アシャのルーツにある音楽とビューティフルなインパーフェクト・ミュージック――(2)
SOHA 『D'ici Et D'ailleurs』 Capitol/EMI France(2008)
幼い頃よりアルジェリア民謡を歌いながら育ち、一方では欧米のロックやジャズ、そしてレゲエなどを愛聴していたという彼女は、アルジェリアンの血を引くマルセイユ出身のシンガー。フランス語/英語/パトワで歌うこの処女作では、キューバ音楽を採り入れたアレンジにふくよかさを見せつつ、アシャと同じくレゲエへのこだわりも聴かせます。*轟
CEE LO GREEN 『The Lady Killer』 Elektra(2010)
ヨーロッパで大ヒット中の本作はモータウンなどオールド・ソウルへの憧憬を軽妙洒脱に表明したもので、サム・クックやスモーキー・ロビンソンを思わせるスウィンギンな仕上がりはアシャにも通じるものだろう。なお、シー・ローのソロ・デビュー作の表題が〈完全なる不完全性〉を意味する『Cee-Lo Green And His Perfect Imperfections』だったのは偶然? *出嶌
KEZIAH JONES 『Nigerian Wood』 Because(2008)
パーカッシヴでバスキング的なギタリズムをベースに〈ブルーファンク〉を創出したナイジェリア出身のアーティストで、この最新作ではデトロイトのカリーム・リギンスと共に70sニュー・ソウル風の温かくシリアスな音像を構築している。アシャにとっては祖国の先輩にあたるわけで、自身の『Live In Paris』にもゲストとして招いていました。*出嶌
JANELLE MONAE 『The Archandroid: Suites II And III』 Bad Boy/Atlantic(2010)
アシャの“Be My Man”を聴いて、PVも鑑賞して思い出したのが、独特のアフロフューチャリズムを推進する彼女の“Tightrope”だった。ソウル・ミュージックの無邪気で賑々しい様式美をスマートに保ちながらコンテンポラリーなポップスとして輝かせる行き方は、ルートこそ違えどジャネルもアシャもめざす場所は近いだろう。*轟
MADJO 『Trapdoor』 Casablanca/Mercury France(2010)
アーティスティックなジャケがなぜかマリのインナ・モジャにそっくりなのは気になりますが……セネガルの血を引くこのマッジョもまた、フランスを拠点とするシンガー・ソングライター。外の人が勝手に期待する〈アフロっぽさ〉ではなく、自然な血潮の導きとコスモポリタン的な感性で現代的なフォーキー・ソウルを聴かせてくれます。*轟
JOHN MAYER 『Battle Studies』 Columbia(2009)
かつてアシャが“Daughters”をお気に入りに挙げ、〈素晴らしい声の持ち主〉と絶賛していたのがジョン・メイヤー。レイ・ヴォーンを入口にBB・キングまで辿り着いた彼が紡ぐのは、有機的な煌めきに溢れたブルーズン・ソウル。表面的な音楽性は異なるものの、新作でカントリーっぽい“Broda Ole”も披露しているアシャとの距離はそう遠くないはず。*轟
DIONNE BROMFIELD 『Introducing Dionne Bromfield』 Lioness/Island(2009)
エイミー・ワインハウスをお気に入りに挙げているアシャですが、そのエイミーが自身のレーベルから送り出したのが(リリース当時)13歳のロンドン娘。ヴィンテージ・サウンドに乗せてミリーやシュレルズ、マーヴェレッツらの名曲をまっすぐに歌うあどけない明るさは、新作でアシャが獲得した屈託のなさに繋がるものでしょう。*出嶌
INDIA. ARIE 『Testimony: Vol.2, Love & Politics』 Soulbird/Universal Republic(2009)
オーガニック・ソウルの旗手として登場した才女の、インテリジェントな冒険気質が極まった最新作。シャーデーがソマリアの惨状を歌った“Pearls”をコートジボワールのドベ・ニャオレと共にカヴァーし、グランプス・モーガンとコンシャスなコラボを展開するなど、立ち位置は異なるもののその眼差しはアシャと同じだ。*轟
YAEL NAIM 『She Was A Boy』 Tot Ou Tard(2010)
日本で話題になった時期が近かったためか、アシャと並び称されることも多かったのが、イスラエル系フランス人シンガー・ソングライターの彼女。リリースしたばかりのこの最新作でも、人種も国籍も逆に関係なく、アシャやローリン・ヒル、ザップ・ママらとの大らかな繋がりが感じられます。*狛犬
カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2011年02月10日 16:26
更新: 2011年02月10日 16:27
ソース: bounce 328号 (2010年12月25日発行)
ディスクガイド/轟ひろみ、狛犬、出嶌孝次