インタビュー

RAFVEN 『Svensk Kultur』

 

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2009年の〈フジロック〉をもっとも盛り上げた男たちとして記憶される、スウェーデンはヨーテボリ出身の8人組、レーヴェン。まったく無名の彼らが、複数回のショウを重ねるごとに観客たちの人気を獲得していき、最後のステージは入場規制がかかるまでに。体験者たちの興奮ぶりは、会場でのCDセールスが過去10年でトップを記録したという事実からもあきらかだろう。「あんなに歓迎されるとは思わなかったよ」と振り返るのは、ギター担当のヨナス・ランドバーグ。「いったい何回のステージをこなしたのかな? 忘れちゃった」とのことだが、4日間で8回以上のステージをこなしていたのですよ。

多くのリスナーは〈フジ〉やその後の来日公演において、彼らの旺盛なサービス精神に加え、独特なユーモアセンスやイカした男の哀愁などを同時に知ることとなった。そんなレーヴェンがプレイするのは、聴き手の身体を熱くさせるパンキッシュなジプシー・スウィング、北欧のトラッドやクレズマーなどを取り込んだ無国籍インスト音楽。ブラス隊やアコーディオン、ヴァイオリンなどがメランコリックな旋律を奏でていたかと思うと、気付けばスウィンギーに暴走していたりするのが特徴。実に奔放な彼らの音楽は聴く者を無性に踊りたくさせる。そんな魅力はニュー・アルバムの『Svensk Kultur』においてもしっかりと体感できるだろう。

「本作に関しては、いつもステージで披露しているライヴ感覚をグッと詰め込んだつもり。ライヴが始まると僕たちとお客さんの間に魔法が起きるんだ。レーヴェンはライヴ・バンドとして始まったし、今後もその気持ちを大事にしていきたいと思う」。

ライヴこそすべて、と、思いの丈を打ち明けるジョナス。レコーディングを一発録りで通し、走り出したら止まらない芸風を突き詰めたような新作では、確かに随所でライヴ・マジックが働いている。緩急をつけた動きは一段と冴えを見せており、笑顔と哀愁を交互に振りまきながら完走するのだが、全曲がエンドレスで続いているような構成もライヴに近いものを感じさせる。

「本作はスウェーデンの旗の下に世界中を旅する航海日誌みたいなもの。そこにはパンクスが出てきたり、海賊も出てきたり、モンスターも登場するんだ。怒りと喜びでこの海を乗り越えてきたよ!」。

そんなお茶目な喩えで楽しませてくれるヨナスだが、真面目な性格はどうにも隠せない。

「それに加えて、新作では移民たちへのリスペクトを込めた、ポリティカルな面も含んでいる。悲しいことに、スウェーデン国内には移民が来ることで自国の文化が失われ、スウェーデン人のアイデンティティーまで失われてしまうのではないかって危惧している連中もいてね。でも、僕らは異文化が入ってきて、文化がミックスされることを凄く素晴らしいことだと考えている。タイトルの『Svensk Kultur』(=英語に訳すとSwedish Culture)で僕たちは、すべての文化が発展するようにお互いの影響を必要とするって断言したかったんだ」。

スウェーデンは長年に渡って、人道主義や労働力不足から、政策的に移民や難民を寛容に受け入れてきたことで知られている。そして、その文化がさまざまな文化の結集であることを自身の音楽でもって主張したのがこの『Svensk Kultur』なのだ。レーヴェンは異文化に敬意を払いつつ、ミクスチャー・センスを駆使しながら自分たちの文化に対する考えを編み直そうとする。つまり、異文化混合の力を平和利用しようとしているのだ。ゆえに彼らはいつだって雑食的であることを誇りとするし、寛容でありたいと努力を続ける。そんな懐の深い音楽が多くのリスナーを惹き付けないわけがない。新作を引っ提げて日本に再上陸する9月には、レーヴェンを包む輪はもっと大きくなっていることだろう。

 

PORFILE/レーヴェン

スウェーデンはヨーテボリのフォーク・パンク・バンド。現在のメンバーはヨナス・ランドバーグ(ギター)、ローク・ニーベリ(ヴァイオリン)、マーティン・ヌルミ(サックス)、ダニエル・ウェイディン(タンブーラ)、ヨハン・ダールクヴィスト(アコーディオン)、ダヴィッド・フレンケル(トロンボーン)、ラスマス・ブランク(ベース)、パー・スヴェンナー(パーカッション)。2003年に路上演奏を開始し、2006年より現編成に。翌年にライヴ盤『Live!』をリリース。2009年には『Welcome To Foxshire』発表後に出演した〈フジロック〉でのパフォーマンスが話題を呼ぶ。翌年の単独来日を経て、このたびニュー・アルバム『Svensk Kultur』(Swingkids/UNCLEOWEN)をリリースしたばかり。

 

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掲載: 2011年08月31日 17:42

更新: 2011年08月31日 17:43

ソース: bounce 335号 (2011年8月25日発行)

構成・文/桑原シロー