B'z 『C'mon』
アコースティック・ギターの音色で幕を開けた瞬間から、思わずハッとさせられる。
そしてそこからずっと抱擁され続けているような感覚へと導かれる、大きな包容力と強い生命力に満ち溢れた、アルバム。
B'z、通算18枚目となるオリジナル・アルバム『C'mon』は、今、歌い奏でられる運命を内包した
全13曲が光を放っている。
B'zとしてサウンドに乗せて発するに相応しい言葉。それが『C'mon』。
使命という与えられたものではなく、自発的に機動する、音楽のチカラ。
非常にシンボリックなタイトルを掲げたB'zのニューアルバム『C'mon』には、
そのチカラがうねるように躍動している。
ブルーズの香りが醸し出され、かつ強靭さが更に研磨されたサウンド・スケープ。
ときに憂える心に優しく寄り添い、ときに燃え尽きそうな魂を喚起させてくれる、
誠実で真摯なメッセージ。<B'zとしての今現在の大命題>をも刻み込んだ、
深い意義と豊かな滋味を湛えた作品集だ。
松本孝弘(Gt.)「アルバムの制作は昨年の5月からスタートして、
途中それぞれのソロワークのために中断を挟みながら、
実質1年をかけてやりました。
かなりの数の楽曲が生まれて、レコーディングも
とても順調に進んでいたんですけれど、最後の最後に更に“C'mon”と“ボス”ができたんです。
この2曲は他の楽曲とはちょっと違う位置にあるんですけれど、
すごく大きな意味のあるものですし、このアルバムにとってはとても大事な楽曲になりました」
稲葉浩志(Vo.)「“C'mon”と“ボス”は、実は東日本大震災のあとに新たに作った楽曲なんです。
“ボス”の歌詞のアイデアは以前からありましたが、“C'mon”は完全に震災の影響を受けて書いた作品です。
アルバムの制作を進めている最中に震災が起きて……それで気持ち的に一度ゼロになってしまって、制作を
しばらくストップさせたんですけれど。その中で、「こういう状況において、B'zとしてサウンドに乗せて発するに
相応しい言葉」を模索して出てきたのが、<C'mon>という言葉でした。勢いがやっぱりすごいんですよね、
そういう状態で出てきた言葉というのは。ですから、この楽曲を作っている時点で、
「全ての楽曲を一気に束ねたアルバム・タイトルにできるのではないか」ということも考えて、
アルバム・タイトルも『C'mon』に決めました」
松本「“ボス”もメロディと歌詞とアレンジがすごくうまくハマって、バランスのいい楽曲にできたと思います。
最初、稲葉君はこの(アイロニカルな)歌詞について少し気にしていたみたいなんですけれど、
「いや。いいんじゃない!」って声をかけて。それで、この形になりました」
最終的にアルバムを象徴する楽曲となったこの2曲と共に、もう1曲<今、鳴り響く必然性>を
深く感じられてやまないのが、“命名”という作品だ。ラストに収録された“ultra soul 2011”と
スペシャル・トラック的な意味合い(ライヴで例えれば、最強のアンコール・ナンバー)と据えるなら、
独創的なギターのフレーズに導かれて生命の尊厳を謳うこの美しい作品は、
『C'mon』という作品集の本編の終幕を飾る存在にも思える。
稲葉「この歌詞の内容とタイトルは、今回の制作が始まる以前から既にあったんです。
で、ずっとあたためていたんですけれど、今回のレコーディングに向けて出てきた楽曲の中で
とてもマッチしそうなメロディがあったので、形にすることができました」
松本「制作自体も、昨年の5月の段階で行っていました。
このイントロやアウトロのフレーズは、デモを創っているときにスッとできたものなんです。
コード進行はすごく変わっていますけれど、自分自身でも<いいな>と思えるし、とても好きなプレイですね。
そして、この楽曲で一度アルバムが締め括られている、というイメージは確かにあると思います」
長い期間かけた(ある意味、かかった)作品創り。
全体的なサウンド・プロダクションに関しては、バリー・スパークス(Ba.)、シェーン・ガラス(Dr.)、小野塚晃(Key.)といったメンバーを迎え――松本の表現を借りれば、<とてもいいバンド>――自由ながらも絶妙なセッションで結実。
対して稲葉は、鋭敏さをもって歌唱に臨み続けていたようだ。
稲葉「かなりしつこく歌い直していましたね、どの楽曲に対しても。
一度自分の中でOKを出しているんですけれど、他の楽曲の歌入れを重ねていってフッと振り返ると、
やり残したことが見つかってくるんです。それでまた戻って歌い直して……
という作業を、納得いくまで徹底的に繰り返しました」
いわゆる<大人の粋なアソビ心>を活かしたナンバーが本作品集では見られないことも鑑みれば、
先の<B'zとしてのサウンドに乗せて発するに相応しい言葉>への思いが、
結果としてアルバムを構築する全てに対して反映されているのは確かだろう。
また、“さよなら傷だらけの日々よ”、“Don't Wanna Lie”という既発のシングル・チューンも、
<本アルバムの中の1曲>として更に新たな表情が発揮できるような位置に収められている。
そう……2011年にB'zが『C'mon』というタイトルを掲げた作品集を発表する、
その意味と大義――その深奥さは、1曲1曲を聴き込めば聴き込むほどに心に響き渡ってくるはずだ。
■NEW ALBUM 『C'mon』……7/27 on sale!
■SONG LIST…
1.C'mon (ペプシネックス TVCMタイアップソング)
02.さよなら傷だらけの日々よ (ペプシネックス TVCMタイアップソング)
03.ひとしずくのアナタ
06.DAREKA
07.ボス
08.Too Young
09.ピルグリム (読売テレビ・日本テレビ系「名探偵コナン」テーマソング)
10.ザ・マイスター11.デッドエンド
12.命名
13.ultra soul 2011 (テレビ朝日「世界水泳上海」テーマソング)
■LIVE… 「B'z LIVE-GYM 2011 -C'mon-」
「B'z LIVE-GYM 2011 -C'mon-」
9/23 (祝・金)、24(土)サンドーム福井
10/01 (土)、02(日)マリンメッセ福岡
10/09 (日)、10(祝・月)神戸ワールド記念ホール
10/16 (日)朱鷺メッセ・新潟コンベンションセンター
10/22 (土)、23(日) 広島グリーンアリーナ
10/27 (木)、29(土)、30(日)北海道立総合体育センター 北海きたえーる
11/03 (祝・木)、05(土)、06(日)さいたまスーパーアリーナ
12/04 (日)福岡 Yahoo! JAPANドーム
12/10 (土)、11(日)ナゴヤドーム
12/15 (木)、17(土)、18(日)京セラドーム大阪
12/22 (木)、24(土)、25(日)東京ドーム
■PROFILE… B’z
'88年9月にシングル「だからその手を離して」でデビュー。
松本孝弘の卓越したギタースキルと、ヴォーカル稲葉浩志の絶妙なロックセンスによるロックサウンドが
長年に渡り圧倒的な支持を獲得し続けている。新作をリリース後は年末まで続く全国ツアーを控えている。
記事内容:TOWER 2011/7/20号より掲載