インタビュー

怒髪天

 人生における悲喜こもごもをグッとまとめて腹に据え、ありったけの情熱を込めて歌い上げるニッポン男子のソウル・ミュージック=ジャパニーズR&E。そんな独自の男道をひたすらに邁進し続けるロック・バンド、怒髪天が、直球にもほどがあるワンコイン・シングルを2枚同時に発表したぞ!!

  「もう、身も蓋もないことを言い切る曲を作ろうと思って。結論ありきで、コンビニとかラジオとかで一瞬しか聴かないような人でも、何を歌ってるのかわかるような曲。自分たちの長年の大テーマなんでね」。

 男の意地も純情も、なけなしの気骨も哀愁も――人生における悲喜こもごもをグッとまとめて腹に据え、ありったけの情熱を込めて歌い上げるニッポン男子のソウル・ミュージック=ジャパニーズR&E。そんな独自のサウンドを追究し、ただひたすらに男道を走り続けるロック・バンド、怒髪天が、11月5日に2枚のニュー・シングル“全人類肯定曲”“No Music, No Life.”をリリースした。これがまた、過剰にストレートな従来の作風をより濃厚に凝縮したかのような激・直球ソングときた。〈生きてるだけでOK!〉というサビを擁する史上最強の人生賛歌“全人類肯定曲”について、炎のヴォーカリスト・増子直純は、さらに言葉を続ける。

 「言いたいことを伝えるためにやってるんだから、ストレートなほうがいいに決まってる。変なプライドであるとか、見栄であるとか、そういうのは年々剥がれてきてますね。一回一回、完全燃焼で全部伝えきらなければいけない。思いっきりやってれば、悔いが残らないしね。そう思うから、この曲も誤解のないように思いっきりやっとこうと思って。ダブル・ミーニングとか、まるでないから。そのまんま、額面どおりに受け取ってもらえればいいから。タイトルも、最初は〈生きてるだけでOK!〉にしようかと思ったんだけど、それだとちょっとヒューマニズムに溢れ過ぎてるっていうか、ハートウォームな感じに取られたらやだな、と。もっとバカらしくてデカイものにしたいと思って、“全人類肯定曲”にしたんだよね」。

  〈バカらしくてデカイ〉というファクターは、彼らの作品において常に重要な位置を占めるもの。増子が40人のふんどし部隊に担がれた神輿に乗って登場した今夏の〈RISING SUN ROCK FES. 2008 in EZO〉をはじめ、お祭り騒ぎ的なステージングに定評のある彼らだが、そういったあらゆる状況を楽しもうとする〈笑い飛ばしの精神〉が、彼らのペーソスに満ちた歌世界に大きな説得力を与えている。

 「前に読んだ伊坂幸太郎の作品(「重力ピエロ」)のなかで、登場人物が〈深刻なことほど陽気に伝えるべきだ〉って言ってたんだけど、まさにそのとおりだと。深刻なのは僕らの生活だけで充分です、ってね。深刻なことだって、見方を変えれば笑い飛ばすことができるんですよ。俺、昔はハードコア・パンク・バンドをやってて、目の前に立ちはだかる巨大な何かをぶっ壊す、反対していくっていうスタイルがカッコいいと思ってたの。だけどいまは、社会はとっくに壊れてる。国もヤバイ。そんな状況で何がパンクかっていうと、新しい価値観を作って、楽しく逞しく生きていくことなんだよね。困難を楽しめるドMの精神っていうか(笑)、いま、自分が頑張ってるってことに自分で痺れられるスポ根的な精神がパンク。だから、笑い飛ばす。生きてるだけで〈素晴らしい〉とか〈最高だ〉っていうとテーマが重すぎるけど、〈オッケー!〉だとね、ムチャクチャ軽い(笑)。でも、人生ってそんなもんでしょ?」。

  そんな人生に、もし音楽がなかったら……という想像をコミカルに繰り広げているのが、もう一方の新曲“No Music, No Life.”。タワーレコードとのコラボレーション・ソングと言い切ってしまいたい本作は、猫も杓子も歌い出したくなるに違いない、痛快なロックンロール・ナンバーだ。

 「最初は、タワーレコードの社歌を作ろうかって言ってたの。〈一枚でも多く売ろう~♪〉って(笑)。そしたら〈No Music, No Life.〉っていう言葉を使ってもいいってことになったから、じゃあサビとタイトルはそれ以外ないでしょ、ってことで、テーマの〈音楽〉をわかりやすく、ちょっとショボく、笑えるような歌詞にして。で、俺のイメージでは、タワーレコードってロックが好きな人が買いに行くところだと思うんで、単純なロックンロールの曲がいいな、と。聴いたら〈そっか、音楽ないとなー〉って、もう一枚買っちゃうぐらいに勢いがある曲にしようと思って(笑)。だからか、この曲はライヴでやるとすごい盛り上がるんだよね。できるだけ簡単なメロディーにしたから、一番聴きゃあ、二番も歌えるしね。コーラスで参加したタワーのスタッフも、〈面白いからやろうよ〉って話してたら、大分とかいろんなとこから、20人ぐらいホントに来た。そういうバカなところがいいでしょ(笑)? ジャケットも、“全人類肯定曲”とあわせてちょうどOKとNOで。イエス・ノーまくらか、ってね(笑)」。

 シンプルなテーマをシンプルな楽曲にのせて、全力を尽くして歌う。その難しさを微塵も感じさせないユーモアと、技術力も併せ持つ。彼らが提唱するR&Eは、いつだって気持ちいいほどにブレがない。

「やってて一番楽しいことをやってるから、ブレようがないよね。これは誰もやらねえだろ、ってゲラゲラ笑いながら、いつも曲を作ってる。しかも、軽く口ずさんでることが、意外ととんでもないことだったりさ(笑)。ひとつのスタイルを貫いてれば、いろんな意味で強くなるし、研ぎ澄まされてくるよね。いまの4人が揃ってから20年。あと20年ぐらいはやれるかな。それからさらに20年となると……誰かひとりはCGとか、書割になってるよ(笑)。誰かの息子が代わりに入ってるかもしれないね。俺らは、長く続けることで、より良くなるバンド。それは間違いないと思うよ」。

▼怒髪天の作品を紹介

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・オレらの夏フェス 予習・復習帳 '08――〈ライジング〉復習編 Part.2 各アクトの詳細をレポート!(bounce.com 連載/2008年9月25日掲載)
・怒髪天(bounce誌「260号」より転載/インタヴュー)

カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2008年11月06日 18:00

更新: 2008年11月11日 17:23

文/土田 真弓