coldrain 『The Enemy Inside』
「何々っぽくしようとか、どこに合わせて曲を作ろうとか、そういう考えが本当になくなった」と、ヴォーカルであり日米両国籍を持つフロントマンのMasatoは自信に満ちた表情で力強く語った。名古屋を拠点に活動する5人組、coldrainの新作『The Enemy Inside』は、2007年の結成時からライヴハウスに身を置き、現場で自分たちの泳ぎ方を模索してきた彼らの〈一つの答え〉を、聴く者に明確に突きつけている。〈新世代ラウド・ロックのニュー・フェイス〉として紹介されることが多いcoldrainの音楽性は、どのようにして培われてきたのだろうか。
「もともと2つのバンドが結合してできたバンドなんですよ。MasatoとKatsumaがいっしょにやっていて、弦楽器隊の3人——Y.K.C、Sugi、RxYxOは別のバンドで、お互いにいまのcoldrainのような音楽をやりたくていっしょになった。当時は洋楽への憧れがもっと強かった」(Y.K.C)。
「聴いてきた音楽はメタルだけど、バンドで音楽をやるときには自分がカッコイイと思うものを出そうと。リフに関しては、昔のメタルに影響されてますね」(Sugi)。
「みんないろんな音楽を聴くし、そのなかで自分たちはこうなりたいというのがあまりなくて。自分がやる音楽に関してはシンプルに考えてますね」(Katsuma)。
「前身のバンドの頃から、メロディーを核に置いたラウドなバンドをやりたくて。やっぱり、90年代後半のラウド・ロック・バンドにはすごく影響を受けましたね。僕はそもそもリンプ・ビズキットを聴いてバンドをやろうと思ったし。その後、リンキン・パークみたいなバンドが出てきて、メロディーを強調した王道のラウド・ロックにも刺激を受けたし。でも日本の音楽シーンも好きで、小室哲哉が作る音楽も聴いてたから、そういうポップ感も大事にしたくて」(Masato)。
ラウド・ロックとJ-Popに慣れ親しんできた音楽的素養を通して、より激しく、よりメロディアスにバンドの骨格が固まってきた。それ以外の構成要素は、メンバー個々の嗜好を反映させた現在のスタイルに辿り着く。良い意味でジャンルをはっきりと絞らず、ライヴで鍛え上げられた足腰、胸板、二の腕で真っ向勝負を挑んだのが、今作である。
「ヘヴィーなものはよりヘヴィーに、メロディックなものはよりメロディックに、僕らの持っている武器をもっと尖らせたというか、そこをさらに集約した音になったと思います。レコーディングに対する気持ちも、いかに〈気持ち〉を込められるかに変わってきたし」(Sugi)。
「ファースト・アルバムや前回リリースしたミニ・アルバムも、あまり背伸びしないように心掛けていたんですけど。今回はライヴで成長した部分がそのまま音源に出てるんじゃないかな」(Katsuma)。
「ライヴをやることで自分たちの曲をより深く理解できるようになったから、さらに、どれだけ一つひとつのフレーズを研ぎ澄ませることができるか、という曲作りだったんですよ。Masatoのメロディーはもっとソリッドになってるし、内から出てきた強さが音にも出てるんじゃないですかね」(Y.K.C)。
「音が研ぎ澄まされたことで、シンプルなところにより説得力が出たと思う。だから、今回はパワーのある楽曲が揃ったのかなって。新しいことをやったというよりも、いままでやってきたことの完成形という気がしますね」(Masato)。
確かに音の強度は増し、その対極に位置するメロディーはさらに光り輝いている。また、〈己こそ最大の敵〉という、収録曲の歌詞テーマから付けられたアルバム名にも、バンドが内面からタフになっていることが 窺える。前回も素晴らしかったが、今作のレコ発ツアーも本当に楽しみだ。
PROFILE/coldrain
Masato(ヴォーカル)、Y.K.C(ギター)、Sugi(ギター)、RxYxO(ベース)、Katsuma(ドラムス)から成る5人組。もともとMasatoとKatsumaが活動していたバンドにY.K.C、Sugi、RxYxOが加入する形で、2007年に名古屋にて結成。2008年11月にシングル“Fiction”でメジャー・デビューし、同年11月の〈TASTE of CHAOS JAPAN〉などへの参加を通じて認知を広げる。2009年4月にシングル“8AM”を、同年9月にはファースト・アルバム『Final Destination』をリリース。全国ツアーや大型フェスへの出演を経て、2010年6月ミニ・アルバム『Nothing lasts forever』を発表。このたびニュー・アルバム『The Enemy Inside』(バップ)をリリースしたばかり。
カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2011年03月04日 15:36
更新: 2011年03月04日 15:36
ソース: bounce 329号 (2011年2月25日発行)
インタヴュー・文/荒金良介