FACT 『In the blink of an eye』 maximum10
自身の名を冠した2作目で世界デビューを果たしたこともあってか、能面フリークが爆発的に増殖した2009年も相変わらず海外に出ずっぱりだったFACT。国内でのステージは〈SUMMER SONIC〉〈COUNTDOWN JAPAN 09/10〉、そしてタワーレコード渋谷店のインストア・ライヴのみ(ありがたい)という状況で迎えた2010年、前作から約9か月という早さでニュー・アルバム『In the blink of an eye』が到着した。
前作と同様にマイケル“エルヴィス”バスケットをプロデューサーに起用/USレコーディングを敢行した本作は、メタルコア~スクリーモ~モダン・ヘヴィー・ロックが混在するオフェンシヴなサウンドを渾身の力で貫くエモーショナルなメロディーが実に痛快だ。いまの時代に蔓延する閉塞感を余裕で跳ね返す生命力を宿した、エネルギッシュなハードコア作品となっている。しかも、彼らが過去作で提示した〈踊れるロック〉に対するこだわりもしっかりと搭載。いわゆる〈音〉としてのエレクトロニックな要素は若干後退しているが(とは言え、唯一のインストゥルメンタル“1-3”はカラフルな電子音が飛び交うポップなチップチューン!)、ブレイクビーツやドラムンベース、ジャングルなどを効果的に挿入したリズム・パターンがとにかく多彩。生ドラム/打ち込みをシームレスに組み合わせたフィジカルなグルーヴが全編に敷かれ、パワフルに躍動しまくっている。
また、カリスマティックな存在感を放つHiroの歌声とデス・ヴォイスとの掛け合いや5人全員による重厚なコーラスワークなど、複雑かつスピーディーに展開する楽曲のドラマ性をよりキャッチーに、ヴィヴィッドに高める〈歌そのもの〉の強度もハンパない。彼らの並外れた基礎体力が存分に発揮された本作、この胸のすくようなカタルシスの応酬に抗うのは至難の業ではなかろうか? 2010年も始まったばかりだが、今年のベストに数えられそうな傑作がいきなりお目見えである。
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