インタビュー

矢沢永吉 『Last Song』

tower348midashi-1

 

前作『TWIST』から約2年。いよいよ40周年というメモリアルイヤーを迎えた矢沢永吉が最新アルバム『Last Song』を完成させた。今作は、前作をも凌駕するロックナンバーから至極のバラードまでラインナップされており、40年間、ロックの道を突っ走り、常に新しいものを追い求め続けた現役最強ロッカーにふさわしい作品だ。

「僕は思ったんです。録ることよりも聴くことの方が大事なんだと」

 デビュー40周年という記念の年に、『Last Song』という意味深なタイトルの
ニューアルバムを発売する矢沢永吉。このアルバムについて早速聞いてみた。

「もう40周年ですからね。武道館も117回やりまして、アルバムもオリジナルで32枚、今まで300~400曲くらい、たくさん書いて来ました。このアルバムを作っていく中で思ったのは、レコードがバンバン売れるような時代ではない事や今までの海外含めた活動を通じて考えた事があって、ふっと肩の力が抜けたんです。それで“LAST SONG”という曲があったので、これを使ってみようと軽い気持ちから、アルバムのタイトルにしたわけです。もし、これが最後になるのだったら、最後のアルバムでも良いんじゃないかな、という今の僕の想いもありましたね」

長年のファンからすれば、非常に心配なタイトルだったが、そうではなく、今の矢沢はあくまで自然体に、音楽への真摯な想いでアルバムを作ったようだ。その渾身のアルバム『Last Song』の録音方法についても聞いてみた。そこには、自身のレーベルで発売した、2作のアルバムとも通ずる部分があるらしい。


「今作もベーシックトラックはLAで録っています。当然、最高のミュージシャンが参加しています。ベーシストのネイザン・イーストやそのクラスのミュージシャン勢です。こんな強力なメンバーだったら、大体TAKE 1で、1曲4分くらいで終了です。スタジオに入って世間話したりして、デモテープを2~3回くらい聴かせた上で録音ブースに向かい、せーので演奏を始めたらそれで終了ですよ。なぜ、ベーシックトラックを向こうで録るかといいますと、まずは一発で録れるミュージシャンと録った方が良いんです。一発で録れるくらいのテクニックを持ったメンバーが演奏するTAKE1の化学反応というか、揺れ感やいい加減さ、かっちりしていない感じのグルーヴが、抜群に良いんですよね。でも、ここに気付くまでに、回り道しましたよ。早くから本場に行かないと駄目だと思って、アメリカやイギリスに行き、世界的なミュージシャン達と一緒にやって来ましたが、<何か大事なものを忘れてきているかもしれないな>と思った時があったんですね。演奏やアレンジで、きっちり綺麗に収めるだけではダメなんだってことに、ようやく気づけたんです。それは、『ROCK’N’ROLL』や『TWIST』くらいからですかね。その集大成として『Last Song』ではバックコーラスやミックスダウンなどの部分を日本人が担当しましたから、洋楽ではなく、きっちりと日本人の心が入っているんです。そして、もう一つ今回、録った後に一番重視したのは、<聴くこと>。歌入れ含めて、録るのは1か月くらいで終わっているんです。そして、後の3か月くらいはほとんど聴いているんですよ。車の中から書斎など、ありとあらゆる場所で聴いて、<もっとギター上げよう>とか、ヴォーカルや音の混ざり方等に非常に時間をかけたんです。今の音楽業界、ほとんどの方のアルバムは録ったらすぐリリースするのだと思いますが、僕は思ったんです。録ることよりも聴くことの方が大事なんだと。だから約3か月間、ずっと聴いていたんですよね」


 

  

yazawa-main

 

そのような、アルバム作りに卓越したプロデュース能力を持つ矢沢だが、アルバム全体を通して響く、62歳ながら、抜群の色気を持つ歌声。アルバムだけでなく、ライブでも輝き続ける歌声を保つ部分についても、聞いてみると「ヴォーカルというのは、面白いですよ。楽器ですから、放っておいたら錆びて行きます。僕は、実はサボり魔な所もありますから、ツアーが終わるとすぐに歌わなくなるんです(笑)。しばらくの間、喉を使わないでいると、錆びて行っているんだろうな、というのも考えます。ところが、自然と歌う話が来るんですよ(笑)。今年は、東京スカイツリーとかね。それに向けて発声からスタートして、最初は10分くらいだけ歌うくらいにして、日を追うごとに15分、20分と延ばしていくんです。徐々に、ハイパートのキツいところも、本気で伸ばしていくと、1週間くらいすると出始めるわけです。そうして、本番には完全に声が出るようになっているんですよ。面白いものです。歌う曲も、今回のアルバムで言うと“IT'S UP TO YOU!”みたいなロックナンバーと11曲目の“LAST SONG”という曲はバラードで正反対じゃないですか。同じ人が書いてる、歌っているとは思えないと良く言われます(笑)。でも、両方のメロディーが浮かんで、歌える事が嬉しいんです」

 

9月1日には、デビュー40周年を記念して、6万5千人を収容する日産スタジアムで約30曲を歌うコンサートを行うとの事。その前に、今作で矢沢永吉の今の魅力を是非、貴方も堪能して欲しい。



 

■ALBUM……『Last Song』 now on sale!

■SONG LIST…

01.IT'S UP TO YOU!
02.翼を広げて
03.夢がひとつ
04.BUDDY
05.パニック
06.「あ.な.た…。」
07.JAMMIN' ALL NIGHT
08.Mr.ビビルラッシー
09.吠えろこの街に
10.サンキューMy Lady
11.LAST SONG


■LIVE…EIKICHI YAZAWA 40th ANNIVERSARY LIVE「BLUE SKY」

9/1(土)日産スタジアム

※詳細はHPにて。

■PROFILE…矢沢永吉(ヤザワ エイキチ)


キャロルのリーダーでデビュー。77年に日本人ロックアーティスト初の武道館公演、翌年に後楽園球場公演を行い、著書「成りあがり」で、一大<矢沢ブーム>を作りあげる。近年もロックフェス出演など精力的に活動中。



tower348-1minitower348-2mini
記事内容:TOWER 2012/8/5&20合併号より掲載

カテゴリ : COVER ARTIST

掲載: 2012年08月05日 12:00

ソース: 2012/8/5&20合併号

TEXT:鈴木明文