T-SQUARE
安藤正容、坂東慧 インタヴュー
デビュー34年目、38枚目のオリジナル・アルバム『WINGS』。リーダーでギタリストの安藤正容、サックスの伊東たけし、キーボードの河野啓三、ドラムスの坂東慧の4人からなるTスクエアの最新アルバムだ。78年のグループ結成から中心メンバーである安藤正容、そして04年に正式メンバーとなった坂東慧というジェネレーションの違う2人に本作にこめた想いを語ってもらった。
「アルバムタイトルは今回の収録曲である坂東くんの曲《バード・オブ・ワンダー》から僕が羽根をイメージして、自分たちももっと羽ばたきたいということと、震災の復興みたいな意味をこめて提案したんです。収録曲に関しては曲を集める段階で《オーメンズ・オブ・ラヴ》とかTスクエアの代表曲にあるポップさを持った曲を書いて欲しいっていうことになって。Tスクエアらしいポップでテンポ感のある曲で構成するということがコンセプトだったと思います」(安藤)
Tスクエアのメロディ・メイカー=安藤正容というのが一般的な認識だが、前作『ナイン・ストーリーズ』や本作では、実は提供曲が一番多いのは最年少メンバーの坂東慧だったりするのだ。
「坂東くんの曲の比重が多くなっているのは意図しているわけではなくて、全員で曲を持ち寄って選曲した結果、自然とそうなっているんです。曲そのものが新鮮なんじゃないですかね? 坂東くんや河野くんが書く曲の方がTスクエアらしいような気もするんですよ」(安藤)
「作曲する時に大切にしているのはやはりメロディで、歌がつきそうなぐらいキャッチーなものを意識したりもしますね。伊東さんがサックスやEWIでメロディを吹いた時に一番活きる音域をイメージしながら書いたりもします」(坂東)
「偉いね。僕は伊東さんに『これ息つぎが出来ないじゃないか!』ってよく怒られる(笑)。インストの曲ってテクニカルなメロディのものはいっぱいあるんですよ。でもTスクエアにはそういう曲はないですよね。ハーブ・アルパートの《ビター・スウィート・サンバ》(『オールナイト・ニッポン』のテーマ曲でも知られる)みたいに印象的なメロディであったり、ハーモニーの美しい動きみたいな楽曲を指向しているということなんだと思います」(安藤)
そのポップな音楽性こそが、デビュー時からバンドのメンバーは何度か変わっているものの、サウンドには常に一貫性がある理由なのだろうか?
「僕にしてみるとメンバーが替わればサウンドも変化していると思っていましたけどね。でも、そう思われないとしたら、多分曲調のせいなんでしょう。わかりやすいメロディとハーモニー、そこに明快なリズムがあって。音楽性そのものはバンドとしては変わってないと思うので、その辺がTスクエアらしいところなんでしょうね」(安藤)
バンドは同世代のメンバー構成になりがちなものだが、安藤、伊東のベテランと河野、坂東の若手というジェネレーションの違うメンバーが共存している良さはどこにあるのだろうか?
「坂東くんは他のセッションなんかで吸収してきたことをアイデアとして持ち込んでくれるんですよ。そういうのって常に新しいものを生み出していけるからいいですよね」(安藤)
「僕から見ると安藤さんは自分の同世代のギタリストとは比べ物にならないほど長い音楽経験があるわけで、出てくる一音一音の重みが全然違いますよ。そのサウンドとちょっとしたリズムなんかが特に。本当に学ぶことが多いです」(坂東)
さてTスクエアといえばF1中継でお馴染みの名曲《トゥルース》が今や国民的なインスト曲として知られるところ。そのF1グランプリ中継が今年は25周年。その《トゥルース》をはじめとするF1グランプリの歴代テーマを収録したコンピレーション『The Complete Selection The 25th Anniversary of FUJI TELEVISION Grand Prix』もリリースされる。
「《トゥルース》はエレクトーンを習っていた4歳の時に発表会でこの曲を演奏するグループがいて、そこで知ったんです。Tスクエアではじめてあわせたのもこの曲でした」(坂東)
「バブル期、F1中継、そこに《トゥルース》が乗ったおかげで多くの人に認知されたことはラッキーだったと思いますね。この曲が有名になり過ぎたせいで、レコード会社から“第二の《トゥルース》を書いて欲しい”なんて要望もありましたし、自分的には同じくらい良い曲をいろいろ書いてきたつもりだったんですが、あの曲のようには広がっていかなかったですね。坂東くんや河野くんもそういう曲を書きたいと思っているんじゃないかな」(安藤)
最新作『WINGS』で羽ばたくような、誰もが元気の出るような音楽を与え、そして永遠の名曲《トゥルース》で滑走し、Tスクエアはどこまでも飛翔してゆく。