東京事変 『大発見』
東京事変、5枚目となる待望のニュー・アルバムはその名も『大発見』。
椎名林檎を中心とした誰にも似ていない5人の音楽家たちが到達した<大いなる発見>の正体とは、
まさに事変サウンドの総決算にして新境地という、全音楽ファン必聴の記念碑的作品に。
その制作過程充実した心境を、このインタビューから感じてもらいたい。
「まず自分自身がハッとする、つまりは<発見>する曲でなくてはならなかった」(椎名林檎)
そもそも昨年から今日まで、東京事変は止まることなく走り続けてきた。
まずは昨春にマッシヴな魅力に溢れた傑作『スポーツ』をリリースして、
その直後からツアー「ウルトラC」で圧倒的なライヴ・パフォーマンスを
見せつけたかと思えば、初夏にはすぐさまTVドラマ主題歌の“天国へようこそ”と
CMタイアップの“ドーパミント!”を配信限定リリース。
そして今年に入ってからも椎名林檎本人がキャラクターを務める
CMタイアップ“女の子は誰でも”、“空が鳴っている”によって、
お茶の間においてもさらなる認知と支持を獲得して……と、こうしたノンストップな状況は、
現在の彼らが維持している良好なテンションを物語るかのようだった。
椎名林檎(Vo.)「正直『スポーツ』とそのツアー「ウルトラC」で、
私たちはすごく頑張ったと思っていました。ですから次のアルバムは自
分たちへのご褒美として<大>くらい付けてもいいんじゃないかという
気持ちも、どこかであったんでしょうね」
こうして生まれたニュー・アルバムのコンセプトこそが、タイトルにもなっている『大発見』だ。
リスナーとしてはもうこの言葉のインパクトだけでアルバムへの期待度が高まるというものだ。
しかしだからこそ、メンバー全員、楽曲を持ち込み/選曲する際のプレッシャーは相当のものとなったようだ。
椎名「<発見>に<大>まで付けてしまったので、まず選考にかける以前に、
自分自身がハッとする、つまりは<発見>する曲でなくてはならなかった」
刄田綴色(Dr.)「全部で30曲ぐらい出揃ったよね」
伊澤一葉(key.)「僕は今回、鍵盤ではなくほとんどの曲をギターで作りました。
そうすることで<発見>をしたいと思ったので」
亀田誠治(Ba.)「楽曲を提出して2、3日経ってから、「ああ、やっぱり
「大発見」じゃなくて「中発見」だった!」と、悩んでみたり(笑)。
かなりの試行錯誤がありましたね」
こうして収録された楽曲は全13曲(+ボーナストラック1曲)。
まず作曲クレジットのうち、5曲が共作名義であることが興味深い。
亀田「すべての曲を『大発見』にするために、全員の持っている力を総動員した。
で、気がついたら結果として共作が多かったという」
浮雲(Gt.)「だからたとえばクレジット上では椎名さんと誰かという表記になっていても、
すべての曲に事変全員による共作感がある」
椎名「今回はめずらしくストックがいっぱいあるんですけど、惜しくもアルバムには入らなかった曲も、
入った曲をディレクションしてくれた感じが大きかったですね」
まさに事変流のアフロなグラマー(文法)が魅惑的に炸裂する
1曲目“天国へようこそ For The Disc”に始まり、
その全貌は「スタンダード」、「プリミティヴ」、「バック・トゥ・ルーツ」といったキーワードを含みながら、
あらゆるジャンルの「美味しいとこ取り」と言える豊潤さを醸し出した。
そしてそんなサウンドに導かれたかのように、椎名の作詞もまた新たな<発見>へと踏み込んだようだ。
椎名「『スポーツ』の時はみんなが書いてきた曲のなかで、どういう言葉が鳴っているのか、
それを力づくで拾いに行った。だけど今回は、曲が<何処で>鳴るかを
探る作業になったという印象です」
その結果として、先の大震災後に書かれた“電気のない都市”をはじめ、このアルバムはリスナーが過ごす
日常のあらゆる場面において<鳴る>アルバムであってほしいという願いが込められているかのようだ。
その上で『教育』、『大人』、『娯楽』、『スポーツ』という、自分たちがこれまでにリリースしたすべての
アルバムの要素を、さらに新たな形で昇華させているのだから、
つくづく彼らの知性の高さとユーモアには驚いてしまう。
椎名「生きる上で当然の営みとして、事変のこれまでの研究の成果も、
すべて詰め込まれて欲しいと願っていましたから。無論それはこれまでのアルバムもそうだったし、
欲だけが一人歩きしても良くないなっていう戒めを持ちつつではありましたけど」
亀田「このアルバムには僕らが過ごした去年から今年までの、
それこそ震災前後も含めた濃密な時間が詰まっていると思います」
椎名「5人の誰もが自己顕示欲を先に立たせることなく、
ピュアな制作時間を共有することが出来たアルバムでした。
こんな感情をアルバムに抱くのは本当に初めて。いまは満たされ、幸せです」
椎名を中心に補完し合い、高め合うことでバンドとして前進し続け、その音楽を更新し続けてきた東京事変。
この『大発見』はまさに、そんな彼らがたどりついた事変サウンドの集大成にして<大>傑作と呼ぶにふさわしい一枚となった。
間違いなく、多くのリスナーに<大>感動をもたらすサウンドである。
■NEW ALBUM 『大発見』……6/29on sale!
■SONG LIST
01. 天国へようこそ For The Disc
02. 絶対値対相対値
03. 新しい文明開化 ※東京メトロCMソング
04. 電気のない都市
05. 海底に巣くう男
06. 禁じられた遊び
07. ドーパミント! BPM103
08. 恐るべき大人達
09. 21世紀宇宙の子
10. かつては男と女
11. 空が鳴っている ※グリコ「ウォータリングキスミントガム」 CMソング
12. 風に肖って行け
13. 女の子は誰でも ※資生堂「マキアージュ」CMソング
<ボーナストラック>
14. 天国へようこそ For The Tube
■ LIVE…
「東京事変 LIVE TOUR 2011 DISCOVERY」
9/30(金) 府中の森芸術劇場
10/2(日) 静岡市民文化会館
10/7(金) 仙台サンプラザホール
10/8(土) 岩手県民会館
10/10(月・祝) ニトリ文化ホール
10/14(金) 本多の森ホール
10/16(日) 新潟県民会館
10/19(水) 大宮ソニックシティ
10/25(火),26(水) 福岡サンパレスホテル&ホール
10/28(金) 鹿児島市民文化ホール第一
11/3(木・祝) 神戸国際会館
11/4(金) 倉敷市民会館
11/6(日) 広島市文化交流会館
11/12(土),13(日) 名古屋センチュリーホール
11/16(水) 神奈川県民ホール
11/22(火),23(水・祝) グランキューブ大阪
11/25(金) アルファあなぶきホール(香川県県民ホール)
12/1(木),2(金) 東京国際フォーラム A
■PROFILE…東京事変(トウキョウジヘン)
04年のバンドデビュー以来、TVのチャンネルをタイトルに冠した4枚のアルバムを発表。
今年9/30からはニューアルバム『大発見』を携えた全国ツアー「LIVE TOUR 2011 DISCOVERY」を開催。
記事内容:TOWER 2011/6/20号より掲載