インタビュー

JAY-Z(3)

感情や真実に基づいたもの

 そして、サウンド・プロダクション以上に注目してほしいのが、いつになくシーンへの視点を色濃くしたリリック群だ。〈俺が話したいのはゲームのことでもジム・ジョーンズのことでもデイモン・ダッシュのことでもない。リアル・シットについてなんだ〉とエモーショナルに告げる冒頭の“What We Talkin' About”に象徴的なように、ここにきてジェイの戦いは新しい局面に突入したと言っていいだろう。「ヒップホップを保存していくのは当然の責任」と語る彼の問題意識が今後の活動にどのように反映され、シーンにどんな影響を及ぼしていくことになるのか、非常に興味深い。

 「俺は自分自身のことをソロのアーティストだと思ってない。ヒップホップの一部だって考えているんだ。ヒップホップが30歳を越えたいま、“Hip Hop Is Dead”みたいなメッセージを聴く機会が増えたし、実際に新しいことは出尽くした印象がある。だから今度はこれからの30年間、ヒップホップをどうやって前進させていけるかが自分たちの課題なんだ。30歳を過ぎて、15歳の子供たちが聴くような曲を世に送り出しているのは違うと思う。いままでは、そんなこと考えたこともなかったけどね。ヒップホップで稼がせてもらって、じゃあヒップホップに対して自分が果たした貢献はなんだって考えたときに、やっぱり自分の感情や真実に基づいたものが必要だと思うんだ」。    

▼ジェイ・Zの近作を紹介。

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掲載: 2009年09月24日 19:00

ソース: 『bounce』 314号(2009/9/25)

文/高橋 芳朗