インタヴュー①「体感した上で何かを表現する、それが全てリアルに伝わるんだと思います。」
「体感した上で何かを表現する、それが全てリアルに伝わるんだと思います。」
―クリストファー・ノーラン監督の独自性という部分で、
なるべく合成用グリーン・バックを使わない画面作りをされると思いますが・・・。
「僕自体グリーン・バックでやったことがあまりないんです。
今回、この映画でクリスがまず3Dにしなかったということが、
ある一つの見識なのかなと思いました。
というのは、映画は2Dという平面の中でいかに奥行きを出して深みを出していくか
ということが大事だし、ある種彼はそのことに自信を持って映画を作っている。
CGはもちろん使うけれど、これは夢の中のがメインのお話。
だからこそ、夢か現実か分からなくなるリアルさがないと、
観客は引き込まれていかないことに血道を上げたんだと思うんです。
それで、ほとんどのセットを細かく作りこんで、
俳優がそれを全て体感出来るような状況を僕らに提示してくれたんだと。
本当に嘘のような、列車が雨の街の中を車をふっ飛ばしながら進むシーンは、
僕ら実際に目の前で見させてもらってましたから。
もちろん、街が倒れてくるシーンはCGですけれども、
基本的な俳優周りのものに関しては全部本物。
体感した上で何かを表現する、それが全てリアルに伝わるんだと思います。」
―それは、体力的にはきついですか?
「きついです。水の中にずっと寝ていなきゃいけないシーンとか、360度ひっくり返るシーンとか。
殺される!とまでは思わなかったですけど(笑)、きつくて全然楽しめないわけですよ。
楽しい反面、楽しめないんですね。役では寝てるわけですから。
これは作品の中で、結構不思議な体験でした。」
―共演したキャストのことを教えて下さい
「女性に人気があったのは、ジョゼフです。
すごいジェントルだし、いつも変わらない笑顔があるんですよ。
彼はすごいさわやかな印象なんですけど、僕が後半よく一緒にいたのはキリアンですね。
彼はアイリッシュで、自分の国にいることを非常に大切にしている人なんです。
自国の映画もとても大切にしてるし、ちょっと僕と似たような立場を感じましたね。
もちろん年代は違うけれど、アメリカに2・3年来てやってみると面白いよ、みたいな話しも
飲みに行ったときにしましたね。他はとにかく全然そんな時間がなかったです。
あまりにも大変で、撮影が終わるとみんなヘロヘロでホテルに帰っていくという感じですね。」
―ノーラン監督について教えて下さい
「基本、クリエイティブコントロールは全部やる人ですね。
恐らく『ビギンズ』のときは、プロダクションとの絡みがあったんでしょうけど。
やっぱり回を重ねるごとに自分のオリジナリティはこれだというように、
きっちり自分で全てコントロールするということを学んだんではないでしょうか。
これは、彼が『メメント』を撮っている時から変わってないと思うんですけど、
要は余分な圧力を排除するにはどうしたら良いかという方法論を彼の中に持ち得たんだと思うんですね。
今回もオリジナルの脚本で、これぐらいのテーマ性がある作品で、
なおかつエンターテイメントに仕上げなくてはならない。
莫大な予算の獲得なども含め、かなりのチャレンジだと思うんです。
非常にコンパクトなスタッフでクリエイティブコントロールするということが、
このような映画を作るための必須条件。
映像管理も含めての気心の知れたスタッフで仕事をしていくというのが大切なんでしょう。」
―監督からジェームズ・ボンドをイメージするように言われたとのことですが・・・。
クリスから、ジェームズ・ボンドのようにやるよう依頼されたんですが、
ジェームズ・ボンドって、どんなにハードなシーンでもどこか引いてるところがありますよね。
そういう感じが好きなんだろうなと思うんですけど。
悪の匂いもしながらカリスマ性があるんだけど、どこか引いてるようなサイトー役を望んでたようですね。