YELLOWCARD 『When You're Through Thinking, Say Yes』
成功の最中で選んだ活動休止から2年——新たな切り札を手にしたイエローカードが、よりいっそう逞しさを増して帰ってきたぜ!
ファンを悲しませた2008年の活動休止から2年を経て、昨年の夏に彼らが活動を再開した理由は、ヴァイオリン奏者のショーン・マッキンによると、ごくごく単純だった。
「イエローカードが恋しくなっちゃったんだ(笑)!」。
それを聞き、拍子抜けした人もいるかもしれない。しかし、活動休止を決めたとき、彼らはケンカ別れしたわけでも、バンドとして行き詰まっていたわけでもないのだから、ただその思いさえあれば、それで十分だったに違いない。
「あの時は音楽シーンの状況が変わってきて、楽しんでバンドを続けるにはビジネスの問題やら何やら片付けなきゃいけない障害がいろいろあってね」とショーンが振り返る。「それならここらで、いわゆる普通の生活を経験してみてもいいんじゃないかってことになったんだ」。
イエローカード——ヴァイオリンをフィーチャーしたカリフォルニアのポップ・パンク・バンドだ。メジャー・デビューを飾った4作目『Ocean Avenue』のスマッシュ・ヒットによってその人気を確かなものにした。
そんなバンドの再始動のきっかけを作ったのは、LPことロンギニュー・パーソンズIII(ドラムス)だったという。
「彼はアダム・ランバートとツアーしていたんだけど、アルバムを作らないか?っていろいろなアイデアを出してきたんだ。それにみんなが乗ったんだよ。去年の6月ぐらいだったかな。それから、僕らはものすごい勢いでアルバムを作ってしまった。6月に制作を始めて、翌年の春にはリリースしてしまうんだから、いかに早かったがわかるだろ?」。
そのような経緯で完成されたニュー・アルバム『When You're Through Thinking, Say Yes』は、USでは彼らが新たに契約したホープレスからのリリースとなる。プロデュースを担当したのは、『Ocean Avenue』ほか前3作のアルバムも手掛けてきたバンドの良き理解者、ニール・アヴァロン。ちなみに新ベーシストのショーン・オドネルは〈ウィーザーmeetsジミー・イート・ワールド〉と謳われたリーヴ・オリヴァーというサンディエゴのバンドの元メンバーで、ライアン・キー(ヴォーカル/ギター)が活動休止中にやっていたビッグ・イフというプロジェクトのパートナーでもあった。
ショーンのヴァイオリンが軽快に鳴るオープニングの“The Sound Of You And Me”を筆頭に、切ないメロディーとスピーディーな演奏がひとつに溶け合い、胸に迫る青春度満点のポップ・パンク・ナンバーの数々を聴き、誰もが確信するはずだ。あの頃のイエローカードが帰ってきた、と。あるいは2月の来日公演を観たファンならば、そこで披露された新曲“For You, And Your Denial”を聴いたとき、頭のなかに閃いた予感が決して間違っていなかったことを知るはずだ。
「『Ocean Avenue』が持っていたエネルギーや、『Paper Walls』にあった生々しさや力強さをもう一度取り戻したうえで、イエローカードらしさを追求していこうと考えたんだ」。
もっとも、だからと言って、彼らがノスタルジーであの頃に戻ろうとか、ファンにおもねっているとは思わない。音楽ビジネスが孕むさまざまな矛盾から解放され、信頼できる仲間たちとまた、自分たちが心から作りたいと思っている音楽を作った結果、たまたまファンが求めるイエローカード像と一致したということだろう。
「ソングライティングの成長とか、以前よりもヘヴィーなサウンドとか、自分たちにそういう引き出しがあったことは新しい発見だった。たぶん、そういうところはファンのみんなにも新しいと思ってもらえると思う。とにかく音楽ビジネスの世界から一歩下がったところで音楽を作るって何て楽しいことなんだろう、って感じられたのが最大の発見だね」。
バンドの新しいチャプターの始まりを印象付ける、もうひとつのマスターピースが誕生した。
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★シルヴァースタインのインタヴューはこちらから。
▼イエローカードの近作を紹介。
左から、2003年作『Ocean Avenue』、2006年作『Lights And Sounds』、2007年作『Paper Walls』(すべてCapitol)
▼関連盤を紹介。
リーヴ・オリヴァーの2008年作『Touchtone Inferno』(Summertone)
カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2011年05月26日 14:41
更新: 2011年05月26日 14:42
ソース: bounce 330号 (2011年3月25日発行)
インタヴュー・文/山口智男