インタビュー

Aira Mitsuki 『???』

 

精力的かつ貪欲に活動を展開しているAiraから、早くも次なる謎が……クエスチョンマークだらけの世界で彼女が掴んだ『???』とは???

 

 

ほう、!!!じゃなく???かね。前作『6 FORCE』がSawagiのバンド演奏をフィーチャーした内容だったから、今回はさらに!!!ばりのバンド・グルーヴを追求しているってことだな……なんて思った人がいるかは知りませんが、出来上がった『???(スリークエスチョン)』を聴けばそういう感じでもなく、逆にキンキーな部分が引っ込んだかとも思えるほど、シンプルに〈シンガー・Aira Mitsuki〉のアルバムに仕上がってきた。じゃあ『???』って何なのよ???

「(プロデューサーの)Terukadoさんの言葉を借りると、〈Aira Mitsukiの魅力ってなんだ?って考えると、ツッコミを入れたくなるようなナゾな存在なんだ〉と。最近は少しサウンドも活動スタンスも〈こうじゃなきゃいけない〉みたいにストイックになりすぎた感もあったから、一度リラックスする意味でも『???』にして、とにかく興味をそそられるエンターテイメントであり続けようと」。

わかるようなわからんような……前作から半年という短いスパンについては、「『6 FORCE』が完成した流れで制作をそのまま続けていたという感じ」だそう。

「『6 FORCE』の曲はあまり歌モノっぽくないところが個人的にはカッコイイと思ってたんですけど、私の他の曲と比べると、やっぱり歌モノに負けてしまうというのはあったと思います。それを踏まえて今回はTerukadoさんが〈5:5じゃなく、6:4にしよう〉と言って制作していて——歌の比重を上げようという意味なんですけど——よりAira Mitsukiそのものをフィーチャーした歌メインの作品にしたんです。前作までならやらなかった、細かいコーラスワークの追求とかフェイクを入れるとか、歌入れの細かさはいままで以上に丁寧に仕上げていきました。チューン・ヴォイスもいままでのオートチューンだけじゃなく、メロダインっていう別のソフトを採り入れたり、いつものディレイのセッティングを変えたりとか、いろいろやりましたね」。

従来のビックリ路線のファンなら逆にビックリするかもしれないほど、実際に今作はAira個人の歌に焦点が当てられ、正統派の洗練された内容になっています。

「そう思っていただけると嬉しいですね。そういう印象は、さっき話した〈~じゃなきゃいけない〉に捕われないで作ったからかもしれないです」。

洗練された印象はエレピやパーカッションの音色を心地良く響かせるトラック面の変化によるものもあるだろうし、以前の作品に顕著だった悲観的なニュアンスが歌詞から後退したこととも関係あるのかもしれません。

「歌詞については、大人になった部分が大きいかもしれないです。本当の自分を歌詞にするのがよいのかどうかはいつも悩むポイントですけど、今作では曲を活かすことを優先して言葉を選びました」。

さて。とはいえ個々の楽曲は最高にポップでカラフル。環ROYのぶっきらぼうなラップが駆け込み乗車してくる“TRAIN TRAIN”で威勢良くスタートし、結晶が跳ねるようなエレポップの“321”、そして出オチに終わらない完成度を備えた小沢健二“愛し愛されて生きるのさ”のカヴァー、シンプルなエレクトロ“WHY TWO?”、人肌っぽい温もりを感じさせる“rainy tone”~“Human Future”……と、冒頭から多彩な意匠がスルスルとスクロールしてグイグイ引き込まれます。ごんぶとなドラムンベースの表題曲や鋭角的なエレディスコの“Parameter”、渋谷系ノリなお洒落ボッサ“smile”、さらには以前の隠れ名曲“COSMiC CHOPPER”以来となるディスコ・ファンク調の“fly”などなど、よくぞここまで!と言いたくなるほどの振り幅を用意しつつ、彼女のポップな魅力がまっすぐ追求されているのです。そしてシメが、KARAらを手掛ける韓国のSweetune(ハン・ジェホ、キム・スンスら)が作曲を担当した“LOVE Re:”とは。

「メロがキャッチーで、ドンピシャな歌詞をはめるとかなりポップスになっちゃうので、詞を書く時はバランスが難しかったですね。書き終わった後で〈韓国語を入れればよかった~〉ってちょっと後悔してますけど……。私が北京でライヴをやった一昨年ぐらいにTerukadoさんが韓国のグループのことを話していて。昨年から何回か韓国に行ってたみたいで、それでハン・ジェホさんたちと繋がったみたいです」。

そんなわけでヘンテコなタイトルやジャケとは裏腹に、より生身の姿に近づいてきた彼女ですが、それは決して保守的になったというわけではなく。「やりたいことをやるのがいちばんなので、好きなことをやりたいです」と語るAiraの謎掛けはまだまだ続いていくはずです。

 

▼Aira Mitsukiの作品を紹介。

左から、2008年作『COPY』、2009年作『PLASTIC』、2010年のミニ・アルバム『6 FORCE』(すべてD-topia)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2010年12月10日 23:27

更新: 2010年12月10日 23:27

ソース: bounce 327号 (2010年11月25日発行)

インタヴュー・文/出嶌孝次

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