インタビュー

LONG REVIEW――RAMB CAMP 『RAMB CAMP』

 

RAMB CAMP_J170カーティス・メイフィールドが75年に発表したアルバム『There's No Place Like America Today』は、黒人差別が根強く残る当時のアメリカの実情を冷静な皮肉と共に描き出した、彼の社会派としてのパーソナリティーを打ち出した作品として知られている。FREEZが収録曲“俺まだ本気出してないだけ”のなかで語る〈どんな状態でも諦めない/車イスで歌うたうカーティスのように〉というラインに誘われてということもあるのだろうけれど、RAMB CAMPの新作を繰り返し聴いているうちにボンヤリと浮かんだのは、カーティスが遺したその傑作のことだった

約5年ぶりのフル・アルバムとなる本作において、FREEZとBIG FACEの2人がソウル汁の滴るトラックをバックに吐き出す言葉は、先行きが不明瞭なこの時代において、それでもなおヒップホップを糧に未来を切り拓くことを覚悟したラッパーの矜持だ。閉塞感に満ちた現代の生き難さが生む鬱屈をエネルギーに転化し、絡みついてくるような諦念を音楽でブレイクスルーしようとするその姿勢がリアル・ブルースとしてアルバムに昇華されており、それが件のカーティス作品を連想させる結果に繋がったのだと思う。

K-BOMBとJUBEのユニット=The Leftyとの超ハーコーな四つ巴合戦が熱い“Rebel Music”、オールドスクール流儀のクソぶっといビートが鼓膜を震わす“B-Boy Shit”、DAMのオールダーティ・バスタード“Shimmy Shimmy Ya”を連想させる変体(変態?)フロウが衝撃的な“Stay Hardcore”などなど、Bボーイの文法に馴染んでいる人なら思わずニンマリしてしまうような楽曲を満載した本作。そのハードな現実を吹き飛ばすような活力に満ちたリリックと、滋味深いサウンドが渾然一体となったスタイルは、いわゆるニュー・ソウルと呼ばれるムーヴメントから生まれた名作群と同様に、混迷の時代を象徴するサウンドトラックと言えるのかもしれない。

 

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掲載: 2010年05月12日 18:00

更新: 2010年05月12日 18:04

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