HANDSOMEBOY TECHNIQUE
ワールド・ワイドな人気を獲得したデビュー作『ADELIE LAND』から3年余り。森野義貴のソロ・ユニット=HANDSOMEBOY TECHNIQUEがついにセカンド・アルバム『TERRESTRIAL TONE CLUSTER』をリリースした。これまで以上に多彩なサウンドを揃え、どこまでもドリーミーで煌びやかな世界を紡ぎ出している本作について、たっぷりと語ってもらった。
サンプリングという手法を自分なりにどう洗練させて進化させるか
――まず、ファースト・アルバム『ADELIE LAND』の辺りから話を伺います。2005年に出たあのアルバムは、日本だけでなく、海外からのリアクションが凄く大きかったと聞きました。そういう状況をご自身ではどう受け止めてましたか?
森野 スウェーデンからの反応が一番大きかったんですけど、なんなんだろうなあって不思議な感じがしましたね。そもそも、海外はまったく意識してなかったので。
――海外へのディストリビューションはしてたんですか?
森野 いや、まったくしてないですし、配信もしてなかったんです。だから、海外の人たちは日本のお店にWEB通販で直接オーダーして買ってたみたいで。
――じゃあ、意図も予期もしないところで盛り上がっていたと。
森野 そうですね。まあ、日本の音楽というところで、興味を持たれた部分はあるんじゃないですか。
――作品のどういったところが海外の人たちの心を掴んだと思いますか?
森野 〈サンプリング・ミュージック〉として評価された感じでしたね。向こうの取材を受けたんですけど、そういう部分にスポットを当てた質問が多かった。スウェーデンのテレビで特集された時も、カットアップやコラージュ・ミュージックの新しい流れって感じで取り上げられましたし。
――確かに、HANDSOMEBOY TECHNIQUEの音楽において、サンプリングはかなり重要な要素ですよね。〈サンプリングを使ったヒップホップ的な手法でポップ・ミュージックを作る〉ということがベースになってるのかなと思うんですが。
森野 そうですね。サンプリングに初めて触れたのはヒップホップだったんですけど、いまヒップホップ的なサンプリング……ワン・フレーズを抜き出してループさせるというスタイルはありふれてるし、おもしろくないじゃないですか。その手法を自分なりにどう洗練させて進化させるかっていうことをHANDSOMEBOY TECHNIQUEではやってます。
――そもそも、そういうスタイルになったのは何故なんですかね?
森野 サンプラーを買ったのは、もう10年以上前なんですけど、その頃からいまみたいなスタイルだったんですよ。ループを作ったら、サビや間奏を作って展開させて。そこにコーラスを乗せたり。最初は、当時盛り上がっていた、ファットボーイ・スリムに代表されるビッグ・ビートみたいなものが作りたかったんですかね。特にそういうものを聴いてたわけでもないんですが。
――では、音を作り始めた頃から、いまの発想に近かったわけですか。
森野 レヴェルは全然違いますけど、方向性は同じでした。
――でも、そういうスタイルで音楽を作ってる人って……。
森野 全然いないですね。
――何故ほかにいないのか考えてみたんですけど……その手法が大変だからだと思うんですよ(笑)。既成のフレーズを組み合わせてメロディーのあるポップスを作ろうとすると、キーやコードが合ったものを探さないといけないわけで。
森野 多分そうだと思いますよ。小西(康陽)さんも、一度そういうの(サンプリング主体のポップス)を作ろうと思ったけど、結構しんどいから止めたって言ってましたね。
――ピチカート・ファイヴのカットアップ集『pizzicato five we dig you』に参加されてましたが、あのアルバムに提供したトラックも、ピチカートのさまざまなネタを組み合わせて、まったく別の曲に仕立て上げてました。
森野 あれはまさに、ピチカートのネタだけをサンプリングして、自分の曲を作ろうって感覚でやりましたね。
――HANDSOMEBOY TECHNIQUEのおもしろさや特異なところが、すごく分かりやすく出てる曲だと思いました。あのピチカートのアルバムが出たのが2006年ですが、当時はほかにもたくさんのリミックスを手がけてますね。
森野 そうですね。『ADELIE LAND』を出した後、2007年ぐらいまでは常に何かのリミックスをしてる感じでした。
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