つるの剛士 『シュガーバイン/Two weeks to death』
ニュー・シングル“シュガーバイン”でthe pillowsとのコラボレーションを実現させ、持ち前のロック・スピリッツを解放させたつるの剛士。かねてから交流のあったそのフロントマン、山中さわおとのスペシャル対談をお届け!
──つるのさんと山中さんに交流がある、ということを意外に思う読者も多いでしょうね。
山中さわお「そうかもね。親戚のおばさんがすごいビックリしてたからね。つるの君のブログを見てたら、いきなり俺の名前が出てきたって。〈知り合いなの?〉ってメールが来た(笑)」
つるの剛士「ハハハハハ! 最初は僕がやってた深夜のラジオ番組(TOKYO FM〈BPR5000〉)にゲストで来てくれたのがきっかけだったんですよね。その後、ライヴハウスでやってた〈つるロックフェスティバル〉(つるの剛士がプロデュースするライヴ・イヴェント)にさわおさんがプロデュースされてたnoodlesが出てくれて。そのときも観に来てくれたんですよね」
山中「ELLEGARDENも出てたよね」
つるの「そういえば、ミッシェル・ガン・エレファントの解散ライヴもいっしょに観ましたね」
山中「幕張(メッセ)だよね」
つるの「あれが……2003年ですか」
──今回のつるのさんのシングル“シュガーバイン”は、山中さんの作詞作曲で、演奏はthe pillows。どういう経緯で実現したコラボレーションなんですか?
つるの「経緯はですねえ……〈羞恥心〉で僕のことを知ってくれた人も多いと思うんですけど、もともと好きだった音楽──ロックな部分も出していきたいっていう話をさせてもらっていて。その念願が叶って、今回いっしょにやれることになったっていう」
山中「スカパラともいっしょにやってるよね?」
──“夏のわすれもの”ですね。ところで“シュガーバイン”の印象はどうでした?
つるの「デモテープがめちゃくちゃカッコ良かったんですよ。もうね、the pillowsじゃないですか!」
──たしかに。サウンドは完全にthe pillowsですよね。すごくポップなんだけど、オルタナ感があって。
山中「当たり前じゃないか、俺たちがやってるんだから」
つるの「いや、そうなんですけど(笑)。ただ、歌える自信が全然なかったんですよね。これはthe pillowsで聴きたい!って思っちゃって。メールもしたんですよね、さわおさんに」
山中「そのメールもらって、〈あっ、気に入ってないんだな〉って思ったけどね(笑)。かなり大人の対応というか、〈これはthe pillowsでやったほうがいいんじゃないですか?〉って言い方で断ってるんだろうな、と」
つるの「いやいや、違いますよ! 何て言うか、さわおさんが歌ってるデモはもちろんカッコイイんだけど、自分が歌うってなると、いい意味でそれを壊さなくちゃいけないじゃないですか。the pillowsのファンと僕の歌を聴いてくれてる人たちをどうやって融合させるか?ってことも考えたし。レコーディングの現場で、そこを消化していったというか」
山中「ビックリしたのはさ、(レコーディングで)俺の10倍くらい歌ってるんだよね、つるの君」
つるの「えっ、歌いすぎですか? 他の現場を知らないからよくわからないんですけど」
山中「あんなに歌わないよ、普通。ディレクターの人もめちゃくちゃスパルタで、〈じゃあ、次はここを歌い直して〉ってバンバン指示出すんだよね、千本ノックみたいに。俺だったらキレるね、〈じゃあ、オマエが歌ってみろ!〉って(笑)。でも、ノドが強いんだろうね。ずっと歌ってても声がヘタれないから。しかも、俺が裏声で歌ってるところを、キーを上げつつ地声で歌ってるっていう。意外とヴォーカリストなんだなっていう、〈あっ、歌手なんだ〉って思った」
つるの「そう言ってもらえて嬉しいです。歌詞も俺をイメージして書いてくれたんですよね」
山中「歌詞については……俺は常に曲を書いていて、この曲もそのなかのひとつだったんだよね。〈無限の未来が犇いて/どれにしよう〉あたりの歌詞はあったんだけど、いまの俺の歳でこれはどうだろう?っていうのもあって。中学生、高校生の頃の自分みたいなヤツにガツッと入る曲にしたいんだけど、最近の俺の気分とはちょっと違うというか。そこに今回の話が来て、これはいいんじゃないかって思ったんだよ。俺よりもつるの君のほうが、この曲を伝える力があるって思ったし」
つるの「その話をメールで送ってくれて」
山中「何て言うか、つるの君はもともと俳優だし、いろんな仕事をしてるわけじゃない? 冗談だったはずの羞恥心がたまたま大きな規模になったりして。でも、かなりコアなロックが好きだっていうのも知ってるし、だから俺のところに話が来るのかなっていう。そういう余計なことも考えながら歌詞を書いたんだけどね」
つるの「ありがとうございます。自分はいま、すごくいいポジションにいると思ってるんですよね。僕はどっちにも行けるし、〈架け橋〉になれるんじゃないかなって。今年の〈つるロック・フェス〉(8月11日にリビエラ逗子マリーナで開催)もそうなんですよね。普段、ヴァラエティー番組で僕のことを観てるような人たちに、ロック・フェスに来てほしいっていう。そこで交流が生まれれば、楽しいじゃないですか」
山中「そう思うよ。俺たちからは相当距離のある人たちにもパッと届けられるというか。V6に曲を書いたのもそうで(2007年発表の『Voyager』に収録された“シュガー・ナイトメア”)、ジャニーズのファンがロックを好きになってくれたらおもしろいなって思ってたし。チャートのなかにもっともっとロックが入ることも期待してるしね。あと、印税がたくさん入ることも(笑)」
つるの「(笑)。でも、こうやっていっしょにやれて良かったです。実際にCDになると重みがありますね。もちろん、届いてほしいなって思うし」
山中「うん、いい曲になって良かったよ」
▼関連盤を紹介。
左から、つるの剛士のシングル『夏のわすれもの/Love Letter』(ポニーキャニオン)、the pillowsの2009年作『OOPARTS』(tearbridge)、山中さわおの2010年作『DISCHARGE』(DELICIOUS)
カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2010年11月15日 19:44
更新: 2010年11月15日 19:45
ソース: bounce 326号 (2010年10月25日発行)
インタヴュー・文/森 朋之 写真/在津完哉 スタイリング/佐藤慶明