toddle 『the shimmer』
リーダー・田渕ひさ子の人柄そのもののように(!?)、ゆるりとマイペースに活動を続ける彼ら。メンバー・チェンジを経た久々の新作は、さて、どうなった?
toddleのニュー・アルバム『the shimmer』は、実に4年ぶりの作品となる。とはいえ、bloodthirsty butchersとしての活動はもちろん磯部正文のバンドなどサポート仕事もこなす田渕ひさ子(ヴォーカル/ギター)をはじめ、メンバーそれぞれが個々でも活躍しているバンドだけに、「自分ではずっと3年ぶりだと思ってた(笑)」(田渕:以下同)と言うぐらい、あっという間の4年間だったようだ。
前作『Dawn Praise the World』の発表後、オリジナル・メンバーの安岡秀樹が脱退したため、今回はドラムスにmooolsの内野正登を迎えて初のアルバムとなる。USのインディー・ロックを愛する者としては、かのシーンのアーティストを日本に紹介する窓口になってきたbloodthirsty butchersとmooolsという先輩・後輩とも言えるバンドのメンバーがひとつのバンドに所属しているということに感慨を覚える。
「toddleのセカンドが出たときのツアーをswarm's arm(内野とギター/ヴォーカルの小林愛が所属)とやっていたからライヴを何度も観てくれてたんで、最初にスタジオに入ったときから〈前に叩いてもらったことあったっけ?〉みたいな、それぐらいに違和感がなくて(笑)。でも前のドラマーとは全然タイプが違って、ウッチー(内野)はすごく歌を聴いて叩いてくれてますね」。
攻撃的な安岡のドラミングに対し、スペースを残して歌を引き立てる内野のそれによって、ポップかつメランコリックなメロディーの良さがより鮮明に伝わってくるのは間違いない。もちろんパートによっては激しいフレーズもこなし、シャープなギターとの絡みも見せる。これはやはりUSインディー好きにはたまらない音だと思うが、特にバンドとして明確な方向性があるわけではないという。
「バンドの佇まいとして、あんまりカチッとしてないっていうか(笑)、リズムがぶれない、音がずれない、間違えないとかっていうのは全然求めてないんです。大きく揺れてても、どこかでピタッと合えばそれでいいみたいな、そういうふくよかさがあったらいいなとはいつも思ってますね」。
メランコリックな曲調と合わせるように、歌詞もやや内省的なものが多いものの、そこから一歩踏み出そうという前向きな気持ちも同時に感じられる。そして「作文っぽい歌詞は大嫌いなんです」と語るように、その心情が直接的にではなく、情景の描写として書かれているのが特徴だ。
「前作の曲を作ってた頃は、わりと精神的に辛い時期だったんですね。今回はそれをもうちょっと過ぎたところの、〈まあ、やってくしかないな〉みたいな部分が出たんじゃないかと。格好つけて言いますと、自分が書いてる状態はまだ未完成で、誰かに届いたときにその人が自分の気持ちをそこに乗せて完成、みたいになればいいと思ってます。ブッチャーズのライヴをしてて、曲が始まるとお客さんが〈俺のテーマ曲が始まった!〉みたいな嬉しそうな顔をするんですよね。それってすごくいいなと思って」。
田渕は先日、中村弘二率いる新バンド・LAMAへの参加も発表しており、多忙ぶりにますます拍車がかかりそう。そんな彼女は今後のキャリアについてどんな展望を持っているのか? またそのなかでtoddleというバンドはどのような位置付けにあるのだろうか?
「〈バンドやりすぎ〉ってよく言われるんですけど(笑)。でも、バンドってメンバーが変わると出てくる音って全然違うし、特有のものがそれぞれにあるんで、自分はいつでもやれることを精一杯やってる感じです。そのなかでtoddleは自分で曲を作って歌を歌ってるバンドだから、やっぱり別格ですね。誰かからの何かを受けるんじゃなくて、まず自分から出すっていう。あと他のバンドはギターに100%集中してるんですけど、toddleは歌とギターで100%なので、そこは全然違います。toddleでギター・ソロをバリバリ弾くっていうのは、思いつかないですね。そうじゃなくて、バンド全体を見てるんだと思います」。
▼toddleの作品を紹介。
左から、toddleの作品を紹介。上から、2005年作『I dedicate D chord』、2007年作『Dawn Praise the World』(共にworld wide waddle)、toddleが参加した2008年のコンピ『一緒にうたおう! NHKみんなのうた~大人Ver.~』(バッドニュース)
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カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2011年07月28日 14:26
更新: 2011年07月28日 14:26
ソース: bounce 331号 (2011年4月25日発行)
インタヴュー・文/金子厚武