インタビュー

マイ・ベスト・フィーンドの多彩なサウンドスケープを紐解くための8枚!



GRIZZLY BEAR 『Veckatimest』 Warp(2009)

ブルックリンに居を構えてレーベルも同じ……と、何かと共通点が多いインディー・フォークの代表格。音楽的には、地に足の着いた感覚と謎めいた浮遊感が同居しているアレンジ、そしてヴォーカリストの歌声が中性的という部分も重なる。ゆえにグリズリー好きはMBFも要チェックだ。

 

SPIRITUALIZED 『Songs In A&E』 Spaceman /Co-op(2008)

〈宇宙遊泳〉という言葉がぴったりの浮遊感、押し寄せるギター・ノイズ、執拗なまでに繰り返される祈り、そこから漂う壮大なゴスペル感覚——元スペースメン3のジェイソンが結成したこのサイケ・バンドの音をMBFが参照していることはまず間違いない。

 

NEIL YOUNG 『On The Beach』 Reprise(1974)

『After The Gold Rush』と『Harvest』の大ヒットで一躍スーパースターに祀り上げられたことに憔悴したニールが、ぼんやりと渚で佇んでいるジャケも印象的な作品。絶望の果てに、ふと見上げた先から希望の光が見えてくるかのような穏やかなトーンは、メンバーも〈お手本にした〉と公言。

 

DEERHUNTER 『Halcyon Digest』 4AD(2010)

ブラッドフォード・コックス率いる4人組。彼らが奏でる繊細な轟音ノイズと、エクスタシー、恐怖、逸脱感、危うさ、祈りの絡み合いは、60年代から続くロック特有の〈負の美学〉で溢れている。そしてMBFの音楽にも、彼らと同類の〈負の美学〉を感じずにはいられない。

 

BEACH HOUSE 『Teen Dream』 Bella Union/Co-op(2010)

ミシェル・ルグランの姪が在籍するボルティモアの男女デュオ。いわゆる〈ドリーム・ポップ〉なサウンドから漂ってくるのは、甘くただれた欲望。近年の〈インディー・ポップのアダルト化現象〉に先鞭を着けたとも言える存在で、それはMBFの音にも引き継がれている。

 

GALAXIE 500 『On Fire』 Rough Trade(1989)

80年代末、NYに突然現れたヴェルヴェッツ・チルドレン3人組が生み出した、あまりにもだらしなくて緩やかな諦念は、歌詞に〈On Fire〉という言葉が登場するMBF曲“One Velvet Day”の世界観とリンクしている。加えて、ギャラクシーと親交の深かったマーキュリー・レヴとも共通性が。

 

LIGHT ASYLUM 『In Tension』 Mexican Summe(2011)

NYの男女エレクトロ・デュオによるEPで、MBF同様にマット・ボイントンが一部で腕を振るっている。『In Ghostlike Fading』にも参加したシャノン(グレイス・ジョーンズを彷彿とさせる風貌!)のソウルフルな歌声がグリッターな電子ビートに乗る様がイナタくもカッコイイ。

 

FRED NEIL 『Fred Neil』 Capitol(1966)

若かりし頃のボブ・ディランも憧れたというアシッド・フォークの元祖にして、大のイルカ好きとしても知られる巨人が本作で指向していた浮遊サウンドもまた、MBFのルーツのひとつ。“Cracking Eggs”における、ゆるやかに意識が流れていく感覚なんかはまさに御大譲りだ。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2012年03月07日 00:00

更新: 2013年03月07日 00:00

ソース: bounce 341号(2012年2月25日発行号)

ディスクガイド/佐藤一道

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