インタビュー

Yevgeny Sudbin

待望の日本デビューを控えた、BISレーベルの若きエース


©Clive Barda

1980年、旧ソ連のサンクトペテルブルグに生まれ、現在ロンドンを中心に欧米で活躍しているエフゲニー・スドビンは、いま最も注目されてしかるべき若手ピアニストの一人である。

「両親もピアニストで、練習したり教えたりする音を聴いていましたし、家にはリヒテルやギレリスなど、沢山のレコードもありましたから、生まれてからずっと、いつもピアノに囲まれた環境でした。ですから、ピアノを弾き始めた幼い頃には、ピアニスト以外の仕事がある、なんてことすら知らなかったでしょうね。サンクトペテルブルグでは、1986年から、伝説的な教師であるリューボフ・プヴスナーに、運良く習うことができました。1990年にベルリンに移ってガリーナ・イワンゾワにつきましたが、プヴスナーにも、引き続きベルリンで師事することが出来ました」

1997年に英国国立音楽院に入学、クリストファー・エルトンの元で研鑽を積んだほか、同校や各地で多数のピアニストの薫陶を受けている。

コモ湖国際ピアノ・アカデミーは、沢山の名ピアニストたちと、堅苦しくない雰囲気の中で、様々な刺戟を受けることができました。あるときなど、レオン・フライシャーが、学生たちの間で、床に寝っ転がって昼寝してたことがありました。教えるということは、それほど疲れることなんでしょう(笑)。フー・ツォンは毎朝太極拳をやっていて、夜は遅くまで、女性とかシェンカー理論について、マレイ・ペライアと話をしていたのをよく覚えていますね。それからスティーヴン・ハフは、なにしろ驚くほど多才な人ですから、ほとんどあらゆる分野について語ることが出来る人ですね」

国際コンクールで赫赫たる成果を得ることのないまま、2005年、スカルラッティ、次いでラフマニノフのディスクで鮮烈な録音デビューを果たしたが、スドビンは瞬く間に絶賛の嵐に包まれた。その後も、スドビンが〈最も優秀な録音スタッフ〉擁する【BISレーベル】から名録音を連発している。最新作はハイドンだが、近くリリースされるヴァンスカ/ミネソタ響とのベートーヴェンの4番と5番からはじまる協奏曲全集ツィクルスに、スクリャービンとメトネルの協奏曲第3番(第1、2番は録音済)、ソロでもショパン、メトネル、ラヴェル、プロコフィエフなどなど、録音予定は目白押し。演奏や録音の質もさることながら、全てのディスクでスドビン自身が実の詰まったライナーノートを書いているのも、彼の特徴の一つである。

そんな彼が、漸く待ち望まれた初来日公演を行う。

「日本の音楽シーンが活発で、クラシック音楽の演奏会に多くの真摯な聴衆が集まることは知っていますから、とにかくベストを尽くします」

首都圏で、しかも僅か2回の初来日公演なのは残念だが、頻繁に、かつ全国で演奏を耳にすることの出来る演奏家になる日はすぐそこだ。

『エフゲニー・スドビン2011年1月来日公演日程』
1/22(土)彩の國さいたま芸術劇場 音楽ホール
1/24(月)武蔵野市民文化ホール[完売]
スカルラッティ:ソナタ ヘ短調K.466、ソナタト 長調K.455、ソナタ ロ短調K.27/ショスタコーヴィチ:前奏曲第2番、第6番、第17番、第24番/ショパン:バラード第3番、第4番/リスト:超絶技巧練習曲第11番「夕べの調べ」/ラヴェル:夜のガスパール
http://www.eurassic.jp/

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2011年01月07日 20:06

更新: 2011年01月07日 20:16

ソース: intoxicate vol.89 (2010年12月20日発行)

interview & text : 川田朔也(仏語翻訳・音楽評論)