インタビュー

坂東慧

フュージョン界に吹く、爽やかさ溢れる風

かつて〈フュージョン〉というジャンルが生まれ、ぐいぐい人気を上げていった頃。泥臭さを感じさせるジャズとは一線を画した、スタイリッシュでオシャレなサウンドに、僕たちは夢中になっていたはずだ。あれからずいぶん年月を経て、フュージョン世代もすっかりオジサンになったが、名曲の数々は僕たちの心のメロディとして息づいている。ただ、あの頃のサウンドに感じた爽やかさは、といえば、ちょっと肯定しにくいところがあるのも事実だ。

そんな所に飛び出してきた坂東慧は、まさにシーンを揺るがす一陣の風のような才能だろう。まだ27歳という彼のドラミングを耳にすると、あの時感じた爽やかさが蘇ってくるようだ。それでいながら、T-SQUAREのDNAをしっかり受け継いだサウンドには、フュージョンを聴き続けてきたファンも惹きつける魅力が詰まっている。

初めてのソロアルバムとなる本作では、ドラミングはもちろん、ピアノやキーボード、そして作曲とアレンジも自分で手がけるという多彩さをも見せつける。

「子供の頃にグループでエレクトーンを習っていたのですが、そこは生のドラムと合奏する所でした。それでスタジオのドラムをいじっているうちに、こっちのほうがもっと大きく表現できると思って…スクエアの曲に出合ったのもエレクトーンを通してで、《OMENS OF LOVE》を弾いてからスクエアを研究するようになったんです。パット・メセニー・グループも好きでしたね。ドラムがポール・ワティコで一番ポップだった時代です」

アルバムに納められているのはどれも思わず口ずさみたくなるような魅力的なメロディばかり。なかには歌詞が勝手に頭の中に浮かんでくるような、歌心いっぱいの曲もある。

「ポップなメロディが好きなんです。それに曲を作る時はピアノに向かって鼻歌でメロディを作るんです。そのせいでしょうか」

そんなメロディを支える坂東のドラミングは、といえば、随所にソロパートが織り込まれてはいるものの、バランスをしっかり保った理性的なドラミングに徹している。アルバムでの坂東の位置はどの辺にあるのだろう。

「まず作曲家としての自分です。次にアレンジャー、そしてドラマーですね。アレンジはT-SQUAREの活動を通して学びました。年に一枚レコーディングが出来るという恵まれた環境にいるのはありがたいですね」

その成果はここに収められた10曲を聴けば明らかだ。そしてサウンドを作り上げるためにベテランから若手まで多才なプレイヤーを配しているのも坂東ならではといえるだろう。まさにこれからを切り開く才能が、フュージョンシーンに現れたことに、オジさんファンは大きな歓声を上げるのだった。

『坂東慧 「Happy Life !」発売記念LIVE ツアー 』

8/22(月)鶴ヶ島HALLE   
8/23(火)高崎club FLEEZ
8/24(水)BackDrop   
8/31(水)名古屋TOKUZO
9/1(木)松阪M'AXA   
9/2(金)ライブスポットラグ
9/3(土)三国ヶ丘FUZZ  
9/4(日)KOBE Wynterland
9/5(月)LIVE PLACE JIVE  
9/6(火)Gate's 7
9/17(土)STB 139

『T-SQUARE Concert Tour 2011 “Nine Stories”  』

7/16 (土) なんばHatch   
7/17(日)Zepp Nagoya
7/24 (日)渋谷 C.C.Lemonホール

http://www.tsquare.jp/

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2011年07月05日 16:18

更新: 2011年07月05日 18:57

ソース: intoxicate vol.92 (2011年6月20日発行)

interview & text : 渡部晋也