高橋 瞳 『PICORINPIN』
[ interview ]
高橋 瞳から4年ぶりのニュー・アルバム『PICORINPIN』が届けられた。前作『Bamboo Collage』のリリース後、「歌はもういいかな、と思った」というところまで迷い込んでいた彼女は、ヒダカトオル、ROLLY、Koji Nakamura(iLL)、Chara、H ZETT Mといったアーティストとの出会いのなかで、少しずつ方向性を見い出していったと語る。そう、高橋 瞳は本作の制作を通して、おそらく初めて、自分自身の音楽性を解放させたのだ。
何が缶詰だよ!
――4年ぶりのアルバム『PICORINPIN』、ホントに素晴らしいと思います。
「あ、ありがとうございます。まさかそんなこと言ってもらえるとは思いませんでした」
――(笑)高橋さん自身のやりたいことがきちんと反映されてるっていうのが、このアルバムのポイントだと思うのですが。
「うん、そうですね。BEAT CRUSADERSの皆さんと“ウォーアイニー”(2009年)を作ったときから、このアルバムを作ることが目標になって。それからだいぶ時間がかかっちゃったんですけど――ヒダカさんに会うたびに、〈いつ出るの?〉て言われてたし(笑)――1曲1曲、ちゃんと納得できる作品になりましたね」
――『Bamboo Collange』(2007年)をリリースしたあと、すぐに次のことを考えてたんですか?
「いや、そのあとは……ヒヒッ(笑)。あれ、何で笑ったんだろう?」
――(笑)2008年に“あたしの街、明日の街”というシングルを出してますよね。
「あ、そうですね。そのときに制作陣が変わったのもあって、漠然と新しくなっていくんだろうなとは思ってたんです。でも、考えるところもあったんですよね。当時は19歳だったんですけど、20歳を目前にして、友達ともいろいろ話したり。私たちはベルトコンベアの肉だぜ、とか」
――うん? どういうことですか?
「(笑)いや、私たちは逆走できないレールに乗って、大人っていう缶詰になるんだなっていう。20歳って缶詰だと思ってたんですよ。〈窮屈だね〉〈つまんないな〉って。そういう焦燥感もすごくあったし、音楽っていうか、歌も〈もう、いいか〉みたいになってて。高校生のときは、ホントに部活感覚でやらせてもらってたんです。守るものが何もなくて、怖いもの知らずだから、そのぶん尖ってて、強かったと思うし。でも、卒業した途端にいろんなことが現実的になってきたんですよね。歌う意味とかもすごく考えました。〈私がやりたいことって何だろう?〉って。考える時間が必要だし、だったら1回、スパッとやめたほうがいいかなって」
――なるほど。「でも、そのタイミングでビークルの皆さんとごいっしょさせてもらったんですよね。〈PRETTY IN PINK FLAMINGO〉という映像作品に出させてもらったんですけど、そのときに一度だけ、メンバーの皆さんと私だけでご飯を食べる機会があったんです。ヒダカさんが〈高橋はこういうことを思ってるんだとさ〉みたいなことを言ってくれて、皆さんもいろいろ話してくれて。聞いてると、けっこうネガティヴなことも出てくるというか、〈実は悩んでるよ、俺らも〉みたいな。そのとき思ったんですよね。〈こんなにキャリアがある人たちでも悩んでいるのに、私は何やってんだ?〉って。〈何が缶詰だよ!〉っていう(笑)」
――前向きになるきっかけを得た、と。
「うん、そこから心境が少しずつ変わってきて。その後、“ウォーアイニー”を作ることになるんですけど、自分の声をもっと活かせる方法があるんじゃないか?って考えられるようになってきたんですよね」
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