INTERVIEW(4)――ライヴが見える
ライヴが見える
戒
——そんななかで、“TOMORROW NEVER DIES”の詞だけがちょっと異質じゃないですか?
RUKI「うん」
——最終的には〈In the broken world/Tomorrow does not disappear/Don’t kill yourself〉というところに行き着くと思うんですけど、これだけメッセージ性が強い曲もthe GazettEとしては珍しいというか。
RUKI「そうですね。この曲はいちばん最後に出来たんですけど、選曲会で1曲漏れて、どうしよう?って思ってて。シングル以外の新曲は7曲でも別によかったんですね、量的には。でも、8曲やるって言ったのに7曲になるのはいかんせんどうだっていう話になって、ツアー中に作ったんです。Zepp Nagoyaだったんですけど、〈ちょっとここ、ドラム叩いて〉とか〈打ち込んで〉って感じでやって……どこまで作ったっけな?」
麗「あれ、どこまで反映されたのか謎だけどね(笑)」
RUKI「(笑)一応忘れないようにその場で録ったりしてて、で、家に持って帰ってきて。イントロとサビだけあったんですけど、あいだがなくてこれ繋がんねえじゃん、みたいな話になってて、そこが今回のアルバムでいちばん苦労したかなっていう(笑)。ライヴのときに作ったからメッセージというか、そういう部分も上向きだったりして」
——日本の現状に対する憤りや葛藤を攻撃性に転化したアルバムの、最後の最後でのこのメッセージは、本当に効きます。
RUKI「そういうこと、いろんな人が言うんですよね。いままでこういうエンディングは意外となかったりするんですけど、でもライヴのときはいつもこういう終わり方をするんで、それと近いのかもしれない。ファンは、このアルバムをバーッて聴いてきて、いちばん最後にその曲がきたときにライヴが見えるかな、って思うんですけど」
麗
——なるほど。
麗「ギリギリになって、この曲が出来上がって良かったな、って。最初はちょっと違和感あったんですけどね、転調で急に開ける感じになるじゃないですか。無理やりじゃね?って思ったりもしたんですけど(笑)」
RUKI「無理やりだよね(笑)」
麗「だけどそれが、こうも効いてくるとは、って。そこがこのアルバムで重要な部分になったことは、出来上がって初めて気付きましたね」
——とは言え、この曲で感動的に終わるわけではないところがまた、ね。ラストはカオティックなインスト“OMEGA”で締められていて。
RUKI「(笑)ポツーンとなるじゃないですか、聴いてると。そこがすごくいいなあと思って」
——この曲は“THE SUICIDE CIRCUS”をスクラップしたものですか? 聴き取れなくて。
麗「聴き取れるはずがないですね、逆再生なんで(笑)。“THE SUICIDE CIRCUS”のBメロのずっとつぶやいてるところとか」
RUKI「あと〈[TICK-TACK…]〉っていうのもね」
麗「それすらも逆再生で(笑)。“TOMORROW NEVER DIES”がなかったら、この終わり方も〈うーん、なるほどね〉みたいになりそうですけど、フリがいいですよね。綺麗に終わってほしいのに……っていうエンディングを最後に持ってこれたのも――この“OMEGA”が効いてくるのも、“TOMORROW NEVER DIES”があるからかもしれない」
決して触れやすいものではない
——そうした14曲で構成される『TOXIC』。最後の質問ですが、the GazettEが提示する〈毒〉とは、どのようなものでしょうか?
RUKI「もともと俺、毒がないバンドってあんまり好きじゃないですよ。それも含んでるし、自分たちにとって中毒性のあるものっていうのもあるし。決して触れやすいものでも、キャッチーなものでもない、っていうんですかね。そういう意思表示っていうのがいちばん近いかも。簡単に言うともう、毒あってナンボかなっていう。世の中は毒ばっかりなのに、って。そういう気持ちも込めてますよね」
——決して触れやすいサウンドではない。とは言え、the GazettEの音楽をより多くの人たちに聴いてもらいたいっていう気持ちもあるわけですよね?
RUKI「うん。でも、その毒の部分を聴いてもらいたいですよね。自分たちがヴィジュアル系を好きになったのもそこで、とにかく毒があったっていう……だから、それが受け入れられないんなら、もうしょうがないかなっていうところですよね。自分たちにできる音楽はこれだけど、それがどれだけ響くのか、っていう。“SHIVER”とか“RED”は、いろんな人たちに聴いてもらいたいっていう気持ちがあったから、もともと自分たちのなかにあったものでもああいう曲になったんだろうし、歌詞もそうですけど……うん。でもやっぱり、譲れない部分は絶対ある。プライドもあるし。プライド捨ててまでバンドやる必要性はない。言ってしまえば」
——はい。
RUKI「俺のなかではそういう感覚なんです。みんなが好きで集まって、好きな音を出してやるっていうのがシンプルなバンドで、それって“REMEMBER THE URGE”とも繋がるんですけど、それを取り払って売れたところで絶対いつか自分の首が絞まるだけなので。でもキャッチーだから、ポップだから毒がないとか、そういうことではないんですよね。サザンオールスターズだって、すごく毒々しいイメージがあるし。サザンか○○○○かどっちか、って感じですよね。わかります(笑)?」
——ああ~、わかりますけど……それは書けないですね(笑)。
麗「暴走しちゃった(笑)」
RUKI「サザンにはパンク精神がありますよね。だからポップでも毒がないとは思わないし……そういう精神的な意味合いですかね、『TOXIC』は」