インタビュー

1966カルテット

マイケル・ジャクソンの強さと優しさをカルテットで表現

音大出身の女性でビートルズを演奏する。このコンセプトで結成された1966カルテットだが、クイーンを演奏した前作に続き、新作はマイケル・ジャクソンの作品集。《スリラー》から《ヒール・ザ・ワールド》まで、ダンサンブルな曲とバラードの両方を独創的なアレンジで演奏している。

「ビートルズはクラシカルな演奏でしたが、前作でクイーンを弾いてみて、ロックやポップの曲を自分達の音楽として創っていくおもしろみに目覚め、それを大好きなマイケルでやれたらもっと幸せだろうなというのが動機ですね」(松浦梨沙)

期待に胸膨らませて取り組んだプロジェクトは、予想外に手強く、試行錯誤を繰り返した。

「取り上げたバラードは、メッセージ性のある歌なので、歌詞を理解した上で彼の心情を表現しようとしたのですが、マイケルを意識しすぎると、ヴァイオリンが美しく響かなかったり。すごく音を探りながらのレコーディングでした」(花井悠希)

探る中で見つけた音のひとつが『バッド』の《Who's bad》の表現。何を試してもしっくりこない。その中でチェロの林はるかがたまたま布で弦を拭いた時に発した音が《Who'sBad》に聴こえた。スタジオで生まれるスポンテニアスなアイディアが演奏に生かされていったもうひとつの作品が《スムーズ・クリミナル》。

「やはりこの曲は2チェロズの印象が強く、意識し過ぎる事は無かったにせよ、私たちの《スムーズ・クリミナル》をどう作っていくか模索しながらリハーサルを重ねていました。その時に思いつきでバッハのシャコンヌ風のイントロを弾いてみたら、もしかしたら、これいいんじゃない?という事になり、編曲者の加藤真一郎さんにアレンジしていただきました」(松浦)

全員が子供の頃からクラシックを学んできた。今回からの参加になるピアノの江頭美保が「クラシックとポップスの演奏が想像以上に違っていたので、最初はあまりに大変で死んじゃうんじゃないかと思ったほど(笑)。未だに苦戦しています」と語るように他の3人もそれを乗り越えてきた。ポップやロックのヒット曲をクラシックの編成で演奏と聞くと、イージーリスニングの類を想像しがちかもしれないが、彼女達の演奏は、クラシックとポップスの可能性を深く掘り下げているもので、歌がないぶん反対にマイケルの音楽性が浮き彫りになっている。《Who's bad》をはじめ、そう来るかと、ほくそ笑む演奏もちりばめられている。『マイケル・ジャクソン・クラシックス~スリラー』は、そんな楽しみを与えてくれる作品だ。

LIVE  INFORMATION
『1966カルテット コンサートツアー』

12/15(土)赤とんぼホール(兵庫)
1/6(日)マリンウェーブ(香川)
1/15(火)三重県文化会館 大ホール(三重)
1/16(水)四日市市文化会館(三重)

ミニライブ&サイン会
1/13(日) 13:00~タワーレコード新宿店10F
1/26(土)15:00~タワーレコード渋谷店7F

掲載: 2012年12月13日 20:08

ソース: intoxicate vol.101(2012年12月10日発行号)

取材・文 服部のり子