インタビュー

LONG REVIEW――NAOITO 『379DAYS』

 

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NAOITOのファースト・アルバム『雑食familia』をもう何度聴いたことだろう。初めてその音源を聴いた時、ついに私の求めていたものが!と実感したのを覚えている。カリブ海沿岸地域~南米、アフリカで生まれた音楽たちを吸収したその名の通り〈雑食〉なサウンド、アコースティックな手触り、そして高音の柔らかい歌声――そのすべてが、本場の音よりも私の身体にしっくりと馴染む心地良さがあった。ほぼ日本語詞であることもその理由のひとつかもしれないけれど、同じ土地の血が流れているからこそ響いてくるものがあるのだろうか。

そして今回リリースされた2作目『379 DAYS』。379日の間に出来上がった楽曲が収められているというこの作品は、前作と同様に先の国々のバーやクラブ、ストリートに根付いているかの地の日常の音楽を、NAOITOのフィルターを通すことで生み出された新しい大衆歌集と言えるだろう。単に異国の民族音楽を採り入れてみたという借り物感覚ではなく、実際に現地を旅して回っている彼自身はもちろん、KINGDOM☆AFROCKSで活動を共にする盟友のIZPONなどプレイヤー陣の身体に血肉化されたものとして鳴らされているが故の説得力が素晴らしい。

賑やかなパーカッション部隊を引き連れて、拡声器をマイク替わりに歌っているかのようなジャンクな聴き心地がカッコイイ、聴いて字の如くな“ちょっと大人なSAMBA”、既聴感バリバリなかけ声を掲げた表題も可愛らしい、クンビアをベースにした楽曲だけどどこか日本的な匂いも感じられる“くぅんびあ”あたりの騒ぎたくなる楽曲はやはり最高だし、NAOITO流のブルースとでも呼びたい“演歌艶歌”の渋さも彼らしい味がある。また、冒頭とラストで爪弾かれるギターの音色がスピリチュアルな空気を生んだ“FLOWERS”(かねてより演奏されていた楽曲のバンド・アレンジ版)の開放的な軽やかさも新鮮だ。

今回も彼を語るうえでキーワードとなる〈雑食性〉は確かに色濃い。ただそういった表面的な部分とは別で、歌詞やサウンドから滲み出ているものは一貫してNAOITOという人間ではないか。彼と直接話したことがあるわけではないから憶測でしかないうえ、そう感じる理由を上手く言葉にできないのだが、聴けば聴くほど物凄く彼自身を感じさせるところが無性に私を惹きつけるのかもしれない。そして、目の前の現実はそんなに明るくないかもしれないけれど、一瞬でもそれを楽しさや喜びに変えて明日への原動力にすることができる――そんな大衆音楽の根源的な在り方がこのアルバムからは感じられる気がした。

 

カテゴリ : ニューフェイズ

掲載: 2011年03月16日 18:00

更新: 2011年03月16日 18:09

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