FAR FRANCE(2)
ガロ系とか、60年代の漫画がすごい好き
――そんな本作のなかでも、冒頭の“穴から逆さま”はFAR FRANCEの新しい方向を示している曲だ、というコメントを読んだことがあるんですが、それはどういう意味合いで?
畠山 『LOVE』のライヴ録音が一昨年の12月ぐらいだったんですけど、ちょうどその頃に“穴から逆さま”が出来たんです。人前で初めて演奏したのが確か、そのライヴのアンコールで。この曲は、バッてフレーズが出てきたときにメンバーみんなが新鮮に感じたというか、そこから気持ちが入れ替わったっていうか。何となく、この曲を軸にして今回の『AHYARANKE』のヴェクトルに向かって行ったかなっていう感じはしてて。
――自分たちのなかでこれは新しいな、って?
畠山 いま思うと、単純に自分のフレーズが好きだっただけかもしれない(笑)。
英 でも、俺も何曲か録ってアルバムの全体像が見えてきたときに、「“穴から逆さま”を1曲目にしよう」って思ったし。『AHYARANKE』のなかでも、FAR FRANCEがこのあと進む道としても核になってる曲というか……。
畠山 (再びカット・イン)あらゆるものを巻き込んですっ飛ばす感じっていうか。
英 (苦笑)。
豚汁 (畠山に向かって)今日、すごいね。舌好調だね(笑)。
英 めっちゃかぶってる(笑)。
畠山 いろんなものを巻き込んじゃってるんだけど、「まあいいや!」ってそのまま進んじゃうような感じですね。
英 僕、初めて聞きました(笑)。
畠山 初めて言いました(笑)。
――それは、先ほどおっしゃってた〈やりっ放し感〉とか〈だいなし感〉を今回の作品ではきちんと出したかったということ?
畠山 その過程ですね。すっ飛ばしていろんなものをグシャグシャにしてしまう過程。ライヴ盤は「ポチッてスイッチを押したら、ぶっ壊れます」みたいな、「結果がこうなりました! ドーン!!」みたいな感じ。スタジオ盤は、「こういう構築になってますけど、結局ぶっ壊しますよ」みたいな感じです。
――とにかく壊す、ということのようですが(笑)、曲は全員で作るんですか?
英 練習のときに毎回セッションして、使えるところを抜き出して曲にしたり、畠山がデモを作って持ってきたり。曲によって作り方はバラバラなんですけど。
――コラージュ的な作り方の曲もあるということですね。
英 そうですね。“しがちな”っていう曲は高校3年生のときに作った曲なんですけど、いい意味でのぶつ切り感が出てて、僕、個人的にはすごい好きな曲ですね。そういう曲もあれば、さっきの“穴から逆さま”は大体の流れのセッションがあって、それを持ち帰って練り直したっていう曲で。
畠山 曲によってはもう、作っては壊し、作っては壊しでアレンジが180度変わってるものもあったりして。たとえば“真昼にて”っていう曲は、破壊と構築を数か月に渡ってやり続けた結果、こうなったっていう。
――“真昼にて”は、リード曲だけあって、FAR FRANCEのなかでは取り分けポップな曲だと思いますよ。「あれ? 曲、変わった?」って思うぐらい、展開の仕方に強烈なフックが入ってますけどね(笑)。
豚汁 すいません(笑)! 確かに曲、途中で変わってるね(笑)。
英 でも違和感なく聴ける。たぶん、コラージュの製法が良かったというか、練り直して練り直してっていう作業を物凄く重ねたことで、ちゃんと1曲としてまとまったんじゃないかな……。
畠山 (三たびカット・イン)コラージュするときに……。
英 (笑)。
畠山 あ、ごめんなさい。言いたくなってしまった(笑)。コラージュするときに、「じゃあここからここまでパッと変えましょう」って一部をそっくり変えるんじゃなくて、楽曲の下地にある部分は変えずに、ウワモノだけ変えていったりとか。“真昼にて”は結構メロディアスな部分があるので、ギターのコードが変わっていってもメロディーだけは変わってなかったりとか、そういう工夫をしているので、一環性を感じる作りになってると思います。
――この曲は、歌詞もわりと異常というか。
英 僕が書いてますね。
――まんま読むと、シュールというか、ホラーというか……(笑)。
畠山 確かによろしくない(笑)。怖い(笑)。
英 ラヴソングなんですけどね(笑)。要は、あれですよ。オフコースの“さよなら”ぐらいの別れの歌なんですけど(笑)。
――それはわかります。わかりますが……。
畠山 ホントに家で〈残された髪の毛を…〉ってことになってたら、結構怖いですよね。
――そう。だから、どうしてこういう歌詞になったのかな?って。
英 何でこうなったか……理由なんてねえな(笑)。僕なりの比喩表現じゃないですけど、ストレートに「別れちゃいました。さよなら、さよなら」みたいな曲にはしたくないなって思ったんで、おもしろおかしく別れを表現できたらなーって(笑)。
――じゃあ、比喩表現の方向性がちょっと狂ってますよね?
豚汁 漫画の影響だよ。
英 ガロ系とか、60年代の漫画とかがすごい好きで。つげ義春さんとかもそうですけど、夢を元にした漫画みたいなのがあって、「すごいな」と思って自分も夢に見たことをメモるようにしたりしてて。“真昼にて”は、そこからインスピレーションを受けて詞を書きましたね。
――また、壮大な夢を。
英 最近、映画にできそうなぐらいの壮大な夢をみるんですよね。起きて「すげえ!」ってメモろうとすると、思い出せないんですけど(笑)。
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