インタビュー

THE PAINS OF BEING PURE AT HEART 『Belong』

 


写真/パヴラ・コペクナ

 

次々と強烈な個性が登場するブルックリン・シーンのなかで、ハイプから遠く離れて自分たちの愛するロックンロールを鳴らしてきた4人組、ペインズ・オブ・ビーイング・ピュア・アット・ハート。2009年にアルバム・デビューして以来、シューゲイザーやアノラック、オルタナなど、ギター・ロックの美味しいところを凝縮したサウンドで注目を集めた彼らが、待望のニュー・アルバム『Belong』を完成させた。今回まず注目したいのが、メンバーが敬愛するマイ・ブラディ・ヴァレンタインやスマッシング・パンプキンズなどの作品に関わってきたエンジニア、アラン・モルダーとフラッドの参加だ。ヴェテランとのコラボレートで、サウンドはダイナミックに変化した。

「彼らといっしょに仕事ができて光栄だったよ。僕たちが作りたかった、必要不可欠な曲の重みと力強さを出すことができたのは、彼らのおかげだと思う。今回はジェイムズ・イハのスタジオでレコーディングしたんだけど、1か月間、とにかく集中して作業したんだ。他のことを考えるヒマなんてなかったね」(キップ・バーマン:以下同)。

キップの語る「曲の重みと力強さ」は、新作の大きな特徴と言えるだろう。日本ではシューゲイザー新世代として紹介されることも多い彼ら。これまでは、どこかナイーヴな雰囲気も漂わせていたけれど、今回はオープニング曲“Belong”からドラムが力強くビートを刻み、ヘヴィーなギターが掻き鳴らされる。

「今回のアルバムでは、ギターからリヴァーブとディレイを剥ぎ取りたかった。そうすることでサウンドをドライにして緊迫感を与えたかったんだ。僕たちが10代の頃に聴いていたスマッシング・パンプキンズやニルヴァーナみたいにね。この曲ではジェイムズ・イハにギブソンのレスポールを借りて、マーシャルのアンプを通してプレイしている。それはすごくお決まりのロックンロール・サウンドなんだけど、僕らがやれば違いを出せるという自信があったんだ。まあ、パーティーのために普段は着ない衣装を借りるみたいな感じかな(笑)。ドラムもこれまでとは違ったスタイルでプレイしているし、この曲では特別な方法でパワーと美しさが表現されているんだ」。

その“Belong”が象徴する新しい方向性を、キップは「ポジティヴな変化」と説明する。そして、「新作には以前の作品と違っていろんな面がある」なかで、変わらないのがソングライティングへのこだわりだ。エモーショナルで胸が躍るようなメロディーやフックには、本作でますます磨きがかかっている。

「僕たちは常にソングライティングに重点を置いている。音の細かな作り込みじゃなくてね。僕たちのサウンドは〈シューゲイザー〉とか〈ノイズ・ポップ〉とかいろんなふうに呼ばれているけど、僕たち自身は〈ポップ〉であることがいちばん重要だと思ってるんだ。そして、最高のポップ・ミュージックというのはシンプルでダイレクトなもの。僕らが好きな音楽っていうのは、15秒くらい聴いて〈イエス!〉って言えるような音楽なんだ」。

自分たちが聴いてきた音楽への愛情や「その時、感じた感情をそのまま」音に込めて作り上げた楽曲の数々。キップが胸を張って「僕たちにしては珍しく自信に満ちていると思う」と語る本作は、いまのペインズ・オブ・ビーイング・ピュア・アット・ハートを真空パックした最高のドキュメントと言えるかもしれない。

「音楽を通じて自分を美化したくないし、芸術家気取りもしたくない。自分がいまどう感じているかがすべてなんだ。僕らが最終的にどんなものをめざしているのかはまだわからないけど、このアルバムを聴いてくれた君ならわかるかもね!」。

 

PROFILE/ペインズ・オブ・ビーイング・ピュア・アット・ハート

キップ・バーマン(ヴォーカル/ギター)、ペギー・ワン(ヴォーカル/キーボード)、アレックス・ナーイドゥス(ベース)、カート・フェルドマン(ドラムス)から成るNYの4人組。2007年3月にペギーの誕生日会で演奏したことをきっかけに、バンドを結成。2008年にデビュー・シングル“Everything With You”をリリース。2009年2月にファースト・アルバム『The Pains Of Being Pure At Heart』を、9月にミニ・アルバム『Higher Than The Stars』を発表。特に前者はNMEやPitchforkの年間ベスト・アルバムに選ばれるなど、大きな話題を集める。2010年には初のジャパン・ツアーを敢行。このたびセカンド・アルバム『Belong』(Slumberland/YOSHIMOTO R and C)をリリースしたばかり。

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掲載: 2011年04月19日 16:50

更新: 2011年04月19日 16:50

ソース: bounce 330号 (2011年3月25日発行)

インタヴュー・文/村尾泰郎