もしもし中田ヤスタカさん
――出会いはどんな感じだったんですか?
「最初は〈ハラコレ〉に出た時に、〈capsuleが好きな、おもしろい読モの子がいる〉って紹介されて、挨拶したぐらいですね。それで、10代でも入れるクラブ・イヴェント〈TAKENOKO!!!〉をやろうってなった時に、そういえばきゃりーって子がいたな、と思い出して」
――何かが印象に残ってたということですかね。
「何だろう、青文字系のモデルの子って、ある意味やる気がないっていうか(笑)、街で好きな遊び方をしてたらスナップされて……って、仕事意識からのスタートじゃないところでやってるのが魅力的な界隈じゃないですか。〈わからない人にはわかってもらわなくていいです〉みたいな感じで。きゃりーはそのなかにいて、わからない人にも何かを伝えたり発信できるパワーがあると思ったんですね。で、10代の子のクラブ・イヴェントって、夜中のイヴェントを知らないからお手本もなくて、よくわからないままやってるパワーがおもしろいんです。そこから新しい遊び方が生まれると楽しいし、きゃりーにはそういうことを期待してます。〈夜中のDJはこうやってるから、自分もこうやろう〉みたいに思う必要もないし、思わなそうなキャラだから(笑)」
――それでプロデュースに至って。
「歌いたい意志があるっていうのは、わりと早い段階で聞いてはいたんですけど。音楽だけじゃなく、原宿っていう街全体の動きとか、いろんなことが凄くきゃりーの周りに集まりはじめて、タイミングも含めて、たまたま結果としてそうなった感じです」
――そうやって完成した『もしもし原宿』ですが、ミニ・アルバムになったのは?
「閃いてるうちに形にしたいし、ズルズル作ってリリースは来年、とかだとテンションも落ちそうだし(笑)。今回は挨拶替わりなので、次をまた期待してもらえれば」
――自身の他の仕事と比べてどうですか?
「意識というよりは感覚的ですけど、音色の選び方とか音のバランス、配置とかは違いますよね。歌もデカいし(笑)。音数もそんなに多くないけど、ゴチャゴチャした派手さってのは音が鳴ってなくても聴こえるんですよね、きゃりーがやってると」
――本人が〈そこにいる〉って感じがしますよね。
「そうそう、目から入ってくるイメージも含めて、それぐらいでバランスが取れてる」
――歌詞もすべて中田さんで。
「誰の曲を作る時でも、その人がやるから意味のあるものにしたいんです。歌詞のフレーズもサウンドも、きゃりーが歌うから大丈夫というか、きゃりーには他の人ならナシなことをアリにする才能があると思うので、そういうところを出せたらいいなと思ってますね。自分もそこが楽しみだし、これからどうしよっかな、っていうワクワク感があります」
――作り手として、表現のための良い触媒ができた、みたいな?
「そうですね。〈これまでできなかったことができる〉っていうことじゃなく、やろうとすら思っていなかったことをやってみようと思ってるかもしれない」
――『WORLD OF FANTASY』の音がいままで以上に楽しそうに振り切れている印象だったので、『もしもし原宿』が全然違うチャンネルで出来てるのも納得でした。
「いいタイミングだったかもしれないですね。どっちも自分にとっては遊びなんだけど、遊びの種類が違うんです。capsuleは〈修行〉というか、山にこもって空手をやってるみたいな遊びで、きゃりーの場合は完全にリゾートっすね(笑)。職人肌の人とかが好きで、capsuleも刀を鍛えてるみたいにしたいんですよ。物を作りながら自分も鍛錬してるみたいな。修行で得たスキルや精神的な余裕があるからリゾートも楽しめるし、きゃりーだけだときゃりーを楽しめなかったかもしれない」
――次も楽しんで作れそうですかね。
「具体的な中身とかはノープランですけどね。曲自体はテンポ良く作っていきたいし、皆で喋ってご飯食べながら出てきたものが次の日に曲になるぐらいの感じでやってきたんで、そういう瞬発力で作りたいですね、きゃりーの場合は。いまから次の計画を考えても、その通りにはならないし(笑)」
――そういえばcapsule同様に“PON PON PON”は早くも海外で評判のようですね。
「意識して海外でウケようとか思ってないからいいんじゃないですかね。東京にいて本気で作ってるものが、勝手に受け入れられるっていう。きゃりーの存在自体もそうだし、これからもどんどん浮いていけばいいんじゃないかな、と思います」
▼関連盤を紹介
左から、中田のプロデュースしたPerfumeのシングル『レーザービーム/微かなカオリ』(徳間ジャパン)、中田のリミックスを収めたカイリー・ミノーグのベスト盤『Kylie Hits』(EMI Music Japan)、JUJUのシングル『さよならの代わりに/願い』(ソニー)
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