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インタビュー

ハナレグミ 『オアシス』

 

 

 

昨年の秋にプライベートスタジオを設立したハナレグミが、前作『あいのわ』以来、
約2年ぶりとなる5枚目のアルバム『オアシス』を完成させた。
気の合う仲間とのセッションから生まれたファンクやレゲエなどのアップチューンから、
生と死に真正面から向き合った、弾き語りによるアコースティック・ナンバーまで。
「でこぼこしてるけど、より自分らしいアルバムになった」という新作に込めた思いを聞いた。

 

「自分のスタジオを作ることが、もうひとりバンドメンバーが 入ることと一緒なんじゃないかって思ってた」

 

 —ニューアルバム『オアシス』は、昨年秋に立ち上げたプライベートスタジオで
制作されたんですよね?

 

永積(以下同)「次になにかをやり出すためにも、
今までと違うやり方をしたいなって思った上で考えついたのが、
場所を持つっていうことだったのね。
それに、僕のなかでは、自分の場所を持つっていうことが、
バンドメンバーを決めるようなことだと思ってて。
だから、今まででいちばん濃い時間を過ごせたのは確かだし、
より自分っぽいアルバムになったな〜っていう実感はありますね。
なんというか、音の輪郭がでこぼこしてる。それが、やっぱり自分なんだと思う」

 

—でこぼこしてるのが、今のハナレグミらしさと言っていい?

 

「うん。やっぱり、でこぼこしてるっていうか、きれいにまとまんない感じが欲しかったんですよね。
例えば、タイトル曲の“オアシス”は、みんなにいつもと違う、ざらっとした手触りがあるって言われたのね。
自分のスタジオを作ることが、もうひとりバンドメンバーが入ることと一緒なんじゃないかって思ってたように、
このアルバムのなかには、きれいにまとまらない面白さが入ってるんじゃないかって思う。
どこかガサガサしてる感じというかね。とくに“か!た!!かたち!!!”とか“ごっつあんです”は
バタードックのときの何かをすごく感じるから(笑)」

 

—くだらなくて笑っちゃうファンキー・ナンバーと、涙が出るくらい感動する弾き語り曲の触れ幅がすごいですよね(笑)。
泣ける方で言うと、“天国さん”もプライベートな風景を切り取った歌ですよね。 

 

「そうだね。4年前にじいちゃんが死んだときの自分の両親の感じがすごく残ってて。
おふくろがじいちゃんの棺桶に向かって「お父ちゃまありがとう」って言ってて、
親父は見たこともないような壊れ方をしてた。
僕はそのシーンが好きで、辛いことや悲しいことがあると、そのお葬式を思い出して、
どこか救われるような気持ちになってたのね。
歌詞に出てくるのは死んだじいさんと息子、息子が結婚した嫁。その歌詞を書いたのはじいさんの孫で、
タイトルを考えたのは、お葬式で神父さんを「天国さん」って言ってた姪っ子。
4世代に渡る想いが刻まれてるのも面白いし、書くことがバーンって出てきたっていう意味では、
“サヨナラCOLOR”や“光と影”に近いものがあるなとも思いますね」

 

—アルバムのタイトルはどうして『オアシス』にしたんですか?

 

「もともとはドラムのPすけのアルバムに入れた曲で。
葉山にあるオアシスっていう海の家でのライヴに向けて書いた曲でもあったんだけど、
みんなが「この曲がすごくいい」って言って。僕もすごくいいなと思ったから、
あんまり考えずに、じゃあアルバムのタイトルにしようって。
<オアシス>っていう言葉もいろんな意味を持ってるような気がしたから」

 

—どんな意味を持ってると思います?

 

「僕のなかの<オアシス>って、砂漠の真ん中で、陽炎のように見えてるくらいがオアシスっぽいんだよね。
よくよく考えると、砂漠の水辺のことをオアシスっていうんだけど、
はっきりとそこに水がある状態は、もう水辺でいいじゃんって思うの(笑)。
だから、僕にとっては、行けども行けども辿り着けない場所っていう感覚」

 

 

 

 

—蜃気楼的な印象? 

「そう。すごく遠くから、「あ、オアシスが見える〜」くらいがいちばんオアシスっぽい。
近くにも見えるし、遠くのことのようにも見えるし、夢のような感じというか、
希望や願いみたいな気分かな。
それが、叶えられるかどうかっていうよりは、なんかそこにありそうだなっていうくらいが、
僕がイメージするオアシスかもしれない」

 

—はっきりとした形がないものが揺らいでるっていうイメージ?

 

「僕自身が、揺れ続けていたいってことかもしれないね。
以前、ある方に「揺れ続けたいってことは一見、優柔不断とか弱さに見えるけれども、
揺れ続けることを自分に課すのは強さでもある」って言われたことがあって。
自分はいつも揺れまくってるから、こういう音楽でいいのかって迷ってるけど、
それは決して弱さじゃないって言われて。
決められないことも大事な意志の1つで、そういう作品の方がより多くの人を巻き込む力を持ってるって。
自分の音楽はこれだ! って言い切っちゃうと、そこからはみ出た人は入れなくなるけど、
揺れ動くことによって、より多くの人の心のひだにあたる可能性を持ってるって言われて、
すごく救われたんだよね。
自分としては、もっとスパンと思い切った音楽をやってみたいとも思うこともあるけど(笑)、
答えが出ないなかに居続けるしかないし、気持ちが揺れるままに歌っていけたらいいなと思いますね」

  

 

■NEW ALBUM 『オアシス』……9/7 on sale!

■SONG LIST…

01.あおい きれい
02.Crazy Love
03.オアシス
04.Spark
05.きみはぼくのともだち
06.hi tide lo tide
07.ごっつあんです~今夜はジュワイ欲中毒~
08.か!た!!かたち!!!
09.ぐにゃ~てなる
10.天国さん
11.ちきしょー

 

■PROFILE… ハナレグミ

02年夏よりSUPER BUTTER DOGと並行して活動を始めた永積崇のソロ・ユニット。
09年発表の4thアルバム『あいのわ』は日本レコード大賞・優秀アルバム賞を受賞。
来年1月からは全国ツアーを開催。
 

   
記事内容:TOWER 2011/9/5号より掲載

カテゴリ : COVER ARTIST

掲載: 2011年09月05日 12:00

ソース: 2011/9/5

TEXT:永堀アツオ