インタビュー

FAR FRANCE

 破壊力抜群のパフォーマンスを丸ごと封じ込めたライヴ盤でデビューを飾った4人組が、初のスタジオ録音となるニュー・アルバムを発表。ジャンルという枠組からも時代感からもイビツにハミ出しまくった奇天烈ポップ・ミュージックが満載の本作について、畠山健嗣(ギター/スクリーム)、高橋豚汁(ドラムス/テンション)、英 真也(ヴォーカル/ギター)の3人に語ってもらった。

ポジティヴなんだけど、すべてをだいなしにする感じ

――ファースト・アルバム『LOVE』はいきなりライヴ盤でしたが、FAR FRANCEのサウンドのいい意味でのイビツさがデフォルメされてるなあ、と。初めて聴いたときの印象は、「いま、頭のなかを通り過ぎていった、得体の知れない、とんでもないインパクトの音は、一体何だったんだ」というもので。

畠山 ファーストをライヴ盤にしたのは、細部よりもまずエネルギーのようなものを伝えたかったっていうのがあって。だから、そういう感想を持って頂けるっていうのは、非常に嬉しいです。

 最初にCDを出しませんかっていう話を頂いたときも、ホントは「スタジオ盤で」っていうことだったんですけど、勝手もわからなかったし、1年前の時点ではFAR FRANCEの良さを上手く出せるのか、正直、自信がなかったんですよ。それで、それまでライヴは重ねてやってたし、ライヴ演奏をCDにした方が、聴く側にもいまのFAR FRANCEが伝わりやすいんじゃないか、っていう意見が出て。

――では、ある程度の自信がついたということで、新作の『AHYARANKE』はスタジオ盤に?

畠山 ライヴ盤では伝わらない部分って、確実にあるなと思って。元々、英はコーネリアスが好きだったりとか、それぞれにまったく違う引き出しを持ってる人たちの集まりだったりするんで、スタジオでちゃんとそれを構築してみたいっていうのがあって。

――先ほど英さんがおっしゃってた、〈FAR FRANCEの良さ〉ってどういうところだと思います?

 何ですかね? いまだに僕らも掴めてないんですけど……。

畠山 (突然カット・イン)悪ふざけ感とか、いい意味で暴力的というか、投げっぱなしな感じだったりするところとか。ポジティヴなんだけど、すべてをだいなしにする(笑)感じとか。ローファイな感じだったりとか、そういう意味での激しさとか。FAR FRANCEはいろんなカラーを持ってるバンドだと思うんですよね。カラフルだけど、ちょっと濁ったような感じがあったりとか――そういうところをスタジオ盤で鮮明に出したかったっていうのはありますね。

――いまのお話は、曲の展開の激しさに繋がる気がしますね。

畠山 「1曲に何個もフレーズを詰め込まなくてもいいだろ」ってことは、よく言われるんですけどね。でも、どうしてもそうなってしまう(笑)。だって、思いついたから……みたいな(笑)。

――メロディーやリフは凄くキャッチーなんだけど、普通に展開しない。さきほどの〈だいなしにする〉発言にも納得できるというか。

 いい意味で期待を裏切るみたいな曲にしたいな、っていうのは考えてます。メンバーひとりひとりがホントにひねくれてるんで、普通で終わるのがつまんないっていう考えで。「ここは意外な方向に広がっちゃって、収拾がつかない状態で終わるのもおもしろいんじゃないか」っていう意見が出る方が多いかもしれない。

畠山 「おもしろければいい」って思ってるところは共通してるんですけど、その〈自分たちのなかでのおもしろさ〉っていうのは、わかりやすくはないですね。座標軸で言ったらホントにもう微妙過ぎて、数値化できません、っていう地点に持っていきたいというか。

――そういうところには新世代らしさを感じますけど、出してる音はいい意味で古臭いというか、ヴィンテージ感がありますよね?

 ああー、それは結構狙ってまして。『LOVE』もそうなんですけど、1回デジタルで録ったものをカセットに落として、音を潰して、音に温かみじゃないですけど、特有のじっとり感みたいなのを足していて。で、今回スタジオ盤を作るってときに、「いままではずっとアナログでとおしてるんですよ」っていう話をしたら、「じゃあ今回は最初からアナログで録ろうよ」っていうことになって、吉祥寺のGOKサウンドっていうスタジオで録りました。そこは全部ホントにアナログでプロトゥールスの頭出しみたいなことはできないから、カセットを1回1回巻き戻したりとか、ちょっと60年代~70年代のプログレのバンドがやってたような方法で録ってるんですよね。使ってる機材は、リアル・ヴィンテージだったり(笑)。

――手法的な部分でも、60~70年代のリズム&ブルースやハード・ロック、サイケ・ロックを激烈な勢いで演ったらこうなりました、みたいな印象も受けたんですが。

畠山 パンク以降の音楽にはすごく影響を受けてると思うんですね。演奏自体はニューウェイヴ以降の新しい感じがするんだけど、楽曲に古い要素を詰め込んで時代感をグシャグシャにしたいっていうか。いまっぽいよね、とも言えないし、完全に古臭いとも言い切れないなっていう感じは欲しかったというか。

――その雰囲気は出てると思いますよ。

 ある人に「いろんな年代の音がいっしょくたになって、FAR FRANCEの音として出てるね」って言われたんですけど、それがすごい嬉しくて。ホントに僕ら、70年代のプログレだったり、ゼロ年代以降のオルタナティヴ~パンク・シーンだったりに一番影響を受けていると思うので。

カテゴリ : ニューフェイズ

掲載: 2009年02月05日 18:00

更新: 2009年02月05日 22:21

文/土田 真弓