インタビュー

SMITH WESTERNS 『Dye It Blonde』

 

SMITH WESTERNS_A

 

90年代にUKを席巻したブリット・ポップ。例えばASIAN KUNG-FU GENERATIONがそうであるように、あのムーヴメントはデカいステージでプレイする夢と共に、多くのキッズにギターを持たせた──。

あの狂騒から10年以上を経た2011年、まさかブリット・ポップに立ち返った作品が届くとは。しかもUSはシカゴから。それが、スミス・ウェスタンズの日本デビュー盤となるセカンド・アルバム『Dye It Blonde』だ。

プレイボタンを押せば、オアシスを思わせる泣きのギターや『13』期のブラー風なコーラスが流れ出し、煌くシンセサイザーがリスナーを夢のなかへと誘導。ブリット・ポップからの影響を隠さずに表現したアンセミックな本作は、小さくまとまりがちなUSインディー・シーンに新鮮なインパクトを与えている。

だが、スミス・ウェスタンズは最初から現在の音楽性だったわけではない。メンバーはカレン&キャメロンのオオモリ兄弟(日本人とのハーフだそう)とマックス・カカセックの3人。彼らはハイスクールでバンドを結成し、卒業後にファースト・アルバム『Smith Westerns』(2009年)をリリースしている。当時、地下室でレコーディングする際に念頭にあったのは、ロマンティックかつクラシックなアルバムを作ることだそう。ここではディストーションまみれのギターでビートルズ風の懐かしいメロディーを掻き鳴らし、女の子について歌っていた。粗いプロダクションながら同作で充実したソングライティング能力を発揮し、ニルヴァーナ『Nevermind』をコラージュしたジャケット(!)の話題性も手伝って、彼らは早耳リスナーの心をガッチリと掴むこととなる。

それから2年、『Dye It Blonde』では驚くほどのシフトチェンジを遂げたわけだ。ちなみに、シンセサイザーの導入もこのアルバムから。

「『Smith Westerns』はノイズとディストーションがすべてだったからね。生々しくてクールだったけど、それをクリーンにしたらもっと音を入れるスペースができたから、何かおもしろいもので埋めたかったんだ。そこでシンセサイザーを入れたんだよ。音楽的におもしろいテイストやクールなテクスチャーを加えてくれるのが大きな要因だね」(カレン・オオモリ:以下同)。

プロデュースを担当したのはヤー・ヤー・ヤーズやグリズリー・ベアを手掛けたクリス・コーディ。音が整理され、リヴァーブの掛かったノスタルジックなプロダクションは彼の手腕によるところが大きい。

「新作は何層にも渡って厚みのある感じにしたかった。すべてがフルで鳴っているようにね。でも、ゴミゴミした感じは嫌だったんだ。クリスはそこを上手くミックスしてくれたよ。それぞれの音があるべき場所でフィットしてる。ドリーミーなんだけど、すべての音がリスナーに聴いてもらえるように競い合っている……って雰囲気が出せたよ」。

また、T・レックスばりの変化に富んだグラマラスなメロディーも秀逸。すべてカレンとクリスがユニークな方法で書き上げたものだという。

「僕らは曲のパーツを録って、少し置いてから混ぜて、またコンピューターで繋ぎ合わせるんだ。ヴァースとかコーラスとか全部のパーツをね。だからパーツごとに違って聴こえるんだ。それぞれが自分のオリジナルに聴こえるようにしているからさ」。

表面的な音楽性こそ変わったが、エヴァーグリーンな魅力のある楽曲を作ろうとする3人のヴェクトルに変化はない。『Dye It Blonde』は、20歳そこそこの彼らのピュアネスが結晶化した作品だ。何より、聴いたらギターを持ちたくなることだろう。

そして、絶好のタイミングで〈サマソニ〉での初来日も決定した。早い時間帯だが、本作を聴き込んで駆けつけるべきだ。

 

PROFILE/スミス・ウェスタンズ

カレン・オオモリ(ヴォーカル)、キャメロン・オオモリ(ベース)、マックス・カカセック(ドラムス)から成る3人組。2007年、高校在学中にシカゴで結成。卒業後の2009年6月にホー・ザックよりファースト・アルバム『Smith Westerns』をリリースし、それを皮切りに精力的なライヴ活動を展開する。2010年には写真家のライアン・ マッギンリーが監督を務めたショート・フィルム「Friends Forever」に出演。直後に、ドミノが新設したウィアード・ワールドの第1弾アーティストとしてUKでのレーベル契約を結び、話題を集める。今年1月にセカンド・アルバム『Dye It Blonde』(Fat Possum/Weird World/HOSTESS)を発表。このたびその日本盤がリリースされたばかり。

 

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掲載: 2011年06月29日 15:54

更新: 2011年07月13日 20:01

ソース: bounce 333号 (2011年6月25日発行)

インタヴュー・文/角田仁志