インタビュー

INTERVIEW(2)――固め濃いめ黒め

 

固め濃いめ黒め

 

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そんなわけで、「普段の〈breakthrough〉のノリ」(Masaya)のままに展開される今回の『Freewheeler mixed by breakthrough』は、ここ数年のパーティーで頻繁にプレイされている楽曲が「いつも通り、等身大な感じで」(JIN)心地良く披露される一枚になっている。「いろんな時間帯の側面をミックスした感じかな」(Ladi Dadi)という言葉の通り、宵の瞬きのようにも明けの陽光のようにも感じられる煌めきが、黒いカンヴァスの上に散りばめられているのだ。

リンクウッドやトラスミー、そしてデイム・ファンクといったビートダウン~ブギーの現在進行形も感じさせつつ、ジミ・テナー&トニー・アレンの2曲をはじめとするアフロの放熱、そこから宇宙へ飛ばされるかのようなシャフィークやサー・ラー、あるいはコズミックな浮遊感を纏ったアンドレスやワジード、さらにはソウルフル汁の滴るマイルズ・ベンジマン……いわゆる〈クロスオーヴァー〉と呼ばれる流れをヒップホップ的な視点から一望しつつ、そこに近年のオーガニックなテクノが醸すディープな音像までもが束ねられている。個人的にはスタンス・ブラザーズのファンキーな“Roll Call”に被さってくるロコ・ダイスの説教(?)クリック“Pimp Jackson Is Talkin' Now!!!”がキモになっているようにも思えた。

Masaya「そうかもしれませんね。そういうふうに感じて貰えるのは嬉しいです。ロコ・ダイス近辺はピークかもしれませんね」

LD「完全にファンクだと感じちゃってます。しかも相当深い黒さの(笑)。ミニマルなテクノの開放感にはたまらないものがあります」

FC「逆にあの曲はヒップホップ的な感覚で首振って踊ってますね。テクノの人たちはあんなミックスしないと思います(笑)」

JIN「さまざまな音楽がキーになり続けているし、テクノの楽曲もパーティーを始めた当初からプレイし続けているので、これまた作為的なものはないです。その時それぞれの楽曲の持つ時代感はあると思いますが。クールにクロスオーヴァーしてイッてるつもりです」

言うまでもなく、そうした分類はあくまでも記事面上の分類であって、彼らの紡ぎ出す流れは〈breakthrough的〉という以外に殊更のタギングを必要としないもの。結びのボーナス・トラックには、「同じ音楽性を共有できて、この10年も共に歩んでいるファミリー」(Masaya)と語るKeycoをフィーチャーした、トロピカルなエクスクルーシヴ曲“Maybe It's You......”も収録されている。

この後にもDJ JINはミックスCDのリリースを控えており、Physical Sound SportのアルバムやTettory BLKの作品集も予定されているようで、10年を迎えていっそう(マイペースに)加速する彼ら。思えば前のオリジナル・アルバムからはもう5年が経っているわけだが、今回の新曲をきっかけにその〈次〉もそろそろ期待してよさそうだ。それまでは「固め濃いめ黒め」(Masaya)で「意外に夏向け」(Ladi Dadi)な『Freewheeler mixed by breakthrough』で、クソ暑い季節をクールに燃やしておくとしましょう。

 

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掲載: 2010年07月28日 17:59

インタヴュー・文/出嶌孝次