したのは2000年のこと。過去に2枚のアルバムを発表しているが、このたび“Young Folks”を収録したニュー・アルバム『Writer's Block』で日本デビューを果たしたばかりだ。
「アルバム・タイトルはちょっとしたジョークさ。僕たちはストックホルムの同じ一角(ブロック)に住んで働いているんだけど、スウェーデンのブリル・ビルディングといった感じの一棟住宅なんだ」。
ブリル・ビルディングといえば、アメリカのポップス黄金時代を支えた音楽工房。実はビヨーンは、プロデュースからミックス、さらにはストリングス・アレンジまでもこなす、有能なセッション・ミュージシャンとしての顔も持っている。だからこそ、彼ら自身のサウンドも〈3分間ポップス〉としての魅力と実験精神に溢れたもの。“Objects Of My Affection”ではシューゲイザーばりにギターが掻き鳴らされ、“Paris 2004”ではシタールが爪弾かれる。全体的にエコーを効かせたミックスも手伝って、まるでフィル・スペクターがプロデュースしたベル・アンド・セバスチャンみたいな雰囲気も。
「フィル・スペクターは好きだよ。彼は小さな音を拾い上げて、それを大きくする。それをさらに大きなサウンドやスペースにはめ込んでいくんだ。僕らの場合、予想外の音を作るために、楽器同士を効果的に影響させ合っている。だから聴く側は、何の楽器が演奏されているのかわからないこともあると思うな」。
そのなかで生まれたアンセムが、“Young Folks”というわけだ。キャッチーな口笛のフレーズ、そして囁くような男女ヴォーカルの掛け合いは、一度聴いたら忘れられない。
「エンジニアが口笛はどうかって訊いてきたんだ。僕には思いがけない提案だったけど、次の日の朝、それがとても良いアイデアに思えた。それで僕が口笛を吹いたんだ。口笛ってギザギザ感のある音質とヴィブラートが良いよね。女性ヴォーカルはコンクリーツのヴィクトリア(・バーグスマン)。彼女とは数年来の友達で、僕たちはみんな彼女の声の大ファンなんだ。ちょっとだけニコを思わせるけど、ほかに類を見ない声だと思う」。
まさにスウェディッシュ・ポップの新しいクラシックとなりそうな本作。完成されていながらも、どこか手作りのギフトみたいだと告げると、ビヨーンはニッコリ笑った。
「うん、そうだね。僕たちはまずダンサブルなドラムとベースが欲しかったし、エコーを増やしたり、逆に単調なギターやタンバリンを減らしたりしながらアルバムを作り上げていったんだ。手作りのギフトみたいにね」。
そんな贈り物を携えて、来年3月には初来日も決定した彼ら。北国で生まれた歌が、春の訪れを告げてくれるってわけだ。
「僕は日本が大好きなんだ。特に東京と大阪がね。街で僕たちを見かけたら、ぜひ声をかけてほしいな!」。
PROFILE
ピーター・ビヨーン・アンド・ジョン
ピーター・モーレン(ヴォーカル/ギター)、ビヨ-ン・イットリング(ヴォーカル/キーボード/ベース)、ジョン・エリクソン(ヴォーカル/ドラムス)から成るスウェーデン出身の3人組。99年頃からいっしょに演奏をするようになり、2000年に正式なバンドとして活動を開始する。2002年にファースト・アルバム『Peter Bjorn And John』をリリース。2004年にはセカンド・アルバム『Falling Out』を発表し、翌年には全米デビューを果たす。2006年に入るとシングル“Young Folks”がヒットを記録。日本でもFMラジオ局のエアプレイ・チャートNo.1を獲得する。同年5月にニュー・アルバム『Writer's Block』(Whicita/V2)を本国で発表。このたびその日本盤がリリースされたばかり。
カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2007年01月11日 20:00
更新: 2007年01月11日 22:54
ソース: 『bounce』 283号(2006/12/25)
文/村尾 泰郎