インタビュー

アリシアも耽溺した(?)アンビエント系R&Bの陶酔



ジェイミーXXの参加した“When It's All Over”があったり、フランク・オーシャンが参加していたりする『Girl On Fire』。前作の時点でノア“40”シェビブに空間構築を託していたアリシアだけに驚きはないが、彼女は今年屈指のアンビエントR&Bと言えそうなミゲルの『Kaleidoscope』にも参加しているし、ふと気付けばこうした空気が表舞台でもトレンドとして顕在化してしばらく経った。ブレイク前からドレイクと繋がりのあったトレイ・ソングズはもちろん、ジェイミー・フォックスらがノアの音響を欲した時期があったが、昨今の流れを一歩先に進めたのはもちろんドレイクの『Take Care』と、そこに参画していたウィークエンドによる〈インディー〉オリエンテッドなアンビエンスである。

というかジェイムズ・ブレイクやチルウェイヴの台頭以降、内省的な歌声で耽美な表現を聴かせるインディー・アクトが増えてきただけなのかもしれない(音像だけ言えば、往年のトリップホップ勢や、リースやスペイセック、ムスィーナーのような人もいた)。そんなわけでインディー界隈では単に〈歌心〉ぐらいの意味で〈R&B〉と形容されているものも多いが、ハウ・トゥ・ドレス・ウェルやチェット・フェイカー、ブラック・アトラスなどの粋な風情はR&Bリスナーにも試してほしいし、クリス・ブラウンやメラニー・フィオナもメインストリーム側からの回答を作中で出していた。今後はドレイクとノアがアリーヤの〈新作〉で何を聴かせてくれるかにかかっていそうな気もする。さて。



▼関連盤を紹介。

左から、XXの2012年作『Coexist』(Young Turks)、ミゲルの2012年作『Kaleidoscope Dream』(Bystorm/RCA)、ウィークエンドの2012年作『Trilogy』(Universal Republic)、トレイ・ソングズの2010年作『Passion, Pain & Pleasure』(Songbook/Atlantic)、インターネットの2012年作『Purple Naked Ladies』(Odd Future)、ハウ・トゥ・ドレス・ウェルの2012年作『Total Loss』(Acephale)、クリス・ブラウンの2012年作『Fortune』(RCA)

 

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2012年12月21日 19:15

更新: 2012年12月21日 19:15

ソース: bounce 350号(2012年11月25日発行)

文/出嶌孝次

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