インタビュー

VIVA BROTHER 『Famous First Words』

 

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ああ、この高鳴る気持ちをどうしてくれようか。口を開けばビッグ・マウス。音を鳴らせば英国伝統のギター・ポップの真髄が響き、声を放てばデーモン・アルバーンとイアン・ブラウンとミック・ジャガーが一体化してどこまでも挑発的。彼らの名はビバ・ブラザー、彼らがロンドン近郊のスラウという街から「逃げ出すためにはロックしかなかった」のだそう。それはまさしく、60年代からのかの地のロッカーたちが辿ってきた、しかし90年代後半から目にしなくなった、正統的な〈目覚め方〉ではないか。面映ゆいほどに眩しく正しくたまらなく英国ならではのポップが響くのは、もはや必然としか思えない。

「俺たちは自信を持っているし、それがムカつくって連中もいるかもしれない。でも俺たちはこういう曲を作ることができてハッピーだし、これをやるために生まれてきた。アルバム・タイトルの『Famous First Words』っていうのは、少なくともUKでは俺たちが音楽を発表する前から発言がメディアに取り上げられて有名になっていたことから来てるんだ。で、いまは音楽も気に入ってもらってる。そういう、いまの俺たちにぴったりのタイトルだと思ったんだ」。

取材に応えてくれたフロントマンのリー・ニューウェルはそう言いつつ、世界一のバンドになるという野望を隠さない。とはいえメンバー全員がまだ20代前半。これほど、〈ウーウウー〉なコーラスや気の利いたタメ(そう、当時のブラーが上手かったようなアレ!)を含め、ブリット・ポップを聴いて育った当時の少年少女でさえをも感服させる完璧なギター・ポップをどこで身につけたのか。

「俺たち、ダンス・ミュージックに魅力を感じたことはそんなにないんだ。プロディジーやケミカル・ブラザーズとかは好きだけどね。でも、いまの主流のものは好きになれなかったから、結局90年代に遡るしかなかったんだ。ギター・ミュージックがもっとも輝いていた最後の時代にね。で、いろんなブリット・ポップのバンドを聴いて音楽にのめり込んでいった。メンバー全員がそうさ。そうやってこのバンドを結成したんだ。かつてのようなギター・バンドの時代が到来するように、俺たちでムーヴメントを起こしてやるんだっていう気持ちでね」。

今年1月にシングル“Darling Buds Of May”を発表後、ノリのいいポップな曲調でこの4人はすでに熱狂的なファンを多く抱える一方、現地では〈正統的〉なインディー好きからはダメ出しされてもいる。そういうエピソードも最高だ。ちなみにブラザーという名でデビューしたが、USに同名バンドがいたためビバ・ブラザーへ7月5日に改名したばかり。そのベタベタさも最高だし、〈ブラザーは死んだ〉という大袈裟なプレス・リリースを出すなど、好きな人にはたまらない、嫌いな人には間違いなくそのヒネクレ方が疎まれるタイプ。でも、そういうやり方というと……長年の英国ロック・リスナーなら、かのモリッシーのスミス時代をも思い出しませんか? ゆえに、ニヤニヤしたくなる。

「俺がいちばん好きなアルバムは、『The Queen Is Dead』なんだ。あと、ストーン・ローゼズの『The Stone Roses』も非の打ちどころがないよね。俺にはこの2枚が完璧なデビュー作かな」。

スミスとストーン・ローゼズに心酔するとは、またしても正しい。そして正しいインディー・キッズのトップ集団が築いてきた闘い方を音楽の歴史を通して心得ているからこそ、創造ではなく批判が先に立つタイプの新型インディー頭からの批判も、屁のかっぱだ。行け行けビバ・ブラザー、新しいムーヴメントを巻き起こせ!

 

PROFILE/ビバ・ブラザー

リー・ニューウェル(ヴォーカル/ギター)、サム・ジャクソン(ギター)、ジョシュ・ウォード(ベース)、フランク・コルッチ(ドラムス)から成るロック・バンド。イングランドはスラウで2010年に〈ブラザー〉として結成され、4回のギグを経てゲフィンUKと契約を果たす。今年に入って1月にデビュー・シングル“Darling Buds Of May”をラフ・トレードからリリースし、ストリーツとの全英ツアーも経験。スティーヴン・ストリートのプロデュースでセカンド・シングル“Still Here”を発表した後に、同名バンドの訴えでビバ・ブラザーに改名する。〈サマソニ〉出演発表も話題を集めるなか、ファースト・アルバム『Famous First Words』(Geffen UK/ユニバーサル)を8月3日にリリースする予定。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2011年08月01日 22:21

更新: 2011年08月01日 22:23

ソース: bounce 334号 (2011年7月25日発行)

インタヴュー・文/妹沢奈美