インタビュー

The Mirraz 『We are the fuck'n world』

 

 

The Mirrazの勢いが止まらない。自主レーベルのKINOIを発足させ、昨年の9月に発表したサード・アルバム『Top of the fuck'n world』に続く新作『We are the fuck'n world』を早くも完成させてしまった。とはいえ、タイトルからもわかるように、これは前作と2枚でひとつの作品という位置付けになっていて、純粋な新作とは意味合いがやや異なる。過去に作った楽曲も収録されるなど、これまでの活動に区切りを付ける作品となっているのだ。

「2曲目の“あーあ”っていう曲は、セカンドの『NECESSARY EVIL』の頃の曲で、ちょうどニューレイヴが流行ってたんでそれを意識して作ったんですけど、アルバムには合わなかったんで置いておいたんです。でもいい曲だから、賞味期限が切れる前にリリースしたいとは思って」(畠山承平:以下同)。

“あーあ”の元ネタはフレンドリー・ファイアーズの“Paris”だというが、イントロのギター・リフやスケール感のあるメロディーはU2も連想させる。前作に収録されていた“ハッピーアイスクリーム”の元ネタはキングス・オブ・レオンの“Use Somebody”だったし、最近はこの手のメジャー感のあるロック・バンドからの影響も大きいのだろうか?

「キングス・オブ・レオンは“Use Somebody”まで知らなかったんです。でも後から聴いて、セカンドでいきなりストロークスをパクリ出して、その後思い切ってU2パクッてセルアウトしましたっていうのがおもしろいなって。彼らの姿勢は本気なんだけど、やってることは笑えるっていうか、すごく純粋で、それがThe Mirrazと同じなのかなって。アークティック・モンキーズが好きだから同じことをやっちゃうっていうのと」。

“正式にはフランケンというのは博士の名前である”をはじめ、本作には彼らの代名詞とでも言うべきアークティック・モンキーズ風の曲が収められているが、そういった曲を作るのも本作で最後にするそうだ。

「〈正式にはフランケン~〉って初期の頃作ったんですけど、いま弾いてみると結構自分のものにしてる感じがあって、今後こういうのをメインに打ち出してもリスナーが価値を見い出せないかなと思ったんですよ。あとアークティック・モンキーズを日本人がやるとジメジメしてるっていうか、暗くなっちゃうのが気に喰わなくて、それって根本的な人種の問題なのかなって。例えば、マイナーでブルースのようなものをやっても、日本人だとどうしても〈祭〉っぽくなっちゃうみたいな。それがすごく難しいなって思ったし、あとは単純に、最近はアークティック・モンキーズ以外でオリジナリティーのあるものが作れてると思うんで」。

本作でアークティック・モンキーズやニューレイヴといったこれまでの作風にひと区切りを付けて、次こそが本当の勝負作になるのだという。

「『Top of the fuck'n world』に足りなかったのって、簡単に言うと疾走感みたいなものだったかなって思って、次は明るくて速い曲を多めに入れようと思ってるんです。去年の夏にジェイミー・Tを聴いて、シンプルな3コードなんだけど新しい、っていうのができそうだなって思って、歌詞もシー・ローの“F**k You”みたいなエンターテイメントとしてのおもしろさがありつつ、The Mirrazとしてのメッセージ性も残せるものができそうで。U2とかの流れも手に入れたし、アークティック・モンキーズ以外のネタが揃ってきたっていうか、セルアウトっていうのをポジティヴに解釈できる要素が揃ってきたなって」。

年明け早々の取材ということもあって新年の誓いを訊いてみたところ、「今年はTOP10に入りたい」と答えてくれた畠山。TOP10と言わずに、ナンバーワンをめざして、2011年も突き進んでほしい。

 

PROFILE/The Mirraz

2006年9月、畠山承平(ヴォーカル/ギター)が中心となって結成。2008年6月に関口塁(ドラムス)が加わり、現在は佐藤真彦(ギター)、中島慶三(ベース)を加えた4人で活動中。2008年12月にファースト・アルバム『OUI!OUI!OUI!』をリリースし、ライヴ・パフォーマンスと共に高い評価を獲得した彼らは、2009年10月にセカンド・アルバム『NECESSARY EVIL』を発表。2010年4月には、結成直後にライヴ会場限定でリリースされていたアルバム『be buried alive』が全国流通され、同年9月にはサード・アルバム『Top of the fuck'n world』を発表。リリースごとに注目度を高めていくなか、ニュー・アルバム『We are the fuck'n world』(KINOI)がリリースされたばかり。

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掲載: 2011年02月25日 14:27

更新: 2011年02月25日 14:27

ソース: bounce SPECIAL (2011年1月25日発行)

インタヴュー・文/金子厚武