インタビュー

Nabowa 『Sen』



多彩なシンガーとのコラボや共同プロデューサー・zAkとの出会い──これまで得た経験や刺激を一つの〈Sen〉に繋いだ自信作!



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ヴァイオリンを擁するクァルテットで、豊かな情景を描いていくインストゥルメンタル・バンド、Nabowaが2年半ぶりとなるフル・アルバム『Sen』を完成させた。

「これまではアルバム制作を自分たちだけで全部やってきて。レコーディングする時も外部の人と接する機会がなかった。そこで外からの刺激が欲しくなってきたんです」(川上優、ドラムス/パーカッション)。

Nabowaは昨年、個性溢れるヴォーカリストたちを迎えた歌モノのミニ・アルバム『DUO』を発表。その制作に関して川上はそう振り返るが、そこでは、曲ごとに歌い手自身が歌詞を手掛けていた。

「もともと僕らはメロディーラインをとても大事にしてきたけど、歌い手の方々に言葉にしてもらうことで、自分らの言いたかったことと聴かせたかったメロディーがカチンと合わさって、〈こういうことやったんや!〉と気付いた。その経験を、今回改めてインスト作品に反映してみたんです」(景山奏、ギター)。

さらなる刺激を求めるべく、新作『Sen』は共同プロデューサーにzAkを迎え、バンドは彼の所有するストロボスタジオにて録音を敢行した。

「京都から東京に出てきて集中的に録音したんですけど、近くの施設に泊まって朝ご飯だけは自炊して、お昼や夕飯はzAkさんが選ぶ、間違いないケータリングで美味しいものを食べて。普段にないぐらいに規則正しい健康的な生活を送りました(笑)。でも、確かにいい音を出すためにはしっかり睡眠を取ることや、生活リズムを守ることが、いかに大事かってわかりました」(堀川達、ベース)。

4人だけでレコーディングしていた時には、細部にこだわりすぎて30回以上もテイクを重ねたこともあったという。

「zAkさんいわく〈そんなん気付いてるのお前だけや〉って。大事なのは個人の演奏どうこうより、バンドとしてどういう音を出すか。レコーディングはいままで練習した成果を出すところじゃなく、その経験を踏まえて新しいものを作る場所なんだ……zAkさんのいろいろな言葉に、目から鱗でした」(山本啓、ヴァイオリン)。

今回の収録曲の多くは、曲が出来上がってからもリハーサルやライヴでアレンジを何度も変化させ、熟成させてからレコーディングにしたものだという。精力的なライヴ活動が裏打ちする演奏力は、Nabowaの楽曲群に豊かなダイナミズムをもたらしている。

「アレンジを変えても、最初に考えたフレーズが活きてくるってことは、やっぱりこのフレーズには意味があったんだと気付く。そうすると演奏するうえでも、納得の度合いが違うんです。メロディーを弾くにしても、いままでとは違う、強い意志を持って弾けました」(山本)。

「それに、これまではいい感じに聴かせようとか、綺麗に聴かせようとか気にしていたところがあったけど、もっとドカンと、ライヴでやってる勢いみたいなものを作品のなかで出したらいいんやっていうのが掴めたのは大きかった」(景山)。

「音を出すにあたって、いままでの経験でいらないものは何もなかった。無駄なものなんて、一つもないんやっていうね」(山本)。

さまざまな経験やあらゆる場面で受けた刺激を繋いでは、一つの〈線〉にしていくNabowa。その筆致は力強く、鮮やかだ。



▼Nabowaが参加した2011年のコンピ『Let's Get Outside - MERRELL 30th Anniversary Edition -』(P.S.C.)

 

▼zAkが手掛けた作品を一部紹介。

左から、FISHMANS+の2012年作『A Piece Of Future』(commmons)、Heavenstampの2012年のEP『Decadence - E.P. + REMIXES』(ワーナー)、2012年のサントラ『I'M FLASH!』(ポニーキャニオン)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2012年10月16日 14:00

更新: 2012年10月16日 14:00

ソース: bounce 348号(2012年9月25日発行)

インタヴュー・文/宮内 健

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