TOTALFAT 『Wicked and Naked』
バンドに意識革命をもたらした3枚のシングルを経て送り出されるニュー・アルバムは、エモーションと熱量に満ちた渾身の一撃!
〈最高傑作〉というよりも、まったく別次元に突入した傑作という言い方が相応しいだろう。TOTALFATのニュー・アルバム『Wicked and Naked』を聴いて、正直驚いた。いや、面喰らってしまった。収録された全12曲、どれも高いクォリティーをキープしながら、一曲一曲に込められた感情がいままでにも増して振り切れている。要するに、めちゃくちゃエモーショナルな作品に仕上がっているのだ。まず、今作の率直な感想をメンバーに訊いてみた。
「若干の〈生まれ変わった感〉はあるかもしれない。時の流れが目まぐるしすぎて、どういうアルバムかまだ落ち着いて判断できない状態ですけど。メンバー4人、すり減った石鹸のように疲弊しながらも、良い作品ができたと思います」(Kuboty、ギター)。
「根拠のない自信がありますね。これまでたくさん音源を残してきたけど、誰々っぽく……ではなく、TOTALFATと言えばこれでしょ!という音源がやっとできましたね」(Jose、ヴォーカル/ギター)。
「俺的には一周回って元に戻った感覚がありますね。それはサウンド的な原点回帰というより、バンドを始めた頃の精神状態に近いんですよ。時間があまりなく、誰がギヴアップしてもおかしくない状況のなかで、それを超越した気持ちや感性を曲に込めることができたから、それが嬉しくて」(Shun、ヴォーカル/ベース)。
「曲やアレンジに関してもすごく話し合ったんですよ。そこはいままでの曲作りとは違うところで、だからこそ4人の人間味がものすごく入った作品になったと思う。アルバム名にも〈Naked〉という言葉が入ってるし、一曲一曲全部出し切りました」(Bunta、ドラムス)。
たしかに彼らは前作『DAMN HERO』以降、多忙な日々を過ごしていた。昨年11月から今年4月にかけては“Place to Try”“Good Bye, Good Luck”“PARTY PARTY”と3枚のシングルを立て続けにリリース。そこで従来のバンド像に縛られないチャレンジを試みた彼らは、ニュー・アルバムに至るターニング・ポイントに辿り着いたのだった。
「“Place to Try”で初めて日本語詞に挑戦したときに、導かれたものがたくさんあって。あの曲に引っ張ってもらった感じはありますね」(Shun)。
「リスナーを引っ張るつもりで書いたのに自分たちも引っ張られちゃった(笑)」(Jose)。
「ライヴでやって、自分たちがいちばんグッとくるみたいな。すごく力強い曲なんですよ」(Kuboty)。
バンドの意識を変えてくれた“Place to Try”は、いまやライヴでシンガロングの大合唱を生み出すアンセムだ。
「追いかける立場から、だんだん伝えていく立場を意識しはじめて、その気持ちの変化がいちばん大きいですね。自分の書いた曲や歌詞がどう届いて、聴いた人が何を感じて、その人にどう生きてほしいか──そこまでイメージできるようになったんですよ。それが今回の楽曲に活かされていると思う」(Shun)。
「俺らにいちばん求められているのは、ポジティヴさというか、この4人のめっちゃポップな人間性だと思うんですよ。そこにお客さんも共感してくれて、〈元気をもらってます!〉って言われることも多くなったし。それに応えるためにも、今回は自分たちが本当に良いと思ったものしか入れてないですね」(Bunta)。
ほかにも、日本語詞で熱く訴える“Just Say Your Word”、スラッシーな極悪メタル曲“Fat or Die”など、聴く者を内側から焚きつける楽曲ばかりが並んだ『Wicked and Naked』で、いまのTOTALFATらしさを存分に味わってもらいたい。
▼『Wicked and Naked』の先行シングルを紹介。
左から、“Place to Try”“Good Bye, Good Luck”“PARTY PARTY”(すべてキューン)
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カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2012年06月27日 17:59
更新: 2012年06月27日 17:59
ソース: bounce 345号(2012年6月25日発行)
インタヴュー・文/荒金良介