インタビュー

Boom Boom Satellites(3)

少ない人数の対話のなかに混乱と希望を織り交ぜた

――実際、身につまされる話もよく聞きますね。

中野「だから、どうやって、どういう気持ちで音楽に接してもらうかってことを考えると、逃避的な、サイケデリックな音楽が流行るのもよくわかるんですよ。MGMTとか、心地良いしね。で、あれも一応ドラッグの匂いがしながらも、社会との接点を持ってる」

――へえ。ドラッグって〈社会からの逸脱〉って捉え方が一般的だと思うんですが?

中野「うん。でも、ドラッグ・カルチャーってどうやって社会と距離感を置くか、だと思うし、それも接点の持ち方でしょ? サイケデリック・ミュージックってのは往々にしてそうで。でも、自分たちでやるとしたらそういう方向でもないと思うしね。そういう音楽を作ってもリアルにならない。どうしても〈サイケ風〉になっちゃうから」

――そうした考えのなかからBBSが取ったアプローチが、今作には反映されているわけですよね。

中野「社会との距離の取り方をどうするか、人との距離をどうするか。それを考えた時の陰鬱な感じと、〈突破していこう〉というエネルギッシュな感じが上手く表現されればいいかなっていう。そんなに意識的じゃないんだけど、振り返ればそんなことだったんじゃないかな」

――それが、ダークな響きがありつつも、“BACK ON MY FEET”の突き抜けるような楽曲の速度や、“CAUGHT IN THE SUN”のドラマティックで壮大なエネルギーにも繋がっているわけですね。歌詞に関しても、3曲とも〈キミ〉と〈オレ〉の関係性にフォーカスすることで強度を上げている感じがしますが。

川島「社会と個人の関わりというよりも、もっと少ない人数の対話のなかに混乱と希望を織り交ぜていこうというのはありましたね。最初は〈破壊〉だけがテーマだったんですけど、それだけでは済まされない想いが出てきたというか。ただ、〈キミ〉と〈オレ〉の関係は変わってないし、僕のなかの〈破壊〉と〈再生〉というテクスチャーや、最大公約数のなかで個人的なインナーワールドを追求するっていうテーマにも変わりはないです。“BACK ON MY FEET”の歌詞でも(吹き飛ばされた先から)自分の足で戻ってくるっていう姿勢は常に持ってるし、それはそうしたムードを持つ音やコードに言葉やフレーズを合わせてるから。そのなかで、まだ(言葉が)出るな、まだ書けることや言いたい世界はあるんだな、って思いましたね」

――ディープな部分に向かっても『UMBRA』とは異なるオープンな作品になっているのは、やはり〈FULL OF~〉以降から、リスナーとコミュニケートするという方向性を強めてきたバンドの自信や、リスナーのサポートという実感が支えになっていると思うんですが、いかがですか?

中野「受け止めてくれる人がいるっていうのは支えにも喜びにもなるし、それで(自分たちの音楽が)作られている部分ってのはあるから、影響は絶対受けていると思いますね。『EXPOSED』にしたって、明るい音楽ではないからね。充分に暗いし、ハードな音楽ですよ」

――それは確かにそうです(笑)。

中野「それに、暗い音楽でも名盤っていっぱいあると思うし、悲しい映画もヒットするじゃないですか。そういうものを共有すること自体は、みんな嫌いじゃないと思うんですよね」

――もちろんそうなんですけどね。でも、それも深度によると思うんですよ。この作品は、例えば最近の泣ける映画や音楽みたいに〈コンビニエントに享受できるもの〉ではないと思うけど、それでも、ちゃんとリスナーを惹きつける音にはなっている。もっと深いエモーションを体感させる音になっているというか。そういうことにBBSはトライしているわけでしょう?

中野「日本はホントにねぇ……。まあ、でも、そういう深いところで繋がっていることが我々のエラいところ。がんばっちゃってんな、俺たちってところじゃないですか(笑)」

――そこでボケますか(笑)!

中野「まあ、いつもそうなんですよ。僕らの音楽は、そんなに笑顔で聴くような音楽ではないんで。でも、だからこそバンドが持っているムードを受け入れてくれる人たち、ライヴや音源を買ってくれる人たちを僕らは信頼しているんですよ」

――今作の広さや深さや大きさというのは、聴き手とコミュニケートするという過程を経て、BBSがその手を繋いだままより深いところにダイヴしはじめた曲という意味で、非常に重要なシングルだし素晴らしい作品になっていると思います。

中野「ありがとうございます」

――で、アルバムの制作状況なんですが……どうなんでしょうか?

中野「う~ん、それはまだまだ先ですね。しばらくは……はい」

▼BOOM BOOM SATELLITESの作品を紹介

カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2009年06月24日 18:00

更新: 2009年07月08日 18:08

文/佐藤 譲