quasimode 『Soul Cookin'』
結成10年を経てもなお4人は進化を続ける! 彼らだけのスパイスでソウルのフレイヴァーを活かしたジャズのお味は……
今年で結成10周年を迎え、この春のベスト盤でこれまでの活動を総括したquasimode。だが、「同じことを繰り返していてはそこでストップしてしまう。リスナーの皆さんもそこは期待していないことでもあるし」(平戸祐介、ピアノ/キーボード)との言葉通り、変化を恐れない彼らは、〈ソウル〉をテーマに早くもニュー・アルバムを完成させた。『Soul Cookin'』というタイトルが示すように、そのテーブルにはさまざまな〈ソウル〉が並び、その料理はヴァラエティーに富んでいる。
「ソウルもジャズも幅広い。でも特にソウルの持ついろんな人が取っ付きやすい部分は入れたかった。ただ曲調はさまざま。例えば“Leaving Town”はよくあるR&Bのテイストを全部生演奏でやって70'sのメロウな感じを残しつつ、現代的な感じもある。曲のニュアンスとしてアンニュイで何かどこにもハマってない感じをめざした。こういうコンセプトは曲ごとにさまざまです」(須長和広、ベース)。
ジャズ・ミュージシャンが単にソウル・ナンバーをプレイするのではなく、精神性も含めたソウルの感覚そのものへアプローチする——このテーマが出てきた理由はメンバーそれぞれが持つ共通のバックボーンにソウルがあったこと。それに加えて、DJとしても活動する松岡“matzz”高廣(パーカッション)が〈ソウル〉という切り口へメンバーを啓発した側面もあったようだ。
「matzzさんがDJプレイを通じてジャズとソウルに関わる音楽をいろいろ紹介してくれて、さらにふたつの音楽の深い関係に気付いた。それでこういう音楽にチャレンジしたらおもしろいんじゃないか?というアイデアが盛り上がったんですよ」(平戸)。
「ジャズの定義が広がっている実感があって、ジャズはさまざまなスタイルの音楽がミックスされているという解釈が深まったんです。その一つの形を示すために〈ソウル〉をキーワードにした。あとはロック・フェスにも出させてもらって、普段ジャズを聴かない人たちにどうアプローチするかを考えた結果でもあります」(松岡)。
そんな彼らなりのソウル性をさらに高めるべく招かれたのがゲスト・ヴォーカリストたちだ。クレイジーケンバンドの横山剣、土岐麻子、奥山みなこといった顔ぶれは、それぞれの曲が出来上がったイメージから選択されたそうだ。例えば「もともとはインストのつもりで作ったら、熱いソウル感たっぷりの感じに仕上がったので」(須永)という先行シングル“Summer Madness”については、「出来た時にこの曲は女性の声じゃないなと感じたんです。ポップでキャッチーでジャジー、でも男気のある太い感じにしたいなと。それなら、とっぽくて不良で経験豊かな人が良い」(松岡)と横山剣へオファーしたのだという。
軸足を置くジャズからアプローチして、どうソウル性を出すのかにこだわった『Soul Cookin'』。そのうえで身体を横へ動かすようなリズムが目立つ。
「本当はロックみたいに上下にも乗らせたいんですよ(笑)。僕らはいまの時代のジャズを定義したい。いままではオーセンティックなジャズ性にこだわっていた部分が強くありました。でも最近はそこの垣根はなくなりつつあるし、4ビートに限らずさまざまなリズムへアプローチしていきたいです」(松岡)。
彼らはこの作品でまた新たな踊れるジャズへの探求へと踏み出した。
▼横山剣をフィーチャーした先行シングル“Summer Madness”(EMI Music Japan)
▼関連盤を紹介。
左から、須永辰緒によるクレイジーケンバンドのミックスCD『World Standard CRAZY KEN BAND 〜A Tatsuo Sunaga Live Mix〜』(スペースシャワー)、10月10日にリリースされる土岐麻子のミニ・アルバム『CASSETTEFUL DAYS』(rhythm zone)、奥山みなこが参加したReggae Disco Rockersのベスト盤『"Any Love" Best of Lovers Rock』(flower)、今回カヴァーされた“Give It Up Turn It Loose”の原曲を収めたアン・ヴォーグの92年作『Funky Divas』(Eastwest)
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カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2012年10月18日 16:15
更新: 2012年10月18日 16:15
ソース: bounce 348号(2012年9月25日発行)
インタヴュー・文/鈴木りゅうた