インタビュー

RHYMESTER 『ONCE AGAIN』 NeOSITE



  〈スゴい奴らが帰ってきた!〉――そんな惹句が似合いそうなアクション映画風の迫力ジャケットと共に放たれた、われらが〈キング・オブ・ステージ〉による待望の再始動第1弾シングルは、ヒップホップ的なメンタリティーをエンターテイメント性溢れる楽曲へと昇華させるお得意のスタイルが貫かれた、まさに王道にして鉄板の一枚に仕上がっている。リード曲の“ONCE AGAIN”は、いまやシーンでも最大級のプロップスを得ているトラックメイカー、BACHLOGICをプロデューサーに起用したスペシャル感溢れるナンバー。勇壮なシンセ・リフが聴く者の心を自然と鼓舞し、カムバックに対する決意表明とも、夢追い人に向けたエールの言葉とも取れる巧妙なリリックが、凡百の〈応援ソング〉では体験することのできない昂揚感を与えてくれる。20年間に渡ってみずからの美学を追求し、そのスキルを研ぎ澄ませてきた彼らだからこそ成し得た、タフで重みのある一曲だ。一変して、サンバ調のファンキーなトラック上を軽やかな押韻が舞うカップリング曲“付和Ride On”は、ライヴでも盛り上がること必至のトロピカルなパーティー・チューン。〈付和雷同〉的な生き方を日本人の美徳として捉えたリリックは、いろいろと社会批判的な方向に深読みすることも可能だが、ここは素直に〈オモロそうな流れに乗っていこうぜ~〉的な、阿波踊りの〈踊らにゃソンソン!〉マインドを継承した楽曲と捉えたほうが得策……というか、ズルムケなアゲアゲ・ナンバーのなかにも二重三重に意味を含んだライムを埋め込むのが、言葉のスペシャリストである彼らの魅力なのだ。そして3曲目、COMA-CHIをゲストに迎えた〈SUMMER SONIC 09〉出演時のライヴ音源“B-Boyイズム+Girlイズム”は言うまでもなく最高だし、本作はシリアスもユーモアも知性も情熱も一枚のなかにバランスよく兼ね備えた、ヒップホップの黄金比を見るかのようなシングルと言えるだろう。

カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2009年10月14日 18:00

更新: 2009年10月14日 18:37

文/北野 創

記事ナビ