インタビュー

BIG RON 『LIVIN' LARGE』

 

20人以上のゲストを迎えた全20曲。さらにスキルを深化させて、新たな地平に飛び出した、タイトルを地で行くデカいグルーヴを聴け!

 

日本のウェッサイ・シーンの顔ともいうべきシンガー、BIG RON。その5XLサイズから繰り出されるスムースな歌声は数多くの客演でもお馴染みだ。そんな彼がいまやりたいことのすべては、このほど完成させた4枚目のニュー・アルバム『LIVIN' LARGE』に盛り込まれている。全20曲・20名以上のゲストというこれまでにないヴォリューム/スケールになったのもそのおかげ。「ヒップホップのハードなところからメロウなバラードまで、広い幅を持ったアルバムを作りたかった」と本人は説明する。

「1~2枚目の『STR8 OUT DA BAY』『MISTA XXXXXL』はフルでDJ PMXにプロデュースしてもらった、言わば〈PMXスクール〉での勉強期間。それから吸収した自分のオリジナリティーをアーティストたちとコラボレートするなかで出したのが3枚目の『Much Love』で、4枚目の今回ではやりたいことを完璧に出せた」。

自分のハードなキャラをぶっ壊すべく、ポップに仕上げたという前作を経て、ふたたびコアな楽曲やサウス寄りのビートなど新たな方向にも切り込み、バランスを取った内容は、彼自身の「ヒップホップを裏切りたくない」という気持ちによるもの。過去2作を総合プロデュースしたPMXが8曲の制作と全体の構成を手掛ける一方、DJ DOPEMAN、DJ☆GOらのトラックも起用してアルバムに広がりを持たせている。

「新しいこともやってもらいつつ、パブさん(PMX)ワールドを全部出してもらって、それ以外のものを他のトラックメイカーに埋めてもらった」。

PMXからの「“STAY WITH ME ”(2007年)の2010年版を」とのリクエストに苦しみながら完成に漕ぎつけたというバラードのリード曲“EVERYTHING IS YOU”。初作に収録された“GHETTO LUV”のパート2的な曲として、JAMOSAをフィーチャーしつつ原曲に参加したフィンガズをプロデュースに迎えた“STAY BY MY SIDE”。さらにはHOKT+AK-69+Kayzabro(DS455)とのユニット=HARKの意味深なメッセージが聴ける“FINAL SHOW”、クルーのTHA DSCとしてマイクを回す“REP MY CITY”。そして前作収録曲の“JUST 4 YOU”をDJでいつも回してくれていたという縁から参加したZeebraや、SILVER BUCKらによるスキット群など——総勢20名を超えるフィーチャリング勢を絡めたその内容は、まさに「お客さんを楽しませるのがアーティスト」という彼の言葉に相応しいものだ。

「自分はストリートものからポップな雰囲気のあるヒップホップまで広い方向性を持っていたい。ただ新しいことを追求しても基本は壊さずに、俺のベースであるヒップホップを変えるつもりはない。『LIVIN' LARGE』はその意味で、バランスが取れたアルバムだと思う」。

自身が主宰するプロダクションの第1弾プロジェクトとなるコンピ『XXXXXL inc. presents NexSt★rz』も本作を追う形で発表し、来年にはTHA DSCのクルー・アルバムも予定されているなど、この後も関連作が続くBIG RON。アルバム・タイトルを地で行くデッカイ存在感で、彼はウェッサイ・シーンそしてヒップホップ・シーンにさらなる力を与えるのだ。

 

▼『LIVIN' LARGE』に参加したアーティストの作品を一部紹介。

左から、DS455の2009年作『CHECK THA NUMBER』(BAYBLUES/HOOD SOUND/Village Again)、DJ☆GOの2010年作『LONG TIME BLUE』(HOOD SOUND/Village Again)、AK-69の2009年作『THE CARTEL FROM STREETS』(MS)、HOKTの2009年作『21 Century Rock Star』(DIG DA GOOD IMC/HOOD SOUND/Village Again)、KOZの2010年作『THE ONE WAY』(HOOD SOUND/plusGROUND)、SAYの2010年作『One Love』(EMI Music Japan)。いずれにもBIG RONが参加!!

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2010年11月09日 14:44

更新: 2010年11月09日 14:44

ソース: bounce 326号 (2010年10月25日発行)

インタヴュー・文/一ノ木裕之

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