UNIQUE 『From Brooklyn To You』
柔らかそうな長髪が似合う風貌は、甘い優男風でもあるし、タフさを秘めているようにも見える。甘いが、力強くしなる歌声はそんなルックスから受ける印象そのもののよう。名門デフ・ジャムに認められたスター性と実力を合わせ持つ21歳のシンガーが、自身の生まれた地をタイトルに冠したアルバムでついにそのユニークな才能を花開かせる。
「ブルックリンのベッドスタイで育ったんだ。ヴァイオレンスがあったりして環境は良くなかったけど、楽しいこともいっぱいあった。でも、子供の頃から自分のやりたいことがわかってたから、音楽を通して外の世界を見ていたよ」。
アッシャーやブランディ、マイケル・ジャクソンなどに憧れ、3歳の頃から歌っていたというユニークにとって大きなきっかけとなったのが、R&B/ヒップホップ名作の多くに関わり、現在はアイランド・デフ・ジャムのトップに座るLA・リードとの出会いだ。
「LA・リードはMySpaceで僕のことを知ってて、それで気に入ってもらって契約に至ったってわけさ。デフ・ジャムを離れたのは方向性の違いが原因。もっと自由に自分を表現したかったんだ。お互い納得のうえだし、これで良かったと思ってる。なぜって、こうやって日本のみんなのためにアルバムを作ることができたわけだからね」。
このたび登場したファースト・アルバム『From Brooklyn To You』は日本のManhattan主導で制作され、ニーヨ以降の流麗なR&Bを中心にした秀逸な出来となっている。エリック・ハドソンやリル・エディ、オーク、J・レミーなど優秀なプロデューサーが並ぶなかでも、マイケル・ジャクソン“Hold My Hand”を手掛けて注目が集まっているクロード・ケリーの名が6曲にあることは特筆すべきトピックだが、彼とは昔からの付き合いだそうだ。
「彼は兄貴みたいな存在だよ、長い間いっしょにやってきてるしね。成功して本当に嬉しいよ。僕たち2人、ようやくここまで来たんだ。彼は世界に向けて音楽を作ることができる人だし、僕もそれをやりたいと思ってる」。
また、BACHLOGICら日本勢も本作のために楽曲を提供しており、なかでもJeff Miyaharaとクロード・ケリーが共作した、シャリースとのエモーショナルなデュエット“Wherever You Are”は大きな話題となっている。
「エキサイティングだったよ、彼らと仕事ができてよかった。シャリースとの曲も凄く好きだよ。〈世界のどこにいても、この曲を聴いたら好きになるよ〉ってね。最初に会ったのは、彼女が(ブレイクのきっかけとなる)〈オプラ・ウィンフリー・ショー〉への出演を準備している頃だった。その時は、まさかその後にデュエットすることになるとは思わなかったよ」。
なお、大半の楽曲にはソングライターとしてユニーク自身の名もクレジットされている。名だたるプロデュース陣との制作において、彼自身のアーティスト性をどう表したのだろう。
「エモーションを曲に入れ込むことが自分の役割だよ。すべての曲でリリックを書けてラッキーだったと思う。曲作りのプロセスは毎回違うんだけど、スタジオに入って僕が自分のやりたいことを伝えて、最初からいっしょに作り上げていった。このプロジェクトのいいところはそこなんだよ。ビートや曲をデータで貰うとかじゃなく、すべての曲が僕のアルバムのために作られたものなんだ。へヴィーなドラムにギター…… 彼らの曲が僕をインスパイアしてくれた」。
感情の込められた音楽が、ブルックリンから〈あなた〉に向けて届く。「キャッチーでラジオ受けもするけど、同時に純粋なエモーションも感じられるような音楽が、いまはあまりないと思うんだ」——そう語るユニークが流行りのスタイルをなぞるだけではない本物のアーティストである予感は、アルバムを聴けば確信に変わるはずだ。
PROFILE/ユニーク
89年生まれ、NYはブルックリン出身のR&Bシンガー。5歳の時から学校のタレントショウに出演し、マイケル・ジャクソンやアッシャー、ビヨンセに憧れてアーティストへの道を志す。2005年頃からMySpaceを通じて音源や動画を発信し、本国を中心にファンベースを築き上げていく。2006年にクリス・ブラウンとニーヨの共催ツアー〈The Up Close And Personal Tour〉でフロントアクトを務め、LA・リードの導きでデフ・ジャムと契約。その後、いくつかの楽曲リークを経てレーベルを離れる。2010年に入ってシングル“You Me And The Dancefloor”が配信ヒットを記録。このたびファースト・アルバム『From Brooklyn To You』(Manhattan/LEXINGTON)をリリースしたばかり。
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掲載: 2011年02月15日 13:38
更新: 2011年02月15日 13:38
ソース: bounce 328号 (2010年12月25日発行)
インタヴュー・文/池谷昌之