インタビュー

ザ50回転ズ 『Do You Remember?』



ラジオで聴いたあのサウンドを覚えているかい? 切なさと情熱を抱えた新作と共に、彼らは〈ロックンロール街道〉を突っ走る!



ザ50回転ズ_A

「ラモーンズの作品で例えると、今回は『End Of The Century』みたいなアルバムなんですね」と問いかけると、「そう、そうなんです!」と大きな目をギロギロ……じゃなくキラキラさせて喜ぶダニー(ヴォーカル/ギター)。そこからもうトークは止まらない。

「こういう作品をずっと作ってみたかったんですよ! いまこそ作る時だと思ったんです!」(ダニー)。

2010年から今年前半にかけて、〈ロックンロール3部作〉と題した3枚のミニ・アルバムをリリースしてきたザ50回転ズ。それを経ての新しいミニ・アルバム『Do You Remember?』は、去りゆく友人たちにエールを送るような一枚だと言う。冒頭の“あの日のロックンロール”は、彼らがリスペクトするラモーンズ『End Of The Century』のオープニング・ナンバーにして稀代の名曲“Do You Remember Rock'n' Roll Radio?”を彷彿とさせる。〈ラジオで聴いたロックンロールを覚えているかい?〉という同曲中に繰り返し出てくる問いかけが、今回のザ50回転ズのアルバムからも切ない思いと共に溢れ出ている。

「俺らといっしょに〈ロックンロール街道〉をずっと歩んできた仲間が、堅気の道へと向かっていったりするのを見ることが多くなってきたんですね。でも、彼らは彼らで家庭を持ったとか、音楽以外の仕事をするようになったとか、また別の大切なものを見つけてこの道を外れていったわけです。そんな彼らに俺らが言えることは、〈寂しいけど、またいつかやろうな!〉ってことくらい。そういう思いが今回のミニ・アルバムには込められていますね」(ダニー)。

「でも、だからって俺たちがみんなのぶんを背負っていくぜ!って大袈裟なものではないですけどね(笑)。結局は本当にロックンロールしかできないし、これが好きだからって感じ」(ドリー、ベース)。

『Do You Remember?』がフィル・スペクターのプロデュースによる『End Of The Century』を思い出させたのは、そうしたメッセージ的な部分だけではない。今回は何と全曲でホーン・セクションが参加しており、そこもまた同作をイメージさせるものだからだ。

「2作前の『ロックンロール世界旅行』で初めてホーン隊といっしょにやっているんですけど、そのタイミングでライヴもいっしょにやったんです。その時の華やかでキラキラした感じのテンションをレコーディングに持ち込みたかったんですね。それに、スペシャルズやリトル・リチャードとか、俺らが好きな昔の音楽ってだいたいサックスなんかが入っている。だから自分らにとっては(ホーン隊とやるのは)自然なことだったんです。あと、これはメンバーにも話してなかったんですけど、大きな視点で参考にしたのはRCサクセションとか清志郎さんのソロ作でしたね。ロックンロールのステージにポップなサックスが絡んできて盛り上がるようなイメージです」(ダニー)。

「〈ここにこういうホーンが入ってきたら盛り上がるね〉みたいな話をスタジオでしていました。音楽性とかそういうところではなかったですね。もっと感覚的なイメージでホーンを採り入れました」(ドリー)。

「〈ポップなロックンロール〉という僕らの方向性が、ホーンを入れることでよりわかりやすく伝わると思います」(ボギー、ドラムス)。

他にもスペクトラムやマッドネスなどホーンが入った音楽を多く参考にしたと打ち明けてくれた3人。聴く人が聴けばすぐわかる元ネタ満載の仕上がり——だがしかし、〈それこそがザ50回転ズだ〉と彼らは胸を張る。

「ラモーンズって、あきらかにビーチ・ボーイズが好きなんやなあっていうのが伝わってくるじゃないですか。俺らもそういうのがいいなと思うんです。〈ザ50回転ズが好きやったら絶対コレもイケるで!〉というようなルーツが俺らの音楽から感じてもらえるはずなんですよね。俺らって正直言って(音楽シーンのなかで)居場所がないというか、どこ行っても浮くんですけど(笑)、それでもここに俺らの〈ロックンロール街道〉がある。そういう気持ちでこれからも続けていくのみですね」(ダニー)。



▼ラモーンズの80年作『End Of The Century』(Sire)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2012年12月25日 14:00

更新: 2012年12月25日 14:00

ソース: bounce 350号(2012年11月25日発行)

インタヴュー・文/岡村詩野

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