アシャのルーツにある音楽とビューティフルなインパーフェクト・ミュージック――(1)
デビュー時にも表明されていたように、アシャが影響を受けてきたアーティストとして挙げられるのは、ボブ・マーリー、フェラ・クティ、マーヴィン・ゲイら、いわゆる〈意識が高い〉とされる面々。他にもアレサ・フランクリンやニーナ・シモン、ザップ・ママ、ローリン・ヒル、エリカ・バドゥなど、アシャならずとも後進に甚大な影響を及ぼしてきたであろう名前がアシャを語る際には欠かせないようだ。が、注意深くなっておきたいのは、アーティストのイメージを規定して高潔さを要求したりする行為の危うさだろう。上記の名前の多くはその時代ごとにコマーシャルな支持を得てきた(語弊はあるが)ポップスターでもある。また、アシャはマイケル・ジャクソンにも憧れてきたというが、今回の新作にも普通にUS大衆ソウルの影響が表れているように、もう〈ワールド・ミュージック〉に必要以上の民族性を強調して、外野からエスニシティーを押しつける時代ではないのではないか。日本で〈洋楽〉や〈ワールド・ミュージック〉が普通に聴かれているように、世界中のあちこちで他の国の音楽は親しまれている。さまざまな影響が入り交じってもなお自然と滲み出てくるものこそがアイデンティティーだろう。『Beautiful Imperfection』はそんなことも教えてくれるはずだ。
▼関連盤を紹介。
左から、ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズのベスト盤『Africa Unite: The Singles Collection』(Tuff Gong/Island)、フェラ・クティの86年作『Teacher Don't Teach Me Nonsense』(Barclay/Knitting Factory)、ザップ・ママの2009年作『ReCreation』(Heads Up)、アレサ・フランクリンの68年のライヴ盤『Aretha In Paris』(Atlantic)、マーヴィン・ゲイの63年作『Stubborn Kind Of Fellow』(Motown)
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掲載: 2011年02月10日 16:26
更新: 2011年02月10日 16:27
ソース: bounce 328号 (2010年12月25日発行)
文/出嶌孝次